【映画レビュー】「ラストナイト・イン・ソーホー」(2021年 イギリス)〜夢見る少女が夢で見た非情な現実〜

【タイトル】
「ラストナイト・イン・ソーホー」(2021年 イギリス 117分)
監督 エドガー・ライト
脚本 エドガー・ライト、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
出演 トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ、ダイアナ・リグ

※本作には、暴力、グロテスク、性的な描写が含まれております。


【あらすじ】
 デザイナーを夢見る少女、エロイーズ。
 彼女は憧れのロンドンのデザイナー学校へ行くのだが、寮の生活に馴染めず、ちょっと意地悪な老婆が管理人のアパートへ引っ越す。


 アパートのベッドで眠るエロイーズ。
 すると何故か、記憶にはない60年代のロンドンの夢を見る。

 不思議な夢の中、エロイーズはサンディという歌手志望の美しい女性を見つける。
※この夢の中では、誰もエロイーズの存在に気づかない。また、エロイーズも夢の中に干渉できず、本当にただ見ているだけ。
 スターを目指して頑張る彼女に、今の自分の姿を重ねて応援するエロイーズ。
 次第にエロイーズの意識は彼女の身体の中に入り込み、意識が同化していくのであった。



 目を覚ますと、エロイーズはアパートのベッドに居た。現在のロンドンだ。
 不思議な夢を見たエロイーズは刺激を受けたのか、オシャレを始めたり、次々と斬新なファッションのアイデアが出るようになったりと、私生活に影響が出始める。


 ある時、エロイーズは夢の中に出てきた場所が実在する場所だったことに気づく。
 どうやら、エロイーズはあのアパートのベッドで眠ると60年代のロンドンへ意識だけがタイムスリップしてしまうようだ。


 夢という形でタイムスリップし、夢に向かって頑張るサンディを見守り続けるエロイーズ。
 しかし、サンディはある男に騙されたことがキッカケで、ストリップや売春などを行うようになってしまう……。
 そんな悲惨なサンディの姿を見続け、精神が病んでいくエロイーズ。

 やがて、エロイーズは現実と夢(過去)が曖昧になり、幻覚を見るようになってしまう……。
 そして、エロイーズはサンディの事を知って行く内に、とてつもなくおぞましい事件を知ることになる。


【感想】
 60年代のカラフルでレトロポップな雰囲気で始まり、中盤からは陰鬱なサスペンスホラーへと急展開。
 クライマックスで明らかになるサンディにまつわる事件と、まさかの犯人の正体と真実に驚愕。
 エロイーズがアパートでサンディの夢を見ていたのには、ある理由があったのだ。

 泥沼に落ちて自分を見失った女性と、そんな彼女を最期まで見つめた少女の恐ろしくも哀しいサスペンス映画だった。


【ちょっとだけネタバレ】
 壮絶なラストで事件は幕を閉じ、エロイーズは日常へと戻る。
 ある時、鏡に自分ではない誰かが映っている。
 鏡に映る誰かと手を合わせるエロイーズ。
 時空を超えた二人の奇妙な関係に、言葉には出来ない妙な切なさを感じた。

 なお、アパートの管理人の老婆役のダイアナ・リグは本作が遺作になっている。
 素晴らしい名演技でした

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