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進化するコミュニケーションの迷宮 : 俺のやってた居酒屋の話(第4回)

2023年、年初。Web3.0という言葉を完全に置き去りにしてしまったAIの超進化の波がやってきた。俺のこの連載もAIを多用して書いているのだが、ネットの世界はどこの方向へ向かうのか。俺自身は置き去りにされないようにしてるんだけど、なかなかね、やっぱり感度は鈍くなる。

ここで、ちょっと思い出した当時の話。俺のやってた居酒屋は、インターネット黎明期に通信会社がこぞって携帯電話を無料配布しまくっていた池袋にあった。店の常連さんたちが興奮気味に俺に言った。

「おい、店長。お前、フェイスブック使ってるか?」

あの頃の俺は、「うっさいな」と思ってたけど、よく考えてみれば、新しいメッセンジャーサービスに若者が群がってた時代だったんだよな。Web2.0の入り口だ。ツイッターが大津波のように日本に上陸したのもそのちょっと後のことだ。その頃、俺の店ではフェイスブックを使った新手のねずみ講みたいなセミナーがちょくちょく開かれてたんだ。

「これからはSNSの時代だ。店長もやらなきゃ乗り遅れるぞ!」

そんなことをよく言ってたな。その謎のセミナーの参加者は、なんとか坂のアイドルみたいな奴らばかり。いつも飲み物片手に俺に絡んできてた。奴らは友達がどれだけいるかでしか自己評価ができない、純真な連中だった。

だが、今回話すのはそんなことじゃない。もっと大きな話、息苦しさが年々増してきてる日本の話だよ。インターネットが普及し始めた頃から2023年現在に至るまで、双方向コミュニケーションツールを使いこなす、今の大多数の日本人が病気にかかっているって話だ。

ボケとツッコミ、そんなやり取りで笑いを共有してるだけならいい。問題なのは、皆がSNSに慣れすぎて、どうやって注目を浴びるかばかりを考えるようになったことだよ。他人の噂話で自分のスコアが簡単に上がると、みんな間違った方向に向かってしまった。

今は会社で「休みの日、何してるの?」って一言がセクハラ扱いされるそうだ。何が何だかわからない世の中。俺にはそんな世界に適応する自信がない。

みんなが互いを監視し続ける社会だから、コンプライアンスなんて言葉が飛び交う。YouTubeでもエガちゃんが乳首出したら垢BANされちゃう大変な時代。

要するにコミュニケーションが制限されるのは息苦しいってことだ。だけど、あんたの周りはどうだ?俺は面白い番組がなくてテレビを見るのをやめてから10年以上になる。それでも、やっぱり芸人がドッキリで爆破されるのを見たいんだよ。

エンタメにルールや制約を持ち込むなよ。でもそれも日本人がこの病気にかかってる証拠なんだよな。自分の未来がどうにもならないと感じて、他人を責めるようになってしまったんだ。

だけどな、俺は思うんだ。一体何が悪いんだ?人は笑いを求め、自分を見て欲しいと思う。それが人間だ。だから、これからも笑いを求め、SNSでふざけ、ツッコミを入れる。そして、俺も誰かが見てくれることを祈る。そう、俺たちはみんな同じだ。それを忘れちゃいけないよな。


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