思春期デコボコ相談室


 大下隆司著「思春期デコボコ相談室 母娘でラクになる30の処方箋」を読みました。著者は精神科医で、代々木の森診療所の院長です。昨年、出版社の方に3冊ご恵贈頂いた中の1冊なのですが、2冊はすぐに読んだものの、本書だけちょっと時間が空いてしまいました。姪っ子も中学生になったし、先日読んだ「トランジェンダーになりたい少女たち」にも関わってくると思い、続けて読みました。

 思春期の子を持つ母親の悩み相談といった内容でしたが、冒頭、「思春期の心と体を診ることは、脳の発達を診るということでもあります。」とありました。脳の発達は見た目で成長具合が分からないので、とにかく話を聞くのだそうです。また「治療するには診断名を付けなければなりませんが、診断名はあえてつけなくてもいいと思っています。」とありました。私は常々、病名を付けてカテゴライズしてしまうことをあまりよろしくないと思っていたので、こうした姿勢の医師もいると思うと安心できました。「精神科の病名はとりあえずつけている程度のもので、慶かによっては変わってくるし、時代によっても変わってきました。」とありました。これくらい柔軟な姿勢でよいのでしょうね。

 「『誰かに監視されている』とか『人が自分の悪口を言っている』などと思い込む被害妄想は、思春期に発症が多い統合失調症の症状というイメージが強いですが、こういった妄想的な症状は自我が肥大する思春期にはフツーによくあるのです。」とありました。私自身は監視されていると思ったことはありませんが、「悪口を言われているのではないか?」という不安に駆られていることはよくありました。これって、現代では統合失調症になってしまうのですね。ちょっとびっくりです。見た目ではわかりませんから、そうした不安を口に出すか出さないかでも医師の対応が変わってくるのでしょう。著者が診断名を告げるのは、それによってその子にメリットがあるときのみにしているとあり、素晴らしいなと感心しました。

 30の質問に答えていますが、親御さんによって悩みは様々、それに対してそれぞれ丁寧に対応されている印象でした。総じて言えるのは思春期というのは成長過程であるということです。80年ある人生の前半1/4にも到達していないのですから、当たり前と言えば当たり前ですし、本書のタイトルにあるように皆それぞれ「デコボコ」で違うのが当たり前です。親、大人としては、そうした時期にいろいろ決めつけることはせずに、おおらかに包み込むような対応が必要なのだなと思える内容でした。ですから、思春期ブロッカーやら、テストステロン投与やら、性別適合手術なんて言うのは成熟した大人になってから検討するべきことだということでしょう。

 脳についての解説も交えてあり、楽しく読ませて頂きました。

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