第1回「デザイン経営」宣言 カンファレンスレポート

23時間で埋まってしまったという今回のイベント。
すごい熱量のイベントだったので、noteにまとめておこうと思います。
【緊急開催】第1回「デザイン経営」宣言 カンファレンス〜15年ぶりのデザイン政策提言についての公開ディスカッション

2018年5月23日に公開された「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書、皆さんは読まれましたか?
「デザイン経営」宣言という言葉は聞いたし、共感したけどより深く理解したいという人向けのレポートです。
お友達のわなみんちゃんのグラレコが素晴らしいので、こちらも合わせてぜひご覧ください。

今回のカンファレンスは、共催である公益財団法人日本デザイン振興会が入っているDESIGN HUBにて開催されました。

なぜこのカンファレンスが実現したのか?

「デザイン」の定義からスタートした今回の研究会。議論が白熱したあまり、当初の予定よりも回を増して議論を重ねたそうです。異例とのこと。
今回の宣言がゴールでなく、この宣言を起点に皆さんと一緒に考えていくべく、公開ディスカッションの機会を作ったそうです。

イベントの構成は二部構成に分かれており、一部は「デザイン経営」宣言のPDFにそって解説+研究会のみなさんの想い。二部は一部を受けたオーディエンスのフィードバックを元にしたディスカッションという構成です。ディスカッションが目的であったため、構成も工夫されていました。

登壇者紹介

今回の会は「産業競争力とデザインを考える研究会」の有志が集っているそうです。緊急開催にも関わらず業界のトップランナーがこれだけ集まれること自体素晴らしいことだなと思いました。

梅澤高明さん A.T.カーニー株式会社パートナー 日本法人代表
小林 誠さん デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアヴァイスプレジデント
田川欣哉さん 株式会社Takram 代表取締役/英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 客員教授
田中一雄さん 株式会社GKデザイン機構 代表取締役社長/公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会 理事長
林 千晶さん 株式会社ロフトワーク 代表取締役

ここからはまず、「デザイン経営」宣言のPDFの内容の補足と、それを元にしたディスカッション内容をまとめ、掻い摘んでご紹介します。(説明が流されたページは飛ばしますのであらかじめご了承ください。)

1.「デザイン経営」の役割

デザイン経営の効果とは?=企業競争力の向上
まずここで確認したいことは「デザイン」の話でなく「デザイン経営」の話であるということです。「デザインの効果」ではなく「デザイン経営」の効果の話です。

デザイン経営の効果とはこの2つ。
①ブランド力の向上(顧客への魅力):ブランド構築に資するデザイン
②イノベーション向上 :イノベーションに資するデザイン

「デザインとは何か?」というそのものの話になると、分類やor論に陥りがちであると研究会の皆さんもおっしゃっていました。大きな分断の例をいうのであれば「デザイン思考なんかに紛らわされるな!派」や「モノづくり至上主義派」のようなことです。

研究会の議論でも、この円に関しては一番時間を費やしたそうです。広義のデザイン、狭義のデザインなどの分断した表現の「or」ではなく「and」の表現をしたためこのような両輪になっています。
また本来であれば経営者に届けたいところですが、「デザイン経営」宣言は、まだデザイナーに対してしか発信できていないのではないかという課題感があるそうです。経営者に届けることができ、デザインの価値をわかってくれる経営者が増えれば、企業の中の意思決定やバランスが変わります。その結果、企業競争力が向上するのです。

また、企業によって「①ブランド力の向上」と「②イノベーション向上」のバランスが違うのは当たり前で、良し悪しではなく①と②の比率が企業のキャラクターになり、それぞれ得意なことをやるのが良いのではとタクラムの田川さんはおっしゃっていました。

3.産業とデザインの遷移

ここで注目したいのが、「産業世代」と「デザイン分類」です。特に「デザイン分類」は『1.「デザイン経営」の役割』の「①ブランド力の向上」と「②イノベーション向上」に行き着くまでに発明されたものが挙げられています。私たちは日頃から割と分類してしまいがちですが、デザイン経営にはどれか一つではなく、束ね合わせてユーザーに価値を提供していることが重要とされています。
日本は、20世紀型のデザインではデザイン大国としていましたが2000年以降は世界に完敗しています。現在もこのままいけば負けてしまう可能性が非常に高く、そうならないためにも私たちはデザインを武器にする必要があるのです。

ここで興味深かったのはロフトワークの林さんの言葉です。「モノであろうと、モノでなかろうとユーザーを考えて作るのでみんなUXデザイナー。どこでも繋げられる中で、どう価値を設計するかが重要。」とおっしゃっていて、UXの中でどんなビジネスのチャンスがあるかを考えなくてはいけないなと実感しました。

モノとコトの人たちがうまく結束している(「or」ではなく「and」)例として挙げられたのが、Appleのデザイン組織(ハード15名、UI/UXデザイナー数百人)の事例でした。結束しているにも関わらず、Appleは組織上ハードとUI/UXデザイナーを混ぜずに別で配置しているそうです。
ここで残念なのが、事例としてパッと日本の事例が出てこないこと。向こう5年間でパッと出てくる事例を私たちが作ることが求められているのだと思います。

5. デザインの投資効果

このページは、組織に所属するデザイナーが経営者を説得するために使えるエビデンスとして作られたそうです。デザインされたものとそう出ないものがどれだけ競争できるか、定量化しにくいものをいかに定量化できるかという今後の鍵になる部分です。経営者をいかに納得させられるかは数値を意識できるかというところにかかっています。企業規模などの効果を踏まえ、事例を集めていきたいところだそうです。

6.「デザイン経営」の定義

何ができていたら「デザイン経営」と呼べるかという必要条件が書かれています。
①企業の経営チームにデザイン責任者がいること
②事業戦略構築の最上流からデザインが関与していること

デザイン経営をやるプロセスがかなり簡易化されています。経営者の皆さんは、よく「〇〇力が足りない」などを使う傾向にあるそうで使ってもらいやすく「デザイン力」としているとのことでした。

7.「デザイン経営の実践」

「①ブランド力の向上」と「②イノベーション向上」の比率を企業のキャラクターとするのであれば、それを前提として具体的に何をやればいいのかが書いてあるのがこのページです。ここに書いてあることは、研究会の皆さんが上から目線で「こうあるべき!」と書いたのではなく、ベストプラクティス企業をリサーチした際に耳にした生の言葉から抜き取ったものをまとめたものだそうです。
そのため、これらはすでにやっている企業から出てきた内容であり、これが全てではありません。

8.政策提言

このページは「施策としてこういうことができるんじゃないの?」と書いてあるものです。基本的にはこれからやっていきたいことが中心に書かれており、そのあとのページには詳細のアイディアが書かれています。
特に「2.知財 意匠法の改定」と「4. 財務 デザインに対する補助制度の充実、税制の導入」が与える影響が大きいように感じた人が多かったようでした。特に伸び盛りのスタートアップのような企業にニーズがあると思うのでぜひ今後も注目していきたいところですね。

以上が一部の内容でした。ここまでは、結構皆さんも常日頃から感じている部分が多く、共感できるところだと思います。大事なのは、今が出発点であることを自覚し、土俵が用意された今、乗れる人がそれだけいるかということ。「個人の力が社会を変えると信じ、デザインに関わる人間がもっといいプラクティスをやっていきましょう。」と研究会の皆さんから熱いメッセージがありました。

ここからは第二部。休憩を挟み、一部のインプットを元にオーディエンスがフィードバックをKPT(Keep、Problem、Try)として出し、研究会の皆さんが自らそれをカテゴリわけしてくださいました。

Keep

・経営へのアプローチ
・税、支援、国

Problem

・教育が必要
・デザインへの不理解へのアプローチ
・デザインの投資効果

Try

・定義がまだよくわからない、誰にでもわかるように通訳して欲しい
・経営層へのアプローチ
・PRを頑張りたい、巻き込み
・もう少しグローバル視点を持ちたい
・連携(産学連携、他部署)
・教育(初等~企業、留学など)

これらのフィードバックを受けて、研究会の皆さんもオーディエンスもムーブメントで終わらせるわけでなく、活動を続けていくことが重要だと改めて心が一つになっていたように感じます。これらを実際に展開していく際に、私たちが具体的に何ができるか、具体的にどうやったら継続できるかを考えていく必要があるんですよね。

5年間で何ができるか

また「デザイン経営」宣言には期間があります。これからの5年間集中し、エネルギーを集めることでできることや成果は大きく変わってくるのです。
ロフトワークの林さんから研究会の皆さんへ「5年後どのようなゴールのイメージを持っているか?」という問いがありました。皆さんが今後どのようなゴールを描きそれに向けてどうしていきたいかお話されました。

田川さん:
大企業:ボードメンバーにデザイン責任者を3割~4割にする。
スタートアップ:「スターアップするときにデザイナーを入れないのはまずい」が一般化している。
ビジネスパーソンにデザインを知ってもらう、エンジニアにデザインを知ってもらう、教育からのアプローチを行っていきたい。

梅澤さん:
オープンイノベーションが実態化すること。
スタートアップ×デザイン、NEXT  TOKYOにも通じる街づくりに生かしていきたい。

田中さん:
広い意味でのデザインマインドが浸透している企業が増えてほしい。
スタートアップ、大企業、世代的なつながりを作っていきたい。

小林さん:
日本企業で成功事例をはっきり言えるようになること。
役員にデザイン関係の人がいることを当たり前になること。
1年間で投資効果の数値化をしたい。

林さん:
まだデザインを知らない人に知らしめていくことが重要。
経営という視点にデザインがいかに重要なのかを、元のバックグラウンドである経営学としてやっていき、経営学とデザインを融合していきたい。

そして今回のカンファレンス共催し、グッドデザイン賞により長きにわたりデザインの価値向上を目指してきた日本デザイン振興会理事長の大井さんは今後の展開について語りました。「これまでグッドデザイン賞は審査員のみなさんの基準でデザインの力を証明してきました。現在デザインが重要だとわかっていない企業はtoo lateだと言えます。若手の方々はみんなスタートアップに動き始めている現状が物語っています。これから日本デザイン振興会は、人材育成を一つの事業にしながらやっていきたい。15年ぶりのこの動きをいいきっかけにしたい。」

これからの展開

今後の展開としては、まず第二回目のカンファレンスが7/13に開催されます。今回の内容と同じ内容を想定していますが、研究会の有志メンバーは変わるそうですよ。(すでに締め切ってしまっているそうです)
また7月末には「デザイン経営」宣言とNewsPicksさんによるコラボ企画もあるので、お楽しみにとのことです。

1年以内には「デザイン経営」に関しての本をまとめる予定とのことなので、自分にできることがありそう!と心揺さぶられた方はぜひ手を挙げて、ソーシャルなどで発信してくだされば次に繋がるはずです。研究会の皆さんは一緒に継続していける方を探していらっしゃいました。

私もまずできることとして、本当に小さなことですが、こういった発信を通してお手伝いしていけたらいいなぁと考えています。 個人としてもGoodpatchとしてもなんらかの形で向こう5年コミットしたいと思います。

いかかでしたでしょうか。
業界のトップランナーのみなさんと想いを共有できる素晴らしい機会だったので、会場は100名で満員でしたが、熱量が冷めないうちに少しでもお伝えできたら嬉しいです。

学生時代の数年間、日本デザイン振興会でアルバイトさせていただいていたことが、いまの仕事のベースになっているし、時代が動いていることを目の前に感じて胸が熱くなった夜でした。

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