実質(設問がある物語 31)
本の物体としての価値とは、どのようなものでしょうか。
旅人はもう何年も何年もそれを探し続けていました。多くを失い途方もない苦労の末、旅人はたどり着きました。それは何枚かの紙でした。
その紙はぼろぼろでした。互いに糸で縫いつけられていることから、かつては本の体裁をとっていたことがわかります。手に取ると端からぼろぼろと破片がこぼれるため、旅人は注意深くページをめくりました。そして、ついに目的にたどり着いたのです。その紙に記された実質を見て、旅人は涙して、跪きました。
旅人はもっていた丈夫な紙に丈夫なインクで、ぼろぼろの紙に記された文字列を書き写しました。長い旅路を共にするには、ぼろぼろの本は弱すぎたのです。
旅人が去ってすぐ後、紙は家屋とともに朽ちました。その後旅人が書き写した文字列を元に立派な本がつくられ多くの人の心に触れましたが、旅人ほど、その実質に涙したものはいませんでした。
というイメージが好きです。
✂︎
ここまでで物語は終わりです。
あなたへの設問
設問1
本と書かれている内容との関係について考察しなさい。(500字程度)
設問2
旅人が本を探す物語を書きなさい。(1500字程度)
高濱です。私の小さな物語を読んでくれて どうもありがとうございます。沁みます…。 読んでくれたことがうれしい。ありがとう!