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【「A24」創業者紹介②】熟練マーケター!"独立系映画業界の王"の弟子「デヴィッド・フェンケル」

A24を立ち上げた創業者の紹介シリーズ第2弾です。前回は才能を見出す久闊を持つダニエル・カッツについて紹介しました。

▼第1弾のダニエル・カッツ

【「A24」創業者紹介①】才能を見つけ出す天才「ダニエル・カッツ」|村田泰祐 (note.com)

今回はカッツと同じ会社で働いていた過去を持つ、A24創業者の1人であるデヴィッド・フェンケルについて紹介したいと思います。

デヴィッド・フェンケルのプロフィール

冒頭でも紹介したようにデヴィッド・フェンケルは、実はカッツと同じシンクフィルム出身者で、幹部も務めていました。

そんなフェンケルのA24創業に至るまでの経歴をご紹介します。

彼はマンハッタンにあるAnthology Film Archivesという実験映画の保存、保管、上映を目的とした非営利団体でNewFilmmakers programのマーケティングとプロデュースの担当をしていました。

NewFilmmakers programは1998年にスタートし、過去21年間で1000本以上の長編映画と4000本以上の短編映画を上映してきました。

その後、フェンケルはシンクフィルムの2001年の設立時に配給担当マネージャーとして働き始め、2004年にマーケティング担当副社長に昇格。たった3年で副社長になったので、フェンケルはビジネスパーソンとして相当な実力があったのでしょう。

フェンケルはシンクフィルムで、インディペンデント映画の王者と呼ばれたマーク・ウルマン氏のもとで働きます。

シンクフィルムの元在籍者の何人かは後にインディペンデント映画会社を経営することになりますが、彼らが現在活躍できているのはウルマンというベテランの存在が大きいとされています。ウルマンは配信サービスが出てきても、とにかく劇場での公開にこだわる人物でした。また、作品を自分の映画だと言い切り情熱をもって仕事に励んでいたとされます(ウルマン氏は2019年に66歳で他界)。

そんなウルマンの元で働いたフェンケルは「流通とマーケティングの貴重な経験を積んできた」とシンクフィルムCEOのジェフ・サックマンに評価され、2006年には国際営業担当副社長に更なる昇進をします。

昇進後、フェンケルはA24創業者の1人であるカッツがプロデューサーを務めた「Zoo」の国際販売部門の担当となるのです。カッツもフェンケルもシンクフィルムの幹部なので直接の面識はあったかと思うのですが、同じ作品を担当して将来のビジネスパートナーとしてお互いを強く意識していたかもしれません。

フェンケルはその後、ヒップホップグループのビースティ・ボーイズのメンバーの1人・MCAことAdam Yauch(アダム・ヤウク)とOscilloscope(オシロスコープ)という映画会社を2008年に一緒に立ち上げます

ビースティ・ボーイズのドキュメンタリー映画の製作にシンクフィルムが携わっていたので、こちらも推測ですがフェンケルとヤウクはその際に一緒に仕事をした・接点があったのかもしれません。

ただ、残念なことにヤウクは2012年5月4日に47歳という若さで亡くなります。フェンケルはヤウクの死去に伴い、1度は辞任すると言い、コンサルタントとして一部関わると再アナウンスしつつ、結局フルタイムのメンバーには戻りませんでした。

A24の創業が2012年なので、フェンケルはオシロスコープを完全に去りカッツたちと合流したものだと思われます。

フェンケルは、ダニエル・カッツ、ジョン・ホッジス等ほか創業者と共にGQのインタビューに答えています。

A24が他の映画会社と違う点について3人はこう語ります。

フェンケル: 我々は、A24ならではの視点、システム、人材によって特別な映画にできるもをの探してきます。他の会社で同じように公開されるような作品は、通常は狙いません。

カッツ: 私たちはいつも、「もっといい方法があるはずだ」と話していたんです。

ホッジス: いつも 「どうやったら違うことができるだろう?」という会話をしていました。そしてそれはたいてい、ビールを飲みながらナプキンに書き留めたもの、そして多くの自慢話で盛り上がったものでした。

カッツ:その中には見当違いのものもあったよね?

フェンケル:無知だったしね。

カッツ:ね、本当にね。

How A24 is Disrupting Hollywood | GQ

彼らのインタビューは数少ないのですが、どうすれば他の映画会社と違うことができるのか、A24独自の観点で作品を探していることがうかがえます。

奇抜なマーケティング、自社商品の展開、映画会社にも関わらずファンクラブ事業を行うことでA24は独自のブランディングを築いてきました。

その背景には一貫してインディペンデント映画のマーケティングに携わってきた、フェンケルの知恵が活かされているのかもしれません。

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次回は、ジョン・ホッジスについて紹介したいと思います。創業者の紹介は次回で最後です。ホッジスは既にA24を去っています。彼はいま一体何をしているのでしょうか?

全記事は読めるのですが、note有料版の設定にしています。もし本記事が面白ければ支援のほどよろしくお願いいたします!

参考文献・参考記事

About Us – NewFilmmakers NY

ThinkFilm ups Fenkel to vp int’l sales – The Hollywood Reporter

Remembering Mark Urman, 1952 - 2019 | Filmmaker Magazine

Mark Urman Dead: Veteran Independent Film Distributor Dies at 66 - Variety

How Beastie Boy Adam Yauch Turned Into a Filmmaker -- New York Magazine - Nymag

Beastie Boys Co-Founder Adam Yauch Dead at 47 – Rolling Stone

Adam Yauch's Oscilloscope scrapping planned executive changes - Los Angeles Times (latimes.com)

How A24 is Disrupting Hollywood | GQ

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