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読書感想文:差別の民俗学/赤松啓介

差別の民俗学  赤松啓介 著


本当のところ、元の出版から古い本だ。
調査研究は戦前に属している。

ただ、だから意味がないということではなく、柳田民俗学のアンチテーゼとして大きな存在感を持っているのは変わらない。
解説者の赤坂氏も言っている通り、この本そのものをうのみにすることはふさわしくないし、それがすべてではないけれど、80年代に脚光を浴びたこの本が、新世紀にいたって文庫化されるときに「話題になる」ことそのものが何かを浮き彫りにしているんではと思いつつ、本そのものは古くても面白い。 

…まあ、面白いのではあるが、著者については、在野の研究者にありがちな(非難ではない)視野の狭窄も見られはする。

すなわち、己の知っている世界の実存を元に、全ての民俗学の、性の世界を規定してしまいがちであるという面だ。

しかしそれは反面、強烈な意思であり、現実であった衝撃をも以って、高邁な学問の世界では葬られがちな視面に光を当てるという側面も持っている。

民俗学という主旨で読むと失望するかもしれない。

だが、確かにこれは、彼の存在が面白い。


(2011/12 民俗学としては異端の部類に入る研究者である。率直に言えば時折表現は卑俗だ。だが、卑俗でしか表現でき得ない事象があったとしたらそれもまた必要な何かだったのだろう)


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