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低評価映画『麻雀放浪記2020』はクソ映画なのか?

「麻雀放浪記2020」とググった時に、一番上に出てくるページは「映画.com」のページで、5点満点中の評価2.4という数字と共に3つの星(3つ目の星は半分だけ)が一番先に目につく。2.4という数字は97件レビューされた中の平均値であるらしい。

一方、Amazonのサイトで「麻雀放浪記2020[DVD]」の評価を見ると5点満点中の評価3.7であった。(2021年5月17日現在)これは割と高いと思う。とはいえ、評価は期待値と相関性があることは言うまでもない。映画で酷評された作品の期待値は当然下がる。

予告編だけを観て期待値を上げ映画館に観に行った人の評価と、映画の内容や映画を見た人の評価を知り、期待値が下がった後に、DVDを買ったり借りたりして観た人の評価は異なるに決まっている。

2021年5月17日の深夜2時頃。僕は、Netflixのアプリを開き、何の期待もせず、この映画を見始めた。そして、深夜4時前に見終わった。おもしろかったー、というのが率直な感想だった。

昭和に戻りたいですか?

『麻雀放浪記2020』は『東京オリンピック2020』に対するアンチテーゼである。現代と昭和における技術の変化と人の価値観の変化を、つまり、変わる人々と変わらない人々を、ブラックコメディの中で描いている。

思えば『東京オリンピック2020』は希望を持って準備が進められていた。インバウンド需要が高まり、とてつもなく大きな経済効果があることが見込まれた。いくら投資しても、回収できるだろう、という雰囲気があった。

『東京オリンピック2020』は多くの人にとって希望であったし、それを実現させるための大きなお金の動きは、多くの人たちの生活を支えたし、多くの家庭の人たちの財布を潤わせた。

しかしながら、2021年5月17日のこの状況である。

ところで、皆さんは昭和に戻りたいですか?

混沌だからこそ人は分かりやすさを求める

近未来を描いた作品の多くは、豊かな人と貧しい人が極端に描かれがちだ。しかし、それは真理であるような気がしている。

今現在、貧富の差は拡大しているように感じる。さらに資本主義が続けば、資本家は富を拡大していき、その歪みは、資本家以外の全ての人たちに不平等に降りかかってくることは予想できる。

たからこそ、シンプルな思想に人は流されてしまうように僕は思う。信仰宗教、勝ち組、負け組、命を賭ける、リスクをおかす、何も賭けない、リスクをおかさない。シンプルな価値基準、シンプルな判断基準は、わかりやすくて良い。

思考停止が出来るからだ。混沌の中で、大量な情報について、考えなくて良いし、「どう生きるべきか」などの問いについて思いを巡らす必要もない。それはとても楽である。

主人公の哲は、麻雀に全てを賭けている。非常にシンプルだ。そして、映画の中で描かれる日本はとても混沌としている。だから、哲は、映画の中で、一気に国民的スターとなることができた。

名作小説×ディストピア×ブラックコメディ

この映画の原作は、1969年に書かれた阿佐田哲也の小説である。この小説は1975年以降、何度も漫画化され、また、1984年に映画化もされ、どれも名作として評価されている。

2021年5月現在、おそらく日本はディストピアではない。しかし、この映画の中での日本は、AIと警察による監視社会が描かれ、失業者に溢れた路地裏では、子どもたちが賭博をしている。まさにディストピアであった。

そして、竹中直人演じるクソみたいな芸能事務所の社長クソ丸、ピエール瀧演じる戦争のため中止となった東京オリンピック2020組織委員会の杜(もり)など、ブラックユーモアたっぷりに描かれていた。

2019年4月、2020年以降の東京を舞台とした映画『麻雀放浪記2020』は公開された。

東京オリンピック開催前、世界がウイルスに蔓延される前に制作され、ピエール瀧のコカイン使用やその他諸々の諸事情にも関わらず、全編ノーカットで上映された。

ちなみに、この映画は全編iPhoneで撮影されたそうだ。

その諸々が、奇跡的にマッチして、僕にはとてもおもしろかった。

僕の結論、この映画はクソ映画ではない。/『麻雀放浪記2020』(5点満点中3.5点)/割とおもしろい、ディストピア×ブラックコメディの名作パロディ映画である。

以上です。いつも読んで頂きありがとうございます。また読んでください。


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