機能を追加することで「ユーザーの決断を減らせているか」に注目すると良さそう
デザイナーとして働くことで身についた「無自覚の職業病を自覚し言語化すること」を自身のnoteテーマとしてみました。
いきなりですが、
「このモバイルバッテリー。使いやすくて便利です!」
「使いやすくて便利!」という単純な感想だけでなく、日頃の仕事(Webデザインなど)に役立つヒントがないか探ってみます。
使いやすいってのは……。
便利ってのは……。
…。
といった感じで思考を巡らします。
今回は次のようなデザインのヒントが見つかりました。
人は「便利さ」に対してかなり貪欲
まずは、製品の紹介ページを読むことで、この製品が「ユーザーのどんなニーズを満たしてきたか」を勝手に妄想してみます。
自分が気になった製品の”作り手”と”使い手”の間にどんな思考やコミュニケーションがあったかを妄想してみると、それが事実かどうかとは別に”思わぬ気付き”が得られたりします。
さて、「モバイルバッテリー」と「USBケーブル」に対して人々はどんな欲求を持っていたのでしょうか。
ここから読み取れるユーザーの声(欲求)はこんな感じでしょうか。
なんというか。。
人って便利さに対してかなり貪欲ですね!!!!
さすがにこれだけの機能要求を叶えているなら「便利なのも当然!」という気にもなりますが、世の中にはユーザーの声を聞いた結果、「便利なのに使いにくい」というモノも存在します。
ぱっと思いつくのはテレビのリモコンや多機能オーブンレンジとか家電周辺に多そうです。(完全に私の主観ですが…)
あきらかに便利とは言えるのですが、使いやすいかと問われると答えにくい…。
少し検索してみても、似たような意見がそれなりに存在するので、特に珍しい意見でもないと考えられます。
「便利なのに使いにくい」
なんとも言えない微妙な響きがありますね。
「使いやすいもの」と「使いにくいもの」って何か違いがあるのでしょうか。
「便利」と「使いやすい」はわりと違う
「便利」だとか、「使いやすい」という言葉は似たシチュエーションで用いられることが多いため、とりあえず同じ引き出しの中にしまっていたのですが、よくよく考えるとけっこう違う意味なので考え直しました。
一度整理してみます。
「便利」は「目的を果たすのに都合が良い、役に立つ」というところからも、デザインの場では「機能性」と関連度が高い言葉となりそうです。
なので、目的のために役立つ「機能」を追加することによって、便利さは高めやすく、「多機能なので便利」という状態もわりと成立しやすそうです。
次に「使いやすい」ですが、「使うことについて困難がないさまを意味する表現」というところからも、デザインの場では「精神性」と関連度が高い言葉かもしれません。
具体的に「何ができるか?」よりも、初見で操作が簡単と思えるか否かなど、それを扱う際の「心理的なハードル」に大きく影響を受けそうです。
なので、機能追加によって複雑さが増すことで「使いやすさ」が低下し、「便利だけど使いにくい」が成立してしまう可能性があります…。
は…!!!
『そういえば「UXハニカム」でも「useful(役に立つ)」と「usable(使いやすい)」はきちんと分けて語られていたなぁ…。』というのを思い出しました…!(知識と体験が繋がる瞬間でした)
シンプルさを保つためによくあること
ユーザーのニーズに応えることで「便利さ」を高めることは直線的に実現できそうですが、「使いやすさ」を損なわない機能追加には工夫が必要そうです。
まずは複雑さを回避するために”機能追加を制限する”という方法が考えられます。これはUIデザインの機能追加シーンでよくあることですし、エディトリアルデザインでは情報追加シーンでもよくある攻防です。
ユーザーやビジネスサイドから様々な要求が来て、「いや、それを追加するとうんぬんかんぬん」となるべくシンプルさを保とうとする役回りに回るデザイナーは多いように思います。
それも時には必要でしょうが、それに終始してしまうと多くの要求に応えられず、残念な結果も招くこともあります。
できれば、それらの要求に応えた上で、「便利さ」も「使いやすさ」も高めるアイデアを実行できるのが理想だとは思います。
矛盾する要求を両方叶えられる「第三の視点」を持てるデザイナーになりたいものです。
「使いやすくて便利!」な機能追加はユーザーの”決断を減らすもの”
さて、こちらのモバイルバッテリー(とケーブル)ですが、わりと多くの機能を盛り込んだ欲張りな製品です。
けれどかなり使いやすいので、その使いやすさがどのように保持されているのかを考えてみたところ、次のような「ユーザーの決断を減らす工夫」があることに気が付きました。
【1】機能や使い方が見ただけでわかる(わからないものがない)
→およそ全ての機能が形状によって理解できる状態なので、使い方について考えたりマニュアルを読む必要がない
【2】利用シーンを限定せずに作られている(使い分けなくていい)
→どんな状況でも使えるように作られているので、使い分けを意識して持ち出さなくていい(これによって充電切れの頻度も極端に減らしている)
【3】使う時に丁度いい形に調整できる(あらかじめ考えなくていい)
→使用時の状況に柔軟に合わせることができるので、購入時の段階で使用状況を細かに考えなくていい
このように、機能追加を制限することよってシンプルさを保持するのではなく、ユーザーの決断を減らすような方向に機能を追加することで「体験をシンプル」にして使いやすくしているのが面白いです。
そういえば「Nintendo Switch」も似たような構造で体験をシンプルにしていますね。
また、体験をシンプルにすることでの機能性と使い勝手の向上はUI領域でも活用できそうです。
以上、モバイルバッテリーの作り手の思考プロセスを妄想することで発見したデザインのヒントでした!
いただいたサポートはデザイナーとの交流に使わせてもらいます!