ベルリンでネオナチに遭遇した話

現在、私はドイツ・ベルリンに滞在している。
とは言っても、仕事や留学なんかの長期滞在ではなく、長期休みを利用した3週間程度の観光のためだが。

ベルリンといえばドイツ、いやヨーロッパの中でも一番のリベラル都市だと言われている。
理由としてはベルリンの壁崩壊による多種多様な人材の流入、そしてそれによる新しい文化、LGBTに沿った音楽やアートの発展、さらにはそこから新たなビジネスなんかも生まれている。

このような背景がベルリンをヨーロッパ1と言わしめるような都市に発展させてきたのだろう。

しかし、これ以外にももっと大きな理由がある。

それはナチス・ドイツの存在が大きい。

徹底的なアーリア民族至上主義による多民族、性的、身体的マイノリティへの迫害、民衆を煽るような増悪は今でも大きな傷跡を残している。
そのような背景からドイツ政府は難民の受け入れを積極的に受け入れ、政治、教育においてもナチスドイツのような悲劇が起きないよう徹底している。
また、日本人には馴染みがなかなかないが、ヨーロッパ、特にドイツではナチスというものは一種のタブーでもある

さて、タイトルにもある通り、昨日、電車内でネオナチに遭遇したのだ。
編み上げブーツにデニム、スキンヘッドに拳のデザインがなされている黒のTシャツ。年はおそらく40歳前後。
そしてジャーマンシェパードを連れていた。
一目見て、単なるパンク親父とは一線を隠すような異様な雰囲気を周囲に撒き散らしていた。

ネオナチについて軽く説明しておくと、

ネオナチ(英語: neo-Nazism、ドイツ語: Neonazismus)とは、ナチズムを復興しようとする、または類似性を持つ、第二次世界大戦後の社会的あるいは政治的運動の総称である[1][2][3][4]。「ネオナチ」という語は、それらの運動のイデオロギーを指す意味でも使われている[5]。ネオナチのイデオロギーは、オリジナルのナチスやナチズムに近いものから、相違点が大きいものなどさまざまである。概して部外者に使う言葉である。
多くの国に組織があり国際的なネットワークも存在するなど、世界的に見られる現象となっている。


と、wikipediaに記載がある。
ちょっと小難しく感じてしまうが簡単にいうと現代において、
ナチスヒトラーを賞賛し、崇拝する団体の一種なのだ。
また、移民に対してかなりの攻撃的な態度をとっており
移住者、旅行者を問わずに暴力被害を受ける人が少なからずいるようだ。

ドイツの田舎町では見かけることが多々あると聞いていたが、
ベルリンの、しかも真昼間に見かけるのは衝撃的だった。

ちなみにネオナチの彼はかなり酔っ払っておりか何かドラッグをキメたようで
焦点の定まらない目でずっとドイツ語で何か喚いては、時折ナチス式の敬礼をしていた。
その度、周りの乗客はかなり引いたようなそぶりを見せながら、
なるべく関わらないようにしていた。

そして、彼がまた何かわめきながら、よろよろと大きなバックパックと寝袋を担いで
電車を降りるために出入り口に行ったのだ。

その時、ちょうど寝袋を車内に落とし、彼は気付かずに去ろうとした。
もちろん、なるべく関わりたくないために誰も拾おうとはしない。
そんな中、一人のおばさんが寝袋を彼に手渡す、というよりは放り投げた。

そして彼はまた何かドイツ語でわめきながらおばさんに握手を求めてきた。
もちろん、おばさんは若干引き気味で握手に応じるか迷った挙句、人差し指だけ差し出した。

隣のドイツ語がわかる青年によると、
偉大なドイツ国民であるあなたはなんたらこんたら、とのことだったらしい

正直、どこかに住んだり旅をしたりする時、特に西側ヨーロッパでは危険を感じたことはほぼない。
しかし、この一件は彼に自分がアジア人だということで何か危害を咥えられるのではないか、
という恐怖に陥っていた。
もちろん、周りには大勢の人がいたのでもしそうなったとしても
誰か助けてくれる人はいるだろうとは思うが。

ひとまず、例えば深夜の人気のない電車内や路上、
かつ、相手が複数人だったら何をされるかわからないだろう。
ベルリンは相変わらずピースフルな時間が流れている街だが、
海外ならではの危険が潜んでいると思い知らされた出来事であった。

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