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ハワイの語学学校の現実


アラモアナショッピングセンターの裏手にある語学学校の学生は、ほとんどが日本人だった。

受付を済ませると、最初にテストを受け、上級者クラスに入ることになった。

午前中はスピーキングとリスニングの授業で約15人ほどのクラス、午後の授業はライティングで約20人ほどのクラスだった。

午前中のクラスの英語講師は若いアメリカ人男性で、講師としての質も低いのか、学生たちにあからさまに舐められていた。

20代から50代までいると思われる、年齢がバラバラなこのクラスの学生たちが、どのくらいの期間、その講師の授業を受けてきたのかわからないが、私が入った時には既に講師に対する尊敬は誰からも感じられなかった。

後でわかったことだが、このクラスはほとんどが雑談で、講師の話す内容も質の低いものだし、くだらない講師の世間話を聞くのも飽きた学生たちは、勝手に日本語でおしゃべりをしている。

私が大学生の時に行ったニューヨークの語学学校の学生は、7割以上がヨーロッパや南米からの外国人で、その他にアフリカ系やアジア系が2割程度だった。

アジア系の中では韓国人が一番多かった。

ハワイはリゾート地で物価も高いので、世界各地から勉強する目的で来る人は少ないのだろう。

そして、いまだに日本人に大人気の場所なので、語学学校の学生も、日本人が大半になるのだろう。



初めて語学学校に行った日、私がテストの後、クラスに入っていったときには、20代の講師がハワイ州の運転免許の筆記試験に落ちたという話をしていたところだった。

その日、午前のクラスに出席していた15人ほどの学生はすべて日本人である。

講師の話がまだ終わらないうちに、髪を金髪に染めた20代半ばくらいの歯並びの悪い日本人の男の子が、日本語でみんなに聞こえるように言った。

「こいつ、ハワイで今まで何度も免許の筆記試験に落ちてるんだぜ。本当にバカなんじゃねえの?」

数人が笑う。

「日本人の俺らだって普通に受かるよな。俺だって受かったよ。

アメリカ人なのに、あんな簡単なテストにも受からないって、どんだけ頭悪いんだよ、ヤバくね?」

クラスの全員が彼の話を聞いているわけではなく、離れた場所に座っている人たちは携帯をいじったり、窓の外を眺めたりしている。

金髪の若者は構わずに、はしゃいだ様子で続ける。

「こいつ、今までも本土の色んな州で運転免許が失効してるって言ってた。なんか怪しいよな。本土から逃げてきた犯罪者だったりして。」

彼の隣に座っていた、茶髪のもう一人の若い日本人の男の子が加わる。

「だよな。だいたい、アメリカ人ならだれでも英語講師になれるじゃん。まともな職に就けないバカしか英語講師にならないよな。給料も安いだろうし。」

彼等は講師の目の前の席で日本語でしゃべっているが、何を言っているかわからなくても、自分の悪口を言っていることは講師にも伝わっているようだ。

話を遮られた上に、目の前で勝手に日本語で自分を侮辱することを言われたら、誰でも頭にくるだろう。

でも、アメリカ人講師は彼らを注意せずに、不愉快そうに眉をしかめて睨むだけだった。

カオス・・・。

私は思った。

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