「Go To トラベルの影響と思われますが、観光客の増加と共に金沢市内でのコロナ感染者数が増え始めています。幸いにして県内はまだ変化はありませんが、県外への外出は極力控えていただけますようお願いいたします。
尚、県民の皆様からの声で緊急対応致しましたのでご連絡致します。県外からの買い物客の増加に関する対策を映像に纏めましたので、合わせてご紹介いたします。
まず、県民の皆様１５歳以上の方々全員に「富山カード」を発行いたします。
映像に出ていますようにカードをリーダー機に翳していただくだけです。これで今までと同じ価格で商品を購入することが出来ます。
また、富山カードを忘れてしまった場合ですが、免許証をお持ちの方は免許証を、免許証のない方は保険証を、要は現住所が富山の方々であることが確認できれば従来の価格で購入できます。但し富山への転入者の方々は本年５月以降の転入者は１年以上居住しませんと、富山カード発行が出来ません。
全てお忘れになりますと、食料品は一品あたり10%平均で価格が上がり、ガソリンはリッターあたり３０円、小麦は政府が指定した価格での購入となりますので気をつけて下さい。

県庁のIT改革室が纏めたシュミレーション結果をご覧いただきたいのですが、石川県、福井県、岐阜県、新潟県からの買い物客の減少により、８月の県内全体の売上が前月比で１割ほど減少する見込みです。また、周辺県のガソリン価格との費用が５円程度になりますが、越県する往復の移動距離を考えると、富山で給油しても赤字となります。買い物も同様で、ビールや清涼飲料水、菓子類、それから小麦は他県並みの価格になるので、転売のメリットがなくなります。転売サイトやネット通販で事業をされていた場合、カードの使用停止とリストに名前が記載され、他県の方の価格を生涯適用させていただきます。

８月の10日前後に富山カードを60万世帯のお宅に配送致します。同封の注意事項にも記載いたしますが、今後日本政府が給付金を支給したり、コロナのワクチン接種や投薬をする際にも、ご本人様である事を確認するカードとなりますので大事に扱っていただけるようお願いいたします。

尚、このカードにはSuuicaに使われているICチップを内蔵しております。県内のスーパーや駅で現金チャージして、買い物や鉄道、バスなどの交通機関の支払いにも活用できます。再度、現金支給となった場合は口座振込ではなくて、富山カードに現金チャージ致しますので宜しくお願いします」

富山県の金森知事の週１の記者会見で、富山カードの発行と県外からの買い物客の締め出しとも言える措置の報告を受けると、転売で儲けていた業者や個人が１ヶ月を立たずして先が見通せなくなる事態となった。
富山に住民票を移して事業継続しようと、富山県内の県境にある市町村の役所に訪れると、富山カードの発行は一年後だし、免許証と保険証の住所変更履歴をリーダー装置が検出して、割引対象外と判断してしまうと説明を受けると、転居転入を断念してしまう。

富山の周辺県はプルシアンブルー社にガソリンスタンド、スーパー事業の進出を要請してゆくことになる。

その点、東京都大田区は真逆の動きとなる。
大田区周辺からの買い物客と給油客が、店舗売上の８割近くを占めている。売上の大半が大田区住民による購入ではなかったのだ。
そのお陰で大田区内各店舗の7月以降の収益は記録的なものとなる。客は地域住民にほぼ限定されていたからだ。

太田区内における新しいガソリンスタンドの設置は年内は２件/月のペースに抑えて、様子見とする一方、区内のスーパーの大半がPBマートの食料品を扱うようになり、薄利多売に大きく貢献していた。プルシアンブルー社東京支社は新たな事業に参入する。

PBマートは、ネットスーパー事業への参入を表明。８月２０日より目黒区、品川区、大田区で、無人ドローン宅配による配送サービスを行う。
マンションやアパートなどの集合住宅の方への配達は来年度の予定として、 「庭のある個人宅向け」にサービスを絞って始めると、プルシアンブルー社常務で東京支社長の平泉里子が会見で報じた。

「但し、一度にオーダー出来るのはドローンの積載能力の関係で40kgまでとなります。
それ以上必要な方は、複数のオーダーをお願いいたします」

と里子が発言すると、記者からどよめきが起こった。そんな重量を搭載可能なドローンは今まで無かったからだ。

「都内全域へのサービス時期はいつ頃を予定していますか？」と記者が質問すると、
「世田谷区、渋谷区が年内。杉並区、新宿区、中野区は来年の３月頃になると想定しております。その先はまだ未定です」と里子が回答する。

今回の配達エリアがモリ都議の自民党との同一会派の選挙区と重なると見ていた政治記者は、
「来年の都議選の結果次第で、サービスの対象エリアが広がる？と解釈して良いのでしょうか？また、このドローンを欲しがる企業があると思います。ネットスーパーを既に始めている大手スーパーや、各種宅配会社が思いつくのですが、それらの企業へのドローン提供は考えていますでしょうか？」と踏み込んできた。

「配達エリアに関しては、都内事業所の従業員が100人に満たないものですから、拡大したくても今はできないのが実情です。私どもとしては従業員の雇用を優先いたします。また、ドローンの提供は現在は考えておりません。機密情報の塊みたいなドローンですので外部に出すのは暫く控えさせていただきます」

里子は左右に教え子を並べて、３人が客室乗務員スマイルを振りまくという、ぱっと見では航空会社のような映像美溢れる会見を終えた。流通業界的には、ある意味で前代未聞の会見となったかもしれない。

都内各所へのガソリンスタンドとスーパーへのガソリンと食料配送を要請していた、東京都与党の都民セカンドに対して、要請の破棄であり、宣戦布告のような会見となった。

大田区内の不動産の取引が活発になったと言われるようになったのは、この頃だったかもしれない。

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バンコクのアメリカ大使館が抑えたホテルは、日本チームが宿泊するメゾネットタイプのホテルの近所だった。
日本のアメリカ大使館一行が通り掛かった際に、物資の搬入作業をしていた。偵察チームの報告によると、バンコクのネット通販でオーダーした楽器の数々が運び込まれていたらしい。

「バンドが本格的に練習するつもりなのだろう」と、大使も驚くような値段の機器を購入していた。それでも日本で買うより随分と安いらしい。要は楽器メーカーもその国の所得に合わせて価格設定を変えているのかもしれない。

まさか名無しのバンドが既に５曲を作曲しているとは誰も予想もしなかっただろう。
モリ以外のメンバーが一番度肝を抜かれたかもしれない。モリからプレゼントされたPCに搭載されているAIに驚いた。曲のイメージを記入し、幾つかのフレーズをAIに登録すると、フレーズそのものの修正案も用意されるが、曲全体のサンプルを作成する。後は楽器を演奏しながら、コメントを互いでやりとりし、AIと二人三脚で曲を完成してゆく。手順が分かると２曲目、３曲目はラクだった様だ。
メンバー４人が作曲した15曲の中から、タイの音楽番組でライブ演奏する５曲を多数決で絞り込んだ。モリは時間が無かったので２曲作っただけだったが、３人（もう一人増えて途中から４人となる）の心を掴んだのか、楽器買ってくれて、どうもありがとうという話なのか分からないが、モリの２曲はどちらもモリ以外の４名が絶賛したらしい。
曲のクレジット名はバンド名となり、当てのない印税は５分割される。しかし、メンバーは誰が作った曲なのかよく知っている・・

ロックダウンの影響だろう、バンコクの夜景はラオスやカンボジアのような暗いものだった。久々に日本のビールを飲みまくって寝ていたモリは、サチに息を止められて目を覚ました。鼻の穴を閉じて、人工呼吸状態だった。目の前に誰かの顔があるので物凄く驚いた。

「飲み過ぎだよ・・これ、全部税金なんだからね」サチのどアップがそう告げた。

隣の席の翔子と玲子が腹を抱えて震えながら笑いを噛み殺している。一体何があったのか？一瞬理解が及ばない。

そこで千歳基地の空自パイロットの機内アナウンスが始まる。政府専用機なので日本語だけだ。バンコクの天候、温度、湿度のアナウンスの後の機長のコメントが何故か心に滲みた。

「私達は北海道におりますので、政府が何をしようとしているのか、東京がどうなっているのか、正直疎くなってしまいがちです。このコロナの中で困窮している人達がいて、そこに日本が関わろうとしているのを私は今回初めて知りました。
この機の操縦を任されなければ知らないままだったでしょう。
皆さんがこれからこの地で行おうとしている事は、間違いなく歴史に刻まれます。それなのになぜメディアは伝えようとしないのでしょう。私はそれが疑問でなりません。

測らずもバンコク滞在が出来ませんので、私達クルーもアユタヤまでご一緒して、暫く休暇を頂ます。滞在するホテルは別との事で残念ですが、一夜だけで構いませんので懇親会の開催をクルー一同望んでおります。そこで今回の援助活動のお話を、是非伺いたいのです。

政府専用機のスタッフを長年努めて参りましたが、歴史に関与で来たと思うのは、平壌から拉致被害者の皆さんを羽田までお届けしたのですが、その経験は私だけでして、副機長も機内クルーも今回初めての経験となります。
お忙しい中で、皆様の時間を奪ってしまう後ろめたさを感じながらも、千島にいる専用機のスタッフ、空自の自衛官にも皆さんの取り組みを是非伝えたいと考えております。
事実上の団長はモリさんだと思っています。モリさんの話を聞きたがっているクルーばかりです。異例な状況ではありますが、この場を借りてお願いさせていただきました。
モリさん、気分よくお眠りのところ起こしてしまい、申し訳ありませんでした。快いお返事をいただけると幸いです。

さて、機体は着陸態勢に入りました。ドンムアン空港に着陸致します。シートベルトが締まっているかどうか、今一度ご確認下さい・・」

「なるほど。それでチューしたの？」「うん」

「誰に伝えればいいの？」「降りるときにスタッフの人に伝えればいいんじゃないかな？」

「店の予約とかどうする？費用はコッチで持つし。それとライブ撮影の収録があるのもお伝えしたいね。観客は多いほうがいいだろうし」

「分かった、私がスタッフの誰かと連絡先交換して幹事やる。あ、ハタチって事にしといてね、私一人が飲めないのは嫌だから」

「外務省は１８って知ってるだろうし・・あー、サチがカメラ回すんだから何とかなるか、自撮りしなければ飲んでる姿は映らないだろ？」

「編集するのも私だしね。不味い映像は徹底的にカットするよ。シノちゃんを口説いてる先生とか、元スッチーのお尻を無意識に撫でてる先生とか」

「そんなのしないって・・」
「いやいや。してるんだってば無意識のうちに。それでコロッと落ちちゃうんだよ。

シノちゃんも隣で飲んでてさり気ないボディタッチで攻略されて、翔子叔母様の時も飲み会のあとでしょ？スッチー２人とクルーの女性自衛官、お持ち帰り状態になるよ、絶対。
世界遺産の寺院がライトアップされた、チャオプラヤー川沿いの感じのいいレストランだよ。しかも日本じゃない。一夜のアヴァンチュール・・」

「そんな上手くいかないだろ、普通・・」

「ごめん、お持ち帰りする意志は先生には無いかもしれない。でも、翔子叔母さまもシノちゃんも、先生に抱かれたくてしょうがない状態になったていたのは覚えてるでしょ？」

「え？」
「濡れちゃうんだって、あなたと居ると・・なんで、こんな話しなくちゃいけないんだろ・・」

「サチも？」

「だから、今夜同じ部屋でしょ！」

・・何、それ。それってさ、チートじゃん・・

（つづく）