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母を想う④コックの息子と結婚してよかった


  

  コックの息子と結婚して良かった

母が忘れる病気になってからよく言っていた
言葉です。
わたしの父方の祖父は洋食のコックを
していました。
ですので、父はコックの息子です。


母は忘れる病気から、料理ができなくなって
いきました。
「おかずが作れないから・・・」
とスーパーのお惣菜をたくさんたくさん
買ってくるようになりました。
買ってきたことを忘れて、また同じおかずを
買ってくるようになっていきました。
近くに暮らす娘のわたしが作っていくと
喜んではくれるのですが、自分が用意できない
ことが情けない・・・とも感じてしまう
ようでした。
そんなとき父が言いました。
   
    「オレはコックの息子だから、
     大丈夫だ!」
       

母は
「よかった~、じゃあ、おじいちゃんが
ご飯係ね!
 コックの息子と結婚してよかった~!」


けんかもたくさんしていた2人でしたが、
最後に頼れるのはやはり腐れ縁だからと
笑っていた夫婦だったようです。


母が元気だった時、家事は一切母にお任せだった父ですが、やはり血は争えないのか料理はなかなかの腕前でした。
野菜炒め、魚の煮つけ、ふきみそ・・・」
どんどんレパートリーを増やしていきます。
売り場に置いてある料理のレシピを持ち帰り作ってみたり、下ごしらえも丁寧です。


おいしい油揚げやさんがあることを教えてもらった父は、母を連れて買いに
行っては、甘辛く煮つけてくれました。
これは、油抜きが一番の仕事です。
これを丁寧にやってくれるので、ほんと
おいしい!
母も喜んで食べていましたっけ。


母が亡くなってから初めて迎えた母の誕生日。
父が供えたのは、油揚げの煮物でした。
「ばあちゃん、今日の味つけはどうだ」
と聞いています。

わたしは、マンゴー味のフルーチェを。


      コックの息子


この言葉に母は安心感を感じ、父にゆだねる気持ちを持てたのかな、
父は自分を奮い立たせているのかな、


と、コックの孫は考えています。









   










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