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【観劇レポ】最高の作品がやってきた ミュージカル「カムフロムアウェイ」その1

ミュージカル観劇レポ、ブロードウェイミュージカル「カムフロムアウェイ」です。

とにかく最初に言いたいのは、

この作品最高!!

ということ。全人類履修必須としてもいい。日本初演・初見にして、僕の好きなミュージカル作品の殿堂入りを果たしました。どうしようこの気持ち、もう抑えられない…!これは…恋…?

今回観たのは、1ヶ月の東京公演を経て待ちに待った大阪公演。初日、4/6ソワレ、前楽、千秋楽の4回。回数=熱量ではないですが、チケット代の高騰が顕著な昨今においても、通う価値がある作品です。

公演情報が解禁されるたびに期待値は日に日に高まり、東京公演の様子を調べると大好評でさらに期待は高まり、2回くらい観れればいいかなと思ってましたが、結果的に倍の4回観れることに。

9.11の同時多発テロ直後のカナダで起きた実話をもとに、100分間ノンストップ、12人のキャストが100人強の人物を演じる圧巻のステージ。そしてこたびの日本初演で集結したキャストは、「日本ミュージカル界のアベンジャーズ」と称されるスター俳優ばかり。

あまりにも僕の中でこの作品への愛が強くなり、4回分の熱量があるので、観劇レポも分割します。まず今回は全体的なお話を。

ちなみに初日の感想はこちら。


アベンジャーズなキャスト

まずはこれを語らないわけにはいかない。豪華という言葉では足りないくらいのキャスト陣

プロモーションの中でも「ミュージカル界のアベンジャーズ集結」と言われており、発表時から「オールスター感謝祭」「正月と盆とGWとクリスマスが一気に来た」「ミュージカル俳優のフルコース」と全僕が呼んでいる、とにかく日本ミュージカル界を牽引する方たちばかり。
仮にこの作品が再演されるとしても、同じキャストでされることはほぼありえないと思えてしまうほど、今このときだから集まれたと言えるキャストです。

安蘭けい
石川禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森公美子
柚希礼音
吉原光夫

敬称略・五十音順

ミュージカルファンならわかるはず。この並びの強さ。もはや文字列だけで強い。

ミュージカルに詳しくない方は、「ふーん、あ、モリクミさんはテレビで見るなぁ」くらいかもしれませんが、元宝塚のトップ、元四季の看板スターをはじめ、クラシックやオペラにルーツがある人から、ストプレ含む演劇界で経験を積んでこられた人、音楽活動やポップスシーンでも活躍している人など、とにかく全員が数々の作品でメインキャストクラスのお役を務めてこられた方々。

そんな超絶マッスルな方々が集まる中、誰か一人が主役というわけではなく、全員が主役(プリンシパル)で、全員がアンサンブル。登場シーンが一瞬のキャラクターも含めて、総勢100人余りの人物を12人が出ずっぱりで演じます。

それぞれのキャストについての感想は別途。

キャストもただ「ここにいる」

ここまでキャストそれぞれの力が強いと、舞台上でまとまるのかとも思いますが、全員の力が強いからこそ、誰かが悪目立ちすることもなく、見事にまとまる

演出や構成から、そうなるように作られている、という面もあるらしいです。
その1つ象徴的な演出は、「演じない」ということ。キャラクターを作り込むのではなく、「ただ、その時代、その場所にいた人として存在する」ことが演出として求められていて、ある意味自然体な、ドキュメンタリーのような印象を受ける演出です。

もちろん舞台エンタメなので、キャラクターの背景や感情も伝わってきますが、各キャストがそれぞれのキャラクターを、「そこに当然いる人」として、演じすぎないように演じているからこそ、個性が光りつつもストーリーの「つっかえ」にはならず、そしてパワーがぶつかり合いつつも喧嘩することはなく、作品全体としてまとまっているのだと思います。

そしてインタビューなどを見ていると、お稽古自体もキャストが互いに助け合い、パスを出し合い、計算された緻密な筋書きを創り上げていくようで、これも「まとまり」の一つ。様々な現場で経験を積まれたこのキャストだからこそ、カバーする力も視点も持っておられるわけで。

ストーリーの背景自体は重いながら、ストーリー全体が温かい雰囲気を持つのは、テーマやメッセージによるものだけではなく、このまとまり感も一つの要素だと思います。

決して豪華な衣装があるわけでもなく、ちょっとした小物や仕草、発声で瞬時に役を切り替える。場面のメインをはるところから、瞬時にアンサンブルへ切り替える力(その逆も然り)は、足し算も引き算もできる実力と経験あってこそで、これだけ経験豊富な「強い」キャストだからこそできること。

そしてこの豪華キャストを支えるのがスタンバイキャストの4名。万一キャストが体調不良などで登板できないときにカバーをしてくださる方々ですが、12人分を4人で支えていらして、これは驚愕。単純計算で1人で3人分ですからね。

12人のキャストも100分間ほとんど出ずっぱりな上に、この作品は細かい動きが緻密に決められているのですが、その動きをカバーしてくれる頼もしい存在。

役のカバーやスウィングと呼ばれる、いわば「出演するような事態は起こらないのがいいけど、いざというときには元々のキャスト以上に力を発揮することが求められる」という超ハードな役回りは、もっと評価されていいと思います。
その意味では、この作品は「12人」というより、「16人」で作られています。

4/13のアフタートークでの万里生先生曰く、機会があればお客さんに見てもらいたいくらいスタンバイキャストも完成されてるとのこと。
今回は映像化の予定なしと明言されてるのですが、もし映像化されたら特典としてつけよう、スタンバイの活躍。

音楽

この作品はバンド(オケ)がステージ上にあり、生演奏。そして中盤ラストのパーティ曲「スクリーチ」の場面では、音楽隊も舞台中央に出てきて、演者と並んで演奏します。

舞台であるニューファンドランドの伝統的な楽器も使われていて、ケルティックな印象を与える音楽を紡ぎ、それもまたキャストと一緒に作品を作っている。先程16人と言いましたが、もっと厳密には音楽隊を含めたメンバーで作られている作品です(他のミュージカルもそうですし、裏方のスタッフももちろん含むわけですが)。

音楽自体は、ほぼ100分間何かしらの音が奏で続けられているのも特徴。ゆえに客席の拍手のタイミングは100分間で3回だけなのですが、濃密な5日間の物語がテンポよく、ミュージカルらしく運ばれていく。切れ目なく音楽が紡がれることで、この5日間が、あるいはそれぞれの人生が進み続けていることも感じます。更に言うと、この物語が「現在進行系」であることにもつながる。

「音」は奏で続けられていますが、「歌」はずっとではなく、曲中のセリフも多い。また1人のキャラクターが歌い上げる曲よりも、複数のメロディが交差するシーンの方が多いのも印象的。豪華キャストのアンサンブル(コーラス)をここまで聴けるのもインタレストなところ。

ミュージカルがストプレの舞台と違うのは、やはり音楽の力。音楽が物語を進めていくという点で、ミュージカルらしいミュージカルでもあると感じました。

シンプルな舞台

舞台はシンプルに洗練されています。盆(回転する円形の舞台)と木をあしらったモニュメントがメインであるほかは、イスと机が出し入れされるくらいです。

そのイスや机の移動はキャストが動かしていて、どの歌を歌いながら、どのセリフのあと、あれをここに、というのが細かく決まっているそうです。
2階席から観た時、ステージ上にものすごい数のバミリ(印)があるのが見えました。

ゆえに、ただイスと机を動かすだけで、ガンダーの地元の店にも、飛行機にも、バスにも、絶景スポットにも一瞬で早変わり。

スピード感のある群像ストーリー

100分間休憩なしの1幕もの。しかも登場人物は100人余り。さながらジェットコースターのような、非常にスピード感のあるストーリーです。

初見は初見でしか味わえない感動がありますが、この作品は複数回観てこそ味わい深い。キャストの細かい動きももちろんですが、ストーリー上で語られるメッセージも複数交差していて、正直仮に全公演通ったとしても見きれないと思います。

ストーリーで僕が感じたメッセージは別途まとめたいのですが、音楽のところでも触れたように、現在進行系の、今ここにいるあなた(=舞台からすると僕)に向けられた投げかけがあるのが大きなところ。

僕がミュージカルを観に行く理由は、現実から離れた時間・空間を味わえるからですが、それでいながら現実の生活で、仕事中に、あるいはお風呂に入ってホッとした瞬間に、ミュージカルのシーンや曲、セリフ、テーマがカチッとリンクするときがある。そんなところが醍醐味中の醍醐味だと思っています。
つまり、「非現実を味わいに行きながら現実のカタルシスに繋がる何かを求めた」その先が僕はミュージカルだったというわけです。

その意味でこの作品は、まさに僕が求めていて、好きで、愛してやまない作品。

4回観て、4回とも違う場面が、違う人物が気になって、心に刺さる楽曲も毎回異なる。それだけの要素がこの100分間に詰まっていて、物語を語り終えようとした時に、キャストと舞台から矢印をこちらに向けられる。

今我々が見せた物語を、ここにいるあなたはどう見たのか、と。

さあ僕はこの感想をまとめられるのでしょうか(遠い目)。

プロモーション

傍論になりますが、この作品のプロモーションはいい試みがあったなあと思います。

稽古場の様子など以外にも、この物語の元になった実在の人たちへのインタビュー、キャストの対談形式のラジオYouTubeなど。この作品を見てほしいという気持ちが伝わってくる宣伝で、「このキャストならこの金額でもお前ら金払うやろ」みたいな高を括った感じが見えなかったのが良い。

正直作品によって、そういうのが見え透く宣伝もあるわけです(僕の主観ですが)。ミュージカルが商業なのは仕方ないのですが、うまくやってくれよと思うことも。でもカムフロムアウェイは、そういうのを感じなかったなあ。宣伝の時点で好印象でした。

ということで続きます

とりあえず全体的なことを書いてみたので、ストーリーやキャスト/キャラクターについては別途まとめます(まとまるかは不明)。

ここからあと約1ヶ月、地方公演を巡るカムフロムアウェイ日本初演。とにかく大阪千秋楽おめでとう&ありがとう、そして地方へのフライトも、シートベルトを締めて、お座席をお戻しいただき、ご安全に!日本中に島民が増えますように。

〈追記〉
感想その2ができました。

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