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「ついやってしまう」体験のつくりかたを読んで、やってしまった失敗を思い出した。

『「ついやってしまう」体験のつくりかた』を読みました。
おもしろかったので、読書感想文を書こうと思います。

こちらの本、2019年の発売当初に話題になって電子版を購入したのですが、Kindleの中で眠ったまま、ずっと気になっていたので積ん読解消です。

著者は、元・任天堂の玉樹真一郎さん。Wiiの開発に携わった方だそう。
そのこともあってか、本書の中では「マリオ」や「ドラクエ」のような国民的ゲームタイトルを例に、「つい遊び進めたくなるとはどういうことか」「おもしろいと感じるとはどういうことか」を、わかりやすく解説されています。

著者の経歴から、ゲームデザインの本なのかな、と思っていたのですが、(文中の例示こそゲームタイトルに偏っているものの)どうやら読んでみると違うようです。

私のように作品やプロダクトをつくって届けたい人はもちろん、noteやインターネットで創作活動をする方、お仕事や日常生活でどんな形であれクリエイティビティを磨きたい方にとって、大変勉強になる本だと感じました。

私の経験談とあわせて、本書のいいところを紹介させてください。

小学4年生でも解ける問題を、と言われた。

もしプレイヤーが「木は燃える」ことを知らない人ばかりだったとしたら、このゲームはまちがいなく遊んでもらえません。逆に言えば、プレイヤー全員が持っている記憶さえ把握できれば、そこから体験をデザインできるんですね。

電子版95/350「もうひとつの直感の起点」

これは、著者が『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に登場する、「障害物を火で焼き払い、先に進む」というゲームデザインについて説明した一節です。

上記以外にも、本書では「直感デザイン」について、いくつかのパターンや例示をもって説明されているのですが、それはぜひ書籍で体験いただきたいので、ここでは割愛します。

これらの「直感デザイン」の話を読んで、自分の恥ずかしい失敗を思い出しました。
私はコンピューターゲームの制作経験はありませんが、「謎解き」の制作に関わったことがあります。その時のことでした。

「尾崎さん、小学4年生でも解ける問題にしてください」

初めて作った「謎」をディレクターに意気揚々と見せたあと、返された言葉です。
小学生向けの謎解きを作ろうとしていたわけではありません。
むしろ大人でも満足できるような、解きがいのある難問を作ろうとしていました(処女作なのに無茶ですね)。
しかし、それがいけなかったんです。

つまり、当時のディレクターが言いたかったことは……

「知識に依存した問題はよくない」
「直感的、本能的に解けそうな問題を作れ」

ということだと思います。

本書で「直感デザイン」を学ぶにつれ、その時のことが思い出され、目の前の文章と過去の経験が相互補完になりながら、腑に落ちていきました。

体験してもらうためのヒントをどう作る?

著者は、このようにも書いています。

プレイヤーは謎を解いた瞬間、まるで自分のこれまでの人生を肯定されたかのような気持ちになるかもしれません。俺って頭いいなぁ、俺スゴイ! なんて気持ちにさせたいのです、ゲームというものは。

電子版95/350「もうひとつの直感の起点」

奇しくも「謎を解く」という表現が使われ、個人的には共感でうなずくばかりでしたが、さておき。

体験は、それなりの筋道を立て、体験してもらわなくては意味がないんだと感じました。
それがたとえば「謎」ならば、プレイヤーに解いてもらって、プレイヤーに快感を感じてもらわなきゃ意味がないわけです。

そのためには、プレイヤーに「解き明かしてやりたい!」「あれ、気になるぞ……」という気になってもらう必要があります。
小さくてシンプルなステップを作り、適度なヒントを散りばめ、難易度を考えないと、プレイヤーがハナから諦めてしまいます。
(繰り返しになりますが、このような例は本書の中でも示されているので、ぜひ読んで体験してみてください。)

どんな作品であれ、プロダクトであれ……
単に作って送り出すだけではなく、想定したものを体験してもらうところまでを考えないといけない。
それでようやく、スタートラインに立った状態なのかも……?

――「直感デザイン」について読みながら、そんなことを思い直しました。

体験をデザインするクリエイターが担うべき役割は、体験に必要なヒントや階段のようなものをどう作るのか?という部分に集約されているのかもしれません。

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