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第6話:小さくて大きい心の臓。ハットトリックを取り損ねた父「アフリカから帰ってきたニート夫と娘の成長期

お腹の赤ちゃんの心音と成長を確認するため、2021年10月4日に2度目の産婦人科へ。

アラビア語での受付対応も冷や汗をかくことなく終えることができた。我が赤ちゃんよ、君もすくすく育っているが、父も成長しているよ。
一緒に大きくなろう。

妊娠が発覚した!としてもこの時点ではほとんど実感がない。お腹も大きくなければお腹にどんなに耳を押し当てても心音が聞こえないからだ。
やったー!うちにも赤ちゃんが来てくれたんだーと手放しで喜ぶ旦那さんは多かれど、奥さんと一緒に不安を共有できる人は少ないに違いない。
かくいう僕も「その1人」なのだけれど。

病院に通う妻(お母さん)は僕たちが思っている以上に大きな不安を抱えているらしい。
ちゃんと赤ちゃん育っているかな、自分の体重は増えすぎてないかな、次は何を用意しないといけないのかな、と不安が山積みだそうだ。

「だそうだ」というのは、僕も妻が言っているのを聞いて初めて感じたからだ。

そんな不安たっぷりの中、しかもアフリカのど真ん中で、病院に通うストレスは計り知れない。しかし、医師に「元気に育ってますよー」と言われる安堵感も同じく計り知れない。

2回目にエコーを通して会った僕らの赤ちゃんは
確かに小さな心臓でバクバクバクと母の体を叩いていた。想像するよりも遥かに早いスピードで鼓動し「私生きてるよ」と訴えかけていた。

医師も嬉しそうに「うん、うん、元気に育ってますよ〜」なんて言うもんだから、不安からようやく解放された妻を差し置いて、僕はこんなことを聞いてしまった。

「元気でよかった!お腹の中でサッカーでもして遊んでます?」

一瞬の沈黙が場を支配する。

あれ、このお医者さん聞こえてないのかなと思いもう一度言ってみる。

「あの〜サッカーしてます?」

やはり反応がない。もしかしてサッカーを知らないのかなと思い最後にもう一度ダメ押し。


「赤ちゃんサッカーして遊んでますか?」

3回言ってみてようやく気づいた。
ど滑りした。僕の渾身のボケは死ぬほど空振りした。ハットトリックで決めたつもりの3回のシュートは全てゴールから大きく外れたようだった。

奥さんの顔をチラッと見ても、「こっち見んな」という顔をしている。

ふーん、照れんなよ。かわいいじゃん。


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第6話は以上となります。今日も読んでくださりありがとうございます!
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末筆ではありますが、suyaco様、素敵なイラストをサムネに使わせて頂いております。ありがとうございます!



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