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学習こそが最高の価値。最新のマーケティングで農家の未来を切り開く。有限会社グロウテック佐野孝之さん

農家になったきっかけについて教えてください。

外で働いてる時に兄や姉が誰も家業を継いでなかったので自分がやろうかなくらいな簡単な気持ちで帰ってきたのですが、その頃は父はまだ個人農家でした。私もUターンしてきたばかりだったので右も左も分からず、とりあえず花に関わる仕事をしようと父を手伝う感じがスタートです。ですが、まったく楽しくなかったのと農業が合わないなと思ったので一年で手伝いをやめて個人で花の卸業を始めていました。その後、田川市から事業の話があり、父がその事業の話を受けて法人化、その後その事業を継承して今に至ります。

異業種からだと多くの違いに戸惑ったのではないでしょうか?

親父の手伝いから始まり会社を継ぐまでに2年かかっているのですが、その間にも、会社の中のことを整備しつつ、効率化を図ってきました。農家さんってほとんどが「職人」なんですよね。手伝いで入ったときも想像の通り、会社や組織としてはほとんどが整ってない状態でした。前職でクラウドなどを複数導入していたので、一つ一つデジタル化したり紙との共存を図りながら進めました。驚くのは未だにほとんどの農家さんがそういった整ってない状態ということです。また、「農業」という思考バイアスに多くの農家さんがかかっていて、最新のビジネス手法や最新の流通、デジタルという環境とは未だ遠いところにいることも驚きであり、私が考える課題の部分になっています。

かなり大規模な農園ですね。今メインの商品は何でしょうか?

メインはアスターです。ありがたいことに多くの方々が視察に来てくれます。今見て頂いているアスターも、育て方にていろいろと試行錯誤しながら一つ一つ仮説検証を繰り返しています。仮説も先輩方がおっしゃられることからネットで見たこと、SNS、特にInstagramとかで他の農園さんがやられてることをチェックして取り入れてみたりしています。多くの方がやる前からご自身なりの結論を言ってやらないじゃないですか。だったらやってみて結論づけたほうが事実ベースの議論ができて、次に繋がると思っています。他にはハーブも育てています。実はこのハーブ、片方はジンジャーエール、もう片方はミントの香りがします。

ホントだ!ジンジャーエールとミントの香りがそれぞれしますね!

皆さんこの香りにはびっくりされます。今の既存事業を伸ばしていってもいいのですが、数年先にはどうなるかわかりません。常に新しいマーケットを開拓しないといけないので、いろいろとチャレンジしています。こういった活動を通じて感じるのは、農家は最新のビジネス手法を学ばなければならないということです。例えばこのハーブを体験することやアスターの見学についても、観光農園化すればいいとおっしゃれる方も多いのですが、できない理由もあります。繁忙期とそうでないときで、スタッフの稼働状況が大きく変わるので、閑散期であれば考えられても繁忙期だと難しい。こういった議論の際や、新規に拡大を考える際に、農家さんでマーケットや競合、自社のリソース、自社の業界内のポジション、そして自社商品の本当の価値をわかってて答えられる方は、自分も含めてほとんどいないと思います。

経験・勘・度胸の世界から、事実に基づいた論理だった物事の組み立て方や、他業種の成功事例を抽象化して、農業に落とし込む必要があると思っています。

先程のアスターの育て方やチャレンジも、ABテストの基本をきっちりおさえてると思いました。

農家さんの「農業」への固定概念を壊していかないといけないと思っています。このコミュニティに期待しているのもその辺で。自分一人でいろいろ勉強していても、どうしてもまだまだ固定概念や都市部と地方の情報格差のまま入ってこないものなど、改善されてるところやビジネスがあることへ気がつくのは難しく、このコミュニティにいらっしゃる全国の方々のご意見やアイデアもいただきながら取り入れていきたいなと思っています。うちは少数かつ午後の勤務もほとんどない形で運営しています。生産性をどんどん上げていかないと成立しないモデルでもあるし、生花業界も、自分たちで付加価値をつけて世に出していかないと、いつまでたっても業界の慣習的値決めや価値付けから抜けれないと思っています。

農家は付加価値/差別化要素を自分たちでつけないといけない

業界の慣習と言いましたが、この花業界は現状だと差別化要素が数年でなくなるような、種苗メーカー側の力学が強く反映されるような構図です。どんなに差別化要素を作っても、種苗メーカー側が同じ花や植物の種を多方面に売れば、同じ花を作る農家さんは増えるので、差別化が農家側で図れなくなる。なので、農家はビジネスモデルから勉強したり、異業種から学んだり、異業種とコラボなどをしながら、それぞれが差別優位性を作らないと、いつまで経っても過当競争から抜けれないのです。だからこのコミュニティーには価値があると思ってるし、学びの場が溢れてると考えています。

より多くの方に関わってもらうために労働環境の改善を

うちは午前中で業務を終われるようにしています。残業があったとしても、午後の数時間のみです。これもバックオフィスから現場まで、徹底して効率化を図ったり、各自のモチベーションをアップするようなことを色々と試しながら運営しています。

これまでの農家って、朝から晩まで労働集約型で働いて、それでもかつかつの状態で運営していると思います。だからこそ、これからは農家にもマーケティングが必要だと思っていて、強力な買い手の力に支配されるのではなく、先程の話にもまたなりますが、自分たちで価値を創出して、自分たちで値段を決めていく。そうやって少ない時間でも回せるための仕組みであったり、少ない時間でより大きな利益を出して、社員に還元する仕組み、地域の労働者に還元できる仕組みが作りたいと思っています。そこまで作れれば、農業の未来は明るいし、そこにチャレンジし続けたいと思います。

ありがとうございました!


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