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まだカタギになれていない…

本当は50歳になったら、テレビ関係の仕事から足を洗おうと思っていた。
でも、51歳の誕生日を迎えてしまった。

50歳で辞めようと思った理由の一つは、まず何よりも体力的に限界に近付いているからだ。
コロナ禍に入って、多少は拘束時間が緩和されたけれど、それでも、番組によっては、毎日早朝出社や深夜勤務というシフト、24時間以上連続勤務などといった労働基準法が守られていないと言わざるを得ない勤務体系がいまだに日常茶飯事となっている。さすがに50代になって、このシフトをこなすのは体力的に無理があると思うしね。

そして、もう一つの理由は収入面や精神面にも関することだが、ニュース番組やワイドショーでは、局員か局の関連会社(子会社など)、もしくは局から直で発注を受けているプロダクションの正社員でないと、プロデューサーとか、チーフディレクター、ニュースデスクといった管理職ポジションに就けない現場が増えてしまったからだ。

以前、ローカル局で担当していた番組では、フリーランス(一応、プロダクションを通してギャラは受け取っていたが)の立場でも、デスクやチーフをやることができた。
でも、ここ最近は、特にキー局やキー局系のBSチャンネルでは、局員かその関連会社の社員しか、そうしたポジションに就けないことの方が多い。番組によっては、OAディレクター(局や番組によってはPD、ピッチャーとも呼ぶ)ですら、局員か関連会社社員しかできないところもある。

そして、うちらの世代というのは、小泉政権下で派遣法が改正された頃に、ちょうど、ディレクターとして対外的に堂々と名乗ることができるアラサーになった(=キャリア的にも年齢的にも昇給を主張できる)ために、プロダクション側はここぞとばかりにうちら世代のディレクターを放出するようになってしまった。自分もその頃、プロダクションに難癖をつけられ、事実上、追い出される形で、その会社を辞め、フリーランスの道を歩むことになった。

だから、うちらの世代って、プロダクションの正社員って少ないんだよね。
というか、ADもこの頃から派遣が増えてしまった。つまり、管理職ポジションに就ける者は本当に限られてしまっているんだよね。
しかも、局がトラブルが起きた時の責任をプロダクションに押し付けたいから、ディレクターもフリーは認めないという番組もかなりある。
40代、50代のフリーのディレクターが派遣扱いされたらとてもではないが、収入的にやっていけないよ。
番組契約の都合上、2年ちょっとの間、派遣契約にさせられた時期があったけれど、この間、数百万円の貯金を切り崩すはめになったからね。

つまり、フリーであろうと、派遣扱いされようと、いい歳こいたベテランディレクターであっても一兵卒のディレクターとして、昇格してまもない20代のディレクターと同じ扱いになるということだ。キャリアに合わせて、一応、ギャラを考慮してくれる現場もあるけれど、それだって限界があるからね。

やっぱり、(休業期間はあったけれど)、約30年にわたって、この仕事をやってきたということは、それなりに自負するものがあるわけだから、そりゃ、こんな待遇ではやってられないよねって思うのは当然だと思う。

だから、50歳という節目でカタギになろうと思ったんだよね。

まぁ、きっかり50歳というわけではなく大雑把な感じで50歳になる前後というイメージだったけれど。

タイミングとしては、

◎本来は2020年に開催予定だった東京五輪閉幕直後の2020年9月

◎2020年の年末

◎2020年度末(=2021年3月)

◎50歳の誕生日を迎えた2021年夏の直後の2021年9月

◎2021年の年末

◎2021年度末(=2022年3月)


といった選択肢があったと思う。
でも、どれも過ぎてしまった。

そうしたタイミングを逃し、いまだに、テレビの仕事を続けている理由は一言で言えば、世の中が変わったからだ。

2020年春に同一労働同一賃金となるはずが、コロナ禍に入ったことにより、それは有耶無耶にされてしまった。

なので、派遣扱いだった当時の現場で50歳になるまで働くのは収入的にも無理だと思い、昔いた現場にフリーランスとして舞い戻ることに決めた。

そこへ来て、コロナの影響で東京五輪の開催が2021年に延期されてしまった。

そして、コロナ禍で人手不足になっても、日本はどの職種でも、どの職場でも、賃金を上げたがらないため、今いる職場を迂闊に離れるのは危険なのではないかと感じるようになった。

実際、コロナ禍になって、ほとんど、面接・面談の誘いは来なくなったが(年齢的な要因もあるとは思うが)、たまに来た誘いに乗って、面接・面談に臨んでみると、今より収入減が確実な話しか出てこない。ましてや、カタギの職種だと、ど素人扱いされて、低賃金にされる可能性は高い。
転職サイトの求人を見ても、納得のいく条件の職場は少ないしね。米国のように、人手不足だから、好待遇で迎え入れるなんてことはまずないんだよね。

そんなわけで、足を洗うタイミングを逃したまま、約4ヵ月が経過してしまった。

まぁ、コロナ禍がいつ終わるのか、それとも、半永久的に続くのかは分からないが、少なくとも、今の中途半端な自己責任路線のコロナ対策が続いている限りは、転職は同業であっても難しいような気がするな…。


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