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サービス管理責任者の存在価値

これまで2回にわたりサービス管理責任者(以下サビ管)の人材難や要件などについての私感を執筆した。


そして先日厚生労働省から新たなサビ管要件の骨子が検討なされた。



雑にまとめると、私が引っかかっていたサビ管研修後の2年間のOJTが6か月に短縮、さらにみなし配置の期間が条件付きで2年間に延長されたとのことで、サビ管配置にご苦労されている事業所にとっては久々の明るい改正案となった。ただ今後どのように議論されていくかは冷静に見守る必要がありそうだ。


一方で、これらの流れの中でサビ管があくまで「配置基準を満たすため」のツールに偏っている意識がうかがえる。
質の向上を求めながらも、配置についても緩和していく。この両立は実は結構難しい。
私もこれまでとは矛盾したことをうっかり言いそうになる。



サビ管について語ると、サビ管そのものに否定的な声も聞かれる。多くはサビ管として苦い思いを強いられてきた方々だ。
私自身はサビ管としてこれまで何度も大変な思いをしつつも、以前話した通りこの役割には強く意義を感じている。


いっそサビ管という制度がなくなると、福祉事業所はどうなるのか。

そもそもが障害者自立支援法以前はサビ管なんて役職は存在しなかった。福祉制度は時代の流れに沿って良くも悪くも形を変えながら令和の現在まで歩みを進めてきた。今後も変化し続けるだろうし、その中「サビ管」自体が別の形に変化していくことも十分あり得る。



ここで改めてサビ管の役割について掘り下げてみる。

サビ管の業務の軸は何と言っても個別支援計画の作成だろう。
シンプルに言うと、サービスを利用する方が求めるニーズに対し、それらを満たすために支援者がどのようにアプローチを図るかを具体的にプランニングするものだ。
作成に当たっては本人の能力や周辺状況を細かくアセスメントした上で、利用するサービス事業所内のみならず本人に関わる様々な社会資源を駆使しながらプランを構築する。


私が現役のサビ管だったころから疑問に感じていたのが、例えばグループホームのような生活施設は、福祉サービス事業所というくくりではあるが、利用する彼らにとってはそこが「自分の住まい」には違いない。
私たちが普段の生活で「定期的に目標を立てて、その課題を見つけ、課題克服のためにすべきことを計画する」「それを振り返る」なんてことを年に2回も3回もするだろうか。
そのためか、多くの共同生活援助の個別支援計画は毎回あまり変わり映えのしない内容となっているものが多い。

それなのに、厳密には個別支援計画作成時には、関係機関勢ぞろいして会議を開くという決まりになっている。関係機関とは事業所職員だけでなく通所先や家族・行政の担当者・通院先の医師にまで至る。
確かにサービス開始時はネットワークを認識する上である程度必要と思われるが、誤解を恐れず言うと、毎回この会議を真面目に招集して開催している事業所はどれほどあるだろうか。


一方で就労移行支援のような訓練施設であれば当然様相は変わってくるし、変わらないと意味がない。
ここを同系列で見ることの違和感を感じる。
だからこそ、面倒ではあれども、以前の制度にあったような分野別のサビ管研修は必要だったっと個人的には感じるところである。(現在はすべての分野が共通講義となっている)



さらにサビ管業務は個別支援計画作成にとどまらない。
事業所でのあらゆる状況に応じてリーダーシップを発揮し、各支援員に対して采配を振るったり、他関係機関との連携の窓口の役割となる。そのため、一定の経験やスキルが必須となる。これは確かにサビ管要件のハードルをある程度維持する根拠となる。

そしてこれらの業務の指南書となるのが先述の個別支援計画だ。この考え方がすっかり抜けているサビ管が結構目立つ気がする。


個別支援計画は作成することが目的ではなく、作成したものを運用することが目的だ。でないとただの面倒な事務作業に終わってしまう。

であるにもかかわらず、多くの事業所が「個別支援計画を作ること」のみに焦点を置いている。「サビ管の配置」と同じように「個別支援計画未作成の減算」を防ぐためである。だから個別支援計画書がネガティブな要素に捉えられることが多い。


「運用」するためには「共有」も必要だ。でないとサビ管からの指示が「その場しのぎ」ととらえられてしまう。

先日実際に耳にした話だが、とある他事業所から転職されてきた支援員が、個別支援計画書を初めて見たと言っていた。以前勤めた事業所では見たこともなかったと言う。
残念ながらこれは決して珍しい話ではない。福祉事業所において、個別支援計画をしっかり運用しているところと作成のみで終わっているところと、二極化しているのをたびたび痛感する。



個人的には、個別支援計画書はもう少し現実的で本人が興味をそそられるものであってほしいと思う。

例えば、占い好きな人が占い師に自分の未来を占ってもらったその結果は身を乗り出して聞くと思うし、あるご夫婦がこれからの人生設計についてFPに相談したその回答は真剣に実際の生活に生かしていくと思われる。

福祉サービスを利用する彼らにとっても「自分のこれからのことについて」ニーズをちゃんととらえてサポートしてくれる、そのようなプランでないとならない。
個別支援計画の説明時に彼らが果たして身を乗り出してその内容に興味を惹かれるか。ここがサビ管の腕の見せ所であり、魅力的な役割だと思っている。
実際そのような思いで私自身サビ管を長く務めてきた。


サビ管業務については、例えば「事業所の運営」に関する部分や「人事」に関わることなど、語ればきりがないが、ひとまず今回はここまでにととどめておく。




個人的な結論としては、このような存在は福祉事業所には必要だと思う。
ただそれが「サビ管」でなくても良いとは思うが、現段階の制度上「サビ管のような存在」を明確にする必要は当然ある。


サビ管に対しマイナスな思いを抱く人もいる反面、サビ管を目指し一生懸命実務経験を積み重ね続けている人もいる。
多くの人が魅力を感じ、目指すべき場所として在るべき役割であってほしいと、心から願う限りである。



いっそのこと「サービス管理責任者」と言う名称そのものを変えてみたらどうか。かっこよくてなじみやすいネーミングがあればぜひ提案してほしい。

最後までお読みいただきありがとうございました。皆様のお役に立てるようなコラムを今後も更新してまいります。ご縁がつながれば幸いです。 よろしければサポートお願いいたします。