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知財部門がR&D部門と対話するための工夫

本記事は知財系 もっと Advent Calendar 2022 - Adventar 12/25 向け投稿です!

ご無沙汰しております。知財アナリストの髙橋匡です。昨年の知財系もっとAdvent Calender2021に初投稿して以来の記事更新となります。

 初ブログとなる前回は、私自身の知財キャリアの原体験についてご紹介しました。今回は「知財部門がR&D部門と対話するための工夫」を取り上げさせていただきます。

はじめに

 食品メーカー在籍時にR&D部門とともに自社他社の特許を読合わせし、商品設計における「アイデア創発」ならびに「リスク評価」を行っていました。その際に、私はR&D部門の当事者意識を高めるために、商品の設計に関する情報の特長を簡素化した情報が「特許公報に記載されている」と説明していましたので、その取り組みを紹介させていただきます。

特許公報は一見すると難解な文章

特許公報には難解な文章が記載されている、そんなイメージを持つ方が多いと思います。当時、私はR&D部門が商品設計する際に特許情報が役に立つと確信していたのですが、特許公報を読む研究開発者は少ない印象でした。そこで、「R&D部門が日々の業務で向き合っている社内情報」と「特許公報に記載されている情報」の接点があるか考えました。

今回は、キユーピー社のタラコソースに関する特許を事例(図1)とし、R&D部門と対話するための私なりの工夫を紹介させていただきます。

図1:知財部門が他部門と対話するための工夫(1)

特許公報には、商品設計に役立つ情報が記載されている

研究開発者が日々の業務で向き合っている社内情報とは、商品設計に必要な情報です。食品メーカーであれば、商品企画書、原料規格書、配合表、製造仕様書などが挙げられます。そこで、図2に示すように、研究開発者に「商品設計に必要な情報の特長が簡素化された情報が特許公報に記載されている」と伝え、当事者意識を高めていきました。

図2:知財部門が他部門と対話するための工夫(2)

ITツールを活用した特許の勉強会企画の実行

図3に示すように、当事者意識を高めた上で、R&D部門に特許の勉強会企画を提案し、実行することができました。本勉強会では商品設計における知財観点でのリスク評価、創発したアイデアや気づき等のメモをITツールに記録し、R&D部門のナレッジがITツールに蓄積されるよう工夫しました。一人で特許公報を読む個人学習も大切だと思いますが、私は本勉強会を通じて組織学習の大切さも実感しました。組織学習だからこそ、参加している研究開発者の間に健全な競争意識が芽生え、当事者意識が底上げに繋がると思います。先ずは、数名の当事者意識を高める工夫をしていくことが大切ではないでしょうか。

図3:知財部門が他部門と対話するための工夫(3)

なお、本勉強会は食品メーカー在籍時に400回超(150回超/年)実行させていただいたのですが、その際にこだわったのは、勉強会の開催時間を原則30分とすることでした。そのため、効果的かつ効率的に特許を読む必要があると考え、ITツール(特許調査・分析ツール)を活用したのです。当時は特許マップをTVモニターに映し出し、研究開発者が興味ある技術領域や企業を選んでもらい、特許を読合わせしていました。”膨大な特許情報を絞り込み、効果効率的に研究開発者に特許を読んでもらいアイデア創発するためのツールとしても、”IPランドスケープ"は活用できると思っています。

おわりに

今回は、知財部門がR&D部門と対話するための工夫について、具体的な事例を中心に紹介させていただきました。R&D部門に限った話ではないですが、対話する相手、対話したい相手が「日々の業務で向き合っている情報」と「知財情報」の接点を考えること、そんな心構えも企業知財人材に必要なのではないでしょうか。R&D以外の部門(営業部門や広報部門、IR部門など)と対話するための工夫についても別の機会に記事を執筆したいと思います。

あとがき

今回、事例に取り上げさせていただきましたキユーピー社の特許第5700507号は「あえるパスタソース たらこ」等に実装されています。「たらことバターの黄金比」というキャッチーな広告表現が使用されており、その説明として「特許配合「たらことバターのバランスのとれた味わい」の中で、さらにおいしさを追求した独自の比率です。(特許第5700507号)」と記載されているのです。知財もネタに雑談する世界を夢見る私にとって印象深い特許です。ご興味ある方いらっしゃいましたら、商品情報のwebサイトもご覧いただければと思います。本記事を読んでいただいた皆さまに、素敵なクリスマスが訪れますように。

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