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ひとりずもう

さくらももこさんの著作『ひとりずもう』を今友人から借りていて、先日読んでみた。

この著作はさくらももこさんが、小学校五年生から短大の期間に漫画家デビューを果たすまでが描かれている。


思春期のさくらさんの将来に対する迷いや葛藤、漫画への情熱、学校で書いた文章がエッセイのようで上手だと褒められ、それを漫画にするというアイデアを思いついたときの世界が一変する描写など、さくらさんの観察力と記憶力に驚かされる作品だ。


でも僕が一番驚いたのは、さくらさんがこれでもかってくらいに、飾らずに、正直に描いていたということ。


夏休みにヒマで一人でゴロゴロしていたこと、でもそれが好きだったこと、何てことないゆったりした1日が幸せだったこと、お父さんにカブトムシをもらって子どもというよりは大人寄りな女性だけどやっぱり嬉しかったこと。

そういう何気ない日常の見逃してしまいそうな瞬間や感情を丁寧に描いて、その当時のじぶんがどう思ったかも描く。


漫画家になろうと決意して漫画に没頭し始めるのはほんとうに終盤なのだけど、漫画家になりたいと思ったことがない人も感情移入してしまうのは、それまでのさくらももこという人が記憶している小さな日常の積み重ねがあったからのように思う。


それは漫画家人生の始まりと呼べる決定的な1日を鮮明に描くこと以上に、それまでの日常を、小さなエピソードや感情を、包み隠さないことこそが、ひとりずもうという作品が、「漫画家になりたい人の話し」以上に、「なりたいものになろうとした人の話し」として読める最大の理由で、そう読まれるからこそ、読んだ人の主観を呼び起こす作品に仕上がっているのだと感じた。

僕の感想は堅苦しいが、作品はとてもライトなので、ぜひお試しあれ。


今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
意外とひとりずもうでは、さくらさんの父がいい塩梅でした。


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