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農業経営を通じて未来を見据えた地域課題解決へチャレンジ、CozyFarm川上晃司さん。

農家になったきっかけについて教えてください。

代々続く農家に生まれ、親父の手伝いから始まりました。それまでは異業種で働いていました。大学を卒業後に東京で就職しました。建築会社で現場監督を4年ほどしていましたが、なにがしたいというよりも、一旦は東京で働いてみたいという漠然とした想いを叶えました。その後、農園自体は祖父の代から代々運営していて、ありきたりかもしれませんが、長男なのでいつかは家を継がないとというのは頭にあって、夢も叶えたし、若く体も十分に動くうちに農業を覚えたほうが良さそうだと思いUターンで2011年に田川に戻ってきて、自分の代で2022年に法人化して今に至ります。

今はどういったものを育ててるのですか?

これまでの主力は米ですね。福岡県の主力米でもある「元気つくし」や「にこまる」、「ミルキークイーン」などを育ててます。もち米も少し育ててますね。あとはブルーベリー、そして今主力になっているいちごになります。いちごは福岡県のブランドであるあまおうで、あまおう自体は品種として生まれてから20年目になる、いちごのブランドとしては長寿ブランドになります。

卸先も米は直売とふるさと納税、一部飲食店です。こちらである程度単価もコントロール出せるところへ卸すようにしていて、ブルーベリーも手間暇かけて育ててますが、例えばいちご1つとブルーベリー1つを比べても育てる上での手間暇は変わらず単価が圧倒的に低いので、これも予約制にして極力無駄が生じないように設計して育てています。

スケールしようにもできない課題

あまおうは福岡空港や博多駅を見てもらうと分かる通り、加工品としても全面的に「あまおう」ブランドで出ていて、国内マーケットを見ると一大ブランドになっていますし、差別化要素になっています。ただ、ここからが問題で、海外に向けて「made in Japan」では出せないのです。これはいちごに限った話なのですが、ブランドを県単位で管理しているので、海外へ仮に出すにしても「made in Fukuoka」になってしまって、推しが圧倒的に弱くなってしまいます。他の果物はそんなことはないのですが、いちごに限ってはそういう状況で、そこが今国内ブランドが海外という大きなマーケットに行こうにも行けないボトルネックであり、国際競争力をあげられない原因となっています。うちの農園ではまだ輸出はしていませんが、ゆくゆくは何らかの切り口で海外マーケットも狙っていきたいと思っています。

経営力で諸問題を解決していきたい

今、どんどんと農業に従事する方の意識がかわってきている気がします。私の場合は、そもそも効率化されてない農業を効率化したくて、そのための手段としての法人化でしたが、これまでの農業の法人化は、その殆どが、だんだんと儲かってきて、税金対策等のための法人化でした。なので、結果として環境は何も変わってこなかったのが実情と見ています。ただ、この数年、そうではない農業従事者も増えてきていて、人材育成のために法人化する流れが増えてきています。給与面からも上場企業の給与や待遇などを研究し、より良い方が入ってきてくれるように労働環境面の見直しを図っています。

農業はとにかく初期投資がかかります。今見えてるいちごのハウスは全部自分名義で、2300平米くらいあります。棟数でいうと9棟あって、土耕栽培が6棟で高設栽培が3棟。さらにいま福地町に3棟ほどいちごをやめられる方のハウスを借りています。実質3600平米の土地を借り入れなしで獲得できていて、これをゼロから獲得しようとすると、ざっと6000万ほど設備だけで初期資金が必要となります。今後の展開として空いてるハウスを買い取る形で、4000平米くらい追加の予定です。なので、トータルで7000平米分くらいになるので、人を受け入れる形をとらないとなりません。

また、アスパラも追加する予定ですが、アスパラ栽培を始める方も年配になってからの方が多く、減価償却しきるかしきらないかくらいで引退される方がいらっしゃいます。そういった方のハウスを狙って、投資金額を抑えた形で買い取ることを考えていますが、これらはすべて個人だと難しく、法人だからこそできることだと思います。

採用に関しても、やはり田川だとまだまだまずは東京に出てからという人が多いです。なので、東京や都心部からのUターンで30代中盤から40代中盤の方に来てほしいですね。農業だけというよりも、一緒に農業を基軸としたビジネスを考えて、どうやったら農業が盛り上がるのかという農業のビジネスモデルを一緒に考えて一緒に推進できる方に来てほしいと思っています。

これからの展望

3つあって。農業を伸ばしていきたいというのがまず1つ目です。これは今の延長上のようでそうでないことも考えていて。農地は法人で確保するので、そこで生産や卸しの部分をやってくれる方を募って、フランチャイズ的な手法で経営してみたいです。ノウハウと農地規模と売上利益の相関は見えているので、より農業に従事する方を増やしていきたいと思っています。

2つ目は、森を守ることをしたいです。森は農業を考えても水という観点でとても重要ですし、地域の豊かさの象徴でもあります。森や環境を守る観点で、今の林業の形とは違う林業を考えてる方々もいらっしゃいます。業界は違いますが、農業法人の経営で培ったノウハウを活かして、そういった方々のサポートをしながら、森を守っていければと思っています。

自分は法人化して農業に従事していて、法人化してよかったなと思っています。大変なことも多いですし、人を雇えばその方々の人生も抱えることになる。ただ、それらには自分での覚悟が出てきます。覚悟ができたからこそ、自分だけではなく、今の地域やこれからの地域を見据えた活動ができるようになったと実感しています。

ありがとうございました!






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