見出し画像

はじめての転勤

ついにやってきた。

しかも、意図しないタイミングで。

この学校には、もう1年は勤務できると思い込んでいたので、3月頭の転勤の知らせには少し動揺した。

少し、と言うのは、転勤になるかもという話を校長からの恩情で聞かせてもらっていたから、電話が来る頃には、何となく覚悟は決まっていた。

電話がきたのは、卒業式の日の夜、祝賀会が開かれていた真っ最中である。

少し遠くの席に座った、同じ地歴科の先輩教員が携帯電話を持って飛び出して行ったのを見て、「あ、きた。」と思った。

僕の電話が鳴ったのは、その直後だった。

とりあえず、4月以降も仕事があることに安堵したが、転勤となると、これまた初めての経験である。

そんなことを考えながら席に戻ると、さらにそのすぐ後、空いていた隣の席に校長が座り、僕に耳打ちした。

「恐れていた事態が起こるかもしれないから、心の準備をしておいてくれ」

僕は「わかりました」と答える代わりに「もう電話来ました。」と返答した。

次の勤務校を伝えると、残念そうな表情。

そしてその表情のまま
「俺はお前が好きなんだよ。」
とポツリ。

文字におこしてみると何か不穏な空気を感じるが、他意はない。
続ける。

同じ地歴科(校長の専門は公民だが)だったり、タバコの付き合いもあって、気にかけてもらっているという自覚は多少なりともあったが、そこまで買ってもらえていたとは思わなかったので、泣きそうになるくらいにはうれしかった。

校長と仲良しな大卒2年目なんて邪険にされる要素しかないが、媚びるようなことは何一つしていないという自負だけはあるので、そうなると、自分の人柄を買ってもらえていたのかなと、柄にもなく自己肯定感が上がった。

そして、2年間お世話になり散らかした、別の地歴の先輩教員にもそのあと声をかけた。

「あなたにはセンスがある。○○(別の地歴の先生)よりもセンスがあるよ(笑)」という、何だか素直に喜びきれないけどあたたかいエールももらった。

大学卒業していきなり島に飛ばされ、それはそれは刺激的な日々を過ごした。

同時に様々な面で学ぶことも山ほどあった。吸収しきれないほどに。

この経験を次の学校でも生かさない訳はない。

新天地でもやれる限りをやろうという、心の準備だけはできている。

できていないのは引っ越しの準備くらいかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?