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逆噴射小説大賞2020 投稿作&プラクティス作品

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タイトル通りの代物です 読むと良いことありますよ いい感じの石を拾えたりだとか
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逆噴射小説大賞2020 投稿作&プラクティスまとめ およびそれに関するアレヤコレヤ

逆噴射小説大賞2020 投稿作&プラクティスまとめ およびそれに関するアレヤコレヤ

ドーモ、タイラダでんです。よくいらっしゃいましたね。

10/31の23:59をもちまして、「逆噴射小説大賞2020」のエントリー期間が終了しましたね。参加者の皆さん、お疲れさまでした。まだ投稿作の半分も読めていませんが、必ず読みに参りますね。僕は有言実行の男ですから。覚悟しろ。

それはともかく、僕自身もこのクソ忙しい10月にもかかわらず5本投稿、およびプラクティス3本を投稿することができました

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血戦の関ケ原に剣豪武蔵その人あり 獨眼龍と相対し 五振りの刀にて月を粉砕す

血戦の関ケ原に剣豪武蔵その人あり 獨眼龍と相対し 五振りの刀にて月を粉砕す

 武蔵!
 精強をもってなる甲斐武田の人馬兵ですら、武蔵の前には子犬同然。両の手に持つ大業物を小枝のように軽々と振るい、武田兵を桜肉と化していく。乱れ髪、熊髭、襤褸をまとう様は乞食の如し。されど爛爛と輝く眼差しを見よ。かんばせに浮かぶ虎の笑みを見よ、見よ、見よ!

 そのとき轟! 天地のはざまに焔が走る。武蔵は一薙ぎで灼炎を払い、雷雲立ち込める空を睨めつけた。
「お主が、あの武蔵かっ」
 高みより

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家に帰るまでが伝説です

家に帰るまでが伝説です

 勇者の神剣から放たれた光が、大魔王の三つ目の心臓を焼く。ウィンディア大陸を脅かし続けた大魔王の、滅びの時がついに訪れたのだ。



 戦いは終わった。
 勇者は長い戦いに思いを馳せ、散っていった仲間の名を口にする。みな、素晴らしき戦士であり、そして唯一無二の友だった。勇者は心中で短い祈りを捧げると、魔王の間を後にしようとした。
 咆哮。風を切る音。背後からだ。勇者は咄嗟に体を沈め、襲撃をかわす

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Blood-Sucking Honey-Moon!

Blood-Sucking Honey-Moon!

"この世で最も美しいものは、なあに?"

 難しい問いだ。でも今の僕になら答えられる。
 純白のウエディング・ドレス。真紅の返り血。右手にはカタナ。左手にはリボルバー。足元には襲撃者共の、数多の骸。悲しげな笑み。

 答えは僕の妻だ。いや、まだ式の最中だし、婚約者と呼ぶべきだろうか。

「エド様」
 彼女が、この世でたった一人だけに許した呼び名で呼びかけてくる。
「はしたないところをお見せしました

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鵺の啼く夜

鵺の啼く夜

人類の感情の中で最も古く最も強烈なものは恐怖である

「どいつもこいつも、なんて顔して死んでやがる」
 死んでいる女を見下ろし、俺は気怠げに呟いた。
 実際疲れてもいた。この一週間で出たホトケは、計十体。外傷は一切なし。死因は心臓発作。その他、共通点は一切なし。
 いや、共通点は二つある。一つは死に顔だ。老若男女、すべての被害者がひどく歪んだ死に顔をしていた。この世で最も恐ろしいものを見た、といっ

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六弦の薔薇(Rock  'n' Rose)

六弦の薔薇(Rock 'n' Rose)

 16分と14秒。冷静と情熱を込めた渾身のフレーズが、キマリすぎるほどに決まった。完璧だ。アタシは演りきった満足感の中、熱狂する観客席に向かって倒れ込む――。

 ペチペチペチ。うつろな拍葉(はくしゅ)の音で、アタシは醒めないはずの夢から醒めてしまう。

 アタシは、溜息で花弁を震わせた。そう、残念ながらここはクソ街「カダン」の裏路地で、観客は薄汚れた白詰草のガキ一人。現実は厳しいよね。いつだって

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Killer is Attitude, NOT Style.

Killer is Attitude, NOT Style.

 心得の三 「仕事」は静かに   

 その老人が割り箸を箸袋から取り出したのと、セーラー服を着た金髪の若者が公園に走り込んできたのは、ほぼ同時だった。その後ろから、いかにも堅気ではない連中が若者を追ってきていた。
「ジジイ! 獲物を誘い出したぜ!」
 男はそう叫びながら、老人に向かって一直線に駆けてくる。老人は目をつむり、ペットボトルのお茶を口に含んだ。
「おいジジイ! 寝てんのかジジイ!」

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残弾数28

残弾数28

〔 28 〕 

 僕は命綱を噛んでいる。何せ命綱だから、それこそ命がけで噛んでいる。
 歯に、そしてママンに感謝。あなたがくれた贈り物、合計28本。飯も食わない全身サイボーグの僕が、それでも口を必要としたのは、子供のころから自慢のこいつらとサヨナラしたくなかったからだ。で、おかげで僕は星屑にならずに済んでいる。

 よし、落ち着いたかい僕。じゃあ状況の把握といこう。まず、発端はこうだ。



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それだから俺は、夏を殺し続けるのだ

それだから俺は、夏を殺し続けるのだ

これは、愛の物語だ。

<1998年7月 S市 路地裏 72人目>

 握りしめたスパナを振り下ろす。ヒット。振り上げる。振り下ろす。再びヒット。振り上げる。振り下ろす。
 ボンバボンババ、ペパペプー。
 頭の中で響く音楽。そいつのリズムに合わせて、俺は夏の顔を挽き肉に変えていく。
 ガツン。最後の一撃。
 俺をとらえていた鉤爪付きの触手が、痙攣しながらだらりと垂れ下がる。ビバ自由。
 夏は地面に

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