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小説『無題』

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文学フリマ2018(東京11月開催)に発表した作品を投稿しています。
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記事一覧

小説『無題』~2018年文学フリマ発表作品⑥~

先日は第29回文学フリマ,メゾン文芸部のブースに来ていただきありがとうございました。

本当は当日までに去年の作品を上げたかったのですが,叶わず。

本日最終回になります!

よろしくお願いいたします!

7. 制圧
アルファチームは4人編成で組まれていた。普段はもう少し多いのだが作戦の性質を考慮し,最小限の人数に絞り込まれた。そろそろ降下ポイントだ。時間は1時間。その間に全て片付けなくてはいけな

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小説『無題』~2018年文学フリマ発表作品⑤~

こんばんは。

本業が忙しくなってしまって,気づけば当日まであと3日。

駆け足で昨年の作品を投稿していきます。

よろしくお願いいたします!

5. 決断

陸上自衛隊習志野駐屯地の会議室の一室では救出作戦のブリーフィングが行われていた。
誘拐事件について分かっていること,他国また他部隊からの支援,救出作戦の概要,作戦スケジュール,装備,交戦規定,脱出ルート全てを説明したのち,群長はこう言った。

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小説『無題』~2018年文学フリマ発表作品④~

昨日と今日と,今年の文フリについて告知をさせていただきました。

新作『明けない夜――犯罪行動心理等分析室捜査ファイル――』よろしくお願いいたします!

本作の執筆,校了作業が大詰めだったため昨年の作品を投稿できずにいましたが,再開いたします。

今週末が今年の文フリなので,それまでに去年の作品を公開できればと思ってがんばります。

読みやすくなるように加筆修正しました。よろしくお願いいたします!

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小説『無題』~2018文学フリマ発表作品③~

例によって第3章です。投稿に当たって一部加筆修正しました。

よろしくお願いいたします。

3. 「彼ら」

新宿区市ヶ谷にある防衛省の会議室の一室では首相,危機管理監,防衛大臣と各陸海空自の幕僚長が集まっていた。
「というわけで,日本が単独で救出作戦を行うことになった。他国の直接的な支援は見込めない」
首相がこう締めくくるとまず防衛相がまくし立てた。
「なぜだ。日本だけの問題じゃないだろう。あち

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小説『無題』~2018文学フリマ作品②~

(先日投稿した小説の続きになります。若干,出版したものに加筆修正加えました。よろしくお願いいたします。)

2. 「彼」
事件の第一報が入ってから6時間後,管理監が報告しに来た。「東雲という男,掘り下げてみたらいろいろわかりました」
「何が」総理はすぐに聞き返した。
「これを見てください」
総理に渡された資料には,彼の身元だけでなくカードの使用履歴,ネットの閲覧履歴,大学と大学院での研究内容,勤め

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小説『無題』~2018年文学フリマ投稿作品~①

No.3

0. プロローグ
その連絡が入ったのは突然だった。いつも通りの会議を経て会議室を出たとき秘書から言われたのだ。
「邦人旅行者が拘束されました」
まったくもってトラブルというのは予期せずして訪れる。にしても今日でなくてもいいのに。ならいつならいいのだ? 明日? それも違う。自分の在任中に起きてほしくないだけだ。誰だって面倒ごとは避けたいだろう。ため息を一つついてからこう言った。
「地下に

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