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元企画モノより、若き特殊AV男優へ

二十歳。 私の社会人デビューは、 マニアの殿堂 『 三和出版』 で発行されている雑誌『お尻倶楽部』での、 スカトロジーの グラビア モデルであった。

そこに端を発し、 文章、 挿絵(責め絵) などと 、幅広く スカトロジーや SMなど、 性癖として 異端とされる 様々な 表現を 行うことを 生業とすることになった。

排泄物も 胃の内容物も、 ミミズやゴカイや 食用ガエルも試した。

好奇心と 表現欲と、 何よりも 「面白い!」と言う 疾走する若さ。
私にとってスカトロジーを基盤としたAV業界での仕事は 非常に痛快であった。

私は このAV業界の舞台裏を ギャグ漫画で 描き表した初単行本から、 現在漫画家と言う ものが本業となっている。
中年以降、肉体も思考も 性癖の興味も、 スカトロジーや SM といったものからは遠ざかった。

統合失調症という持病が次第に重くなり、 37歳の時病状の悪化により歩道橋から飛び降り、顔面を損傷した。

私の顔の中には、 歯の付け根からオデコの上に至るまで 無数の フレームとピンが入って いる状態である。

歯と歯茎の間から 雑菌が入ろうものなら、 たちまちフレームを伝って 雑菌は脳に至り、 私は死んでしまう。

ロシアによるウクライナ侵攻 へのショックで 栄養失調になった時期から 歯茎が 急激に痩せ 歯周病になり、 現在 その末期である。
歯は抜け落ち、 むくんだ歯茎の傷から 雑菌が入らないようにと、医師から厳重に言われている。

統合失調症の 治療のために服薬する薬は、 副作用の強い 第1世代 型抗精神病薬 でなければ どうしても対処ができず、 それがため 私の腸は全く蠕動せず、 数種類の下剤を使って 不健康な便を なんとか排泄している状態である。

私の肉体は、 好むと好まざるを得なく、 排泄物を口にすることも、 自分の排泄物を 誰かに口にさせることも できない肉体になってしまった。

そんな折。
弾けるように芽吹くような、スカトロジーという世界でなければ 生きていけない 、まだ少年の 面影のある 一人の青年とTwitterで出会った。

純粋で 生真面目なところもあり 愛嬌に満ち、 純朴なまでにスカトロジーを愛し、その世界に 羽ばたこうとする この青年の姿は、スカトロジーの世界に ポンと飛び込んだ、 あの二十歳の 私そのものであった。

青年はキラキラとした好奇心に満ち 、真っ正直に自分のやりたいことをやりたいと、 自分の道を行くのだと、「特殊AV 男優」という 世界へと まっしぐらに飛び込んだ。

まるで 二十歳のあの時、「うんこを頭から被らせてください!」と アダルトビデオの制作会社に 押しかけた 自分を見ているようだった。

この巡り合わせは、 今生ではスカトロジーとは無縁になってしまった肉体を持つ私の、 若き日の再来のようにも思えた。

彼は初めに私にこう言った。

「 好きな女の子がいるんです。 どうしても彼女の うんこが食べたいんです。 でもどうしたらいいかわかりません! 教えを請いたいです!」

「 まず初めに彼女ありきでしょ? うんこ目的だと思われると 誤解されるから、 好きだという思いを先に伝えよう!」

私はそう返した。

彼にこう聞かれた。

「 彼女に打ち明けました! 思い切ってうんこのことも 打ち明けました! 僕も彼女も、 でも具体的にどうやったらいいかわからないんです!」

私はこんなふうにお返事をしたんだった。

「 排泄しているところを見られるのは 恥ずかしいかもしれない。私は昔よく使ったんだけど、 ネスカフェの空き瓶あるでしょ? あの中に 彼女にうんこをしてもらえばいいんだよ。 はじめの一歩はそこでいいと思う」

それからほとんど 時を置かずして、 彼は「特殊 AV 男優」の世界に 飛び込んだのだ。

関西に 拠点を置く彼は、 関西での あらゆる 特殊な性癖 を持つ人々の イベントに引っ張りだこで、「スカの 貴公子」という異名まで もらった。

この業界に飛び込み、 水を得た魚のように 疾走する 彼の姿を見ていると、本当に若き日の自分と重なるのだ。

彼が私の古巣、三和出版を訪れたという。そして正式な AV 男優名が 決まったと、 教えてくれた。

私は この、まるで息子のような青年に、「 私の名前から、 好きなように 名前作っていいよ!」 と伝えてあった。

近くその名前を聞く。
その男優名を聞けるまで、 半ば緊張し、 それ以上に胸が躍っている。

この一人の、スカトロジーを愛する青年が、 正式な 源氏名を 持った。

二十歳の私がAV 制作会社に「 うずきた〜い 卯月妙子」 と源氏名をFAX した時から この名前を背負って生きて、今もこの名前で漫画を描いているように、その 名前は彼の性癖であり、 生業でもあり、やがて彼の人生のテーマとなり、彼そのものとなるのだ。

彼がいつか、 その名前を背負うことに 疲れ果てるまで、 彼がいつか、 また新たな 人生のテーマを見つけるまで、 彼がその名を過去にするまで。

彼の 源氏名が、 彼の誇りであり、 彼の支えであり、 彼が生き生きと、 海を泳ぐように この業界を渡っていく、 「彼自身」であればいいと願う。

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