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BCGが読む経営の論点2023⑩:都市空間の変化に対し、2023年にとるべきアクションとは?(+エストニアの電子政府の話を少々)

読書ノート(80日目)
さて、本日もこちらの本からです。

本書は、経営コンサルティング会社の
BCGが重要と考える10のトレンドを紹介。
また、未来を予測できない不確実な中でも
シナリオプランニングの手法で対応できる。
という内容です。

・BCGが重要と考える10の変化トレンド
 ①陸の移動の変化:EV普及による自動車産業の構造変化
 ②物流の変化:物流危機とデジタルサプライチェーン
 ③食の変化:食品・小売企業が主導する食糧システム変革
 ④医療の変化:ヘルスデータと医療システムの進化
 ⑤エネルギーサービスの変化
  カーボンニュートラルとエネルギー安全保障
 ⑥学びの在り方の変化:デジタル時代における企業/個人の学び
 ⑦通信と放送の変化:メディアの融合と分離
 ⑧決済の変化:ブロックチェーン、組み込み型金融、BaaSの進化
 ⑨都市空間の変化
  スマートシティをめぐる新たなプラットフォームエコシステム
 ⑩仮想空間の変化:メタバースを通じた新しい経済圏の台頭

今日はその9つ目である
⑨都市空間の変化
 スマートシティをめぐる新たな
 プラットフォームエコシステム
 についてです。

スマートシティは都市というプラットフォームの
 エコシスムを新たな情報通信技術で効率化・高度化する
・より多くの人の課題を解決するエコシステムとなる
・未来の都市の主役は企業ではなく、個人となる

・狭義のスマートシティビジネスは、
 データの収集(IoT/通信)→
 管理(データベース/レジストリ)→
 連携(データ連携)→
 分析(ソリューション/サービス)
 の4つのプロセスで構成

・戦略のカギ①:
 データ起点ではなく、ユーザー起点を貫くこと
・スマートシティビジネスは、データ駆動型のサービスを
 どれだけの住民が評価し対価を支払うかが大切
・データがあれば大きな収益が期待できるものではない

・戦略のカギ②:
 一都市に閉じず、広域化を追求すること
・スマートシティは「複数の都市が共同でつくるもの」という捉え方が重要
 ライドシェアサービス事業者が激しい競争を繰り広げ、
 世界で独占的地位にある民泊サービスだけが高い収益性を確保できて
 いるのは、住民向けビジネスの成否はユーザー規模が肝心ということ

・戦略のカギ③:
 ハード面も組み込み、アライアンスでビジネスを展開すること
・不動産開発やインフラの整備・運用のハード面、都市の全体設計、
 資金調達を担うビジネスなどの、都市開発・都市運営・支援ビジネスを
 含めた広義のスマートシティビジネスと捉え直すことが重要
・各プレーヤーがすべきことは基本的には従来の延長線上にある。
 銀行ならスマートシティ実装のためのIoT機器を用意するための
 リーシングなどが挙げられる

■3つの中長期の世界的潮流
①脱炭素
・産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるためには、
 2050年までに約100兆~150兆ドルの投融資が必要だとBCGは試算
・投資が集中するのは電力と自動車。電動化や再生可能エネルギーの
 発電機器のインフラ整備が加速と予想
・スマートシティでは住民の行動変容な排出クレジット管理での
 カーボンニュートラルに向けた取り組みも求められる。
 例:カーボンクレジットを発行し、流通させるために都市全体で
   排出量データを可視化する

②個人IDと中央銀行デジタル通貨(CBDC)
・この領域での実用化で先を行く中国は「一帯一路」の一環で、
 自国の次世代デジタル技術で国際標準化の主導権を確保する動き
・米国・欧州を含め国際標準化の主導権争いはさらに激化している
・個人IDプラットフォームの有力候補の1つは、インドの
 個人IDプラットフォーム「インディア・スタック」をオープンソース化
 した「MOSIP」
・中国ではデジタル人民元を、日本でも日本銀行が
 21年4月に実証実験の段階的な実施を始めている
・CBDCの普及で、決済に関する個人情報を複数サービスで
 横断で連携・確保することが容易になる

③WEB3
・個人IDや決済情報はプライバシーに関わる個人情報。
 行動履歴等の情報と合わせていかに保護するかが極めて重要。
・WEB3では、ユーザーが自身のデータ・個人情報を主権的に
 コントロールできる世界が実現する
・中でも分散型IDは一企業に情報が集中しないため、
 日本においても個人情報の問題の解消に繋がると予想
・DAO(分散型自律組織)とデジタルツインにて、
 デジタル上のまちづくりや都市開発をリアル世界と連動させ、
 都市を改善していくことが可能に。
・住民一人一人がシミュレーションに加わる参加型まちづくりになる

■2023年に取るべきアクション:日本の課題と勝ち筋
・これら3つの世界的潮流は、企業の経済活動を支える事に
 最適化されたプラットフォームという従来の都市を
 地球上のあらゆる人々が自らの幸せを追求するためのプラットフォーム
 
に変化するということ
⇒未来の都市の主役は企業ではなく、個人となる

・日本の課題は、まずは行政DXをグローバルレベルにする事から。
 日本での移行のピークは2023年~25年と予想
・BCGの2022年の調査では日本のオンライン行政サービスの満足度は
 主要国の中でも最低レベル
 (満足度が高いTOP5:カタール・中国・アラブ首長国連邦・
  インドネシア・エストニア)
・民間主導で価値あるサービスを全国規模で実装する
 スマートシティにとって個人データは必須ではない
・照度、空気室水質、廃棄物量の環境データ、
 交通流動などの統計データでも十分実装できることはある

・日本の勝ち筋は、いかにフィジカルとサイバーを繋げられるか
・デジタルツイン上で年を継続的に改善できる世界の実現に向けて、
 フィジカル(リアル)空間での挙動をセンサーなどで把握した上で、
 サイバー(デジタル)空間にも正確に反映でき、サイバー空間での営為が
 遅延なくリアル空間に反映されることが必要となる。
 代表例は東大生産技術研究所の「コモングラウンド」
・WEB3の本質は、これまで中央集権型だったインターネットを
 非中央集権型(分散型)へと変えるパラダイムチェンジ
・これにより従来では困難だった課題解決が可能になる

・エコシステムの構築そのものは、必ずしも儲かるものではないが、
 向こう30年を見通したルールメイキングに日本も主要プレーヤーとして
 参加できる状態であることが重要

今回はスマートシティに関する
テーマでしたが、日頃から耳にする
WEB3がこのようなところに繋がってくる
ということで理解が深まりました。

今回のテーマを要約するとしたら…

スマートシティが実現すると…
都市の主役は、企業から個人になる。


その状態とは…
人々が自らのの幸せを追求することができる都市で
個人が参加型で都市開発にも関わる事ができる状態


そのために必要なのは…
少なくともWEB3とデジタルツインの技術発展
・WEB3は個人データを自らが所有し管理する事を可能に、
・デジタルツインはバーチャル上で都市開発を
 シミュレーションする事を可能にできる。
 その結果、都市開発を素人の住民の集まりでも、
 より良い意思決定ができるようになるはず…

とこんな感じでしょうか。

もう10年前の話ですが、
JR東日本がSuicaの乗車履歴を活用した
統計データを社外に販売する検討をすると
発表したところ、批判の声が大きかった事を
覚えている人も多いのではないでしょうか

もしWEB3の世界が実現すれば
この乗車データを各個人が所有し管理する
世界に変わる、ということで
データ提供で恩恵を得たい人はデータを提供し
データを提供したくない人は拒否できる、
そんな世界が始まるのかもしれない…?

そうすれば、データを活用した都市開発で
スマートシティの実現にかなり近づくのでは?
といった妄想をしてみました。

本書の中で、オンライン行政サービスの
満足度が高い国の一つとしてエストニアが
紹介されていました。

エストニアが行政サービスで先進的で
あることは数年前に参加した勉強会で
教えて頂いたことを思い出しました。

ほとんどの行政サービスはデジタルで
手続きができるようになっているものの、
婚姻などに関する人生で重要な決断にあたる
手続きは、紙のままで残している
とのこと。

エストニアではすべての成人した国民がIDカードを持ち、婚姻・離婚・不動産売却の手続きを除くすべての公共サービスを24時間365日いつでもインターネットで利用できる。

https://ideasforgood.jp/2019/07/05/estonia-digitalization/

この話を聞いた当時、
何でもデジタル100%を目指すのではなく、
そういうメリハリがある設計ができることって
素敵だなぁと感じたのを思い出しました。

ちなみに、エストニアの電子政府では
国民の情報は学歴・生い立ち・犯罪歴など
全ての個人データが管理されているものの、
政府がアクセスできるデータの種類を限定する事で
個人が自身のデータを管理している状態を実現
しているみたいですね。

https://ideasforgood.jp/2019/07/05/estonia-digitalization/

そういえば
このエストニアの電子政府って
会社でいう従業員の個人データを
人事部が中央集権的に管理している状態から
従業員自身が管理する状態にして、
会社がその個人情報にアクセスして良いかは
従業員の意思で決める事ができるようになる

そんな世界は、会社という
小さい単位で起こせる変化なので
近い将来に実装する会社も出てきそうですね

ということで、今日はこの辺で。
それではまた明日―!😉

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