記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

夏の三木孝浩まつり③アキラとあきら

夏休み期間に公開された三木孝浩監督作品3本をやっと全部見ることができた。もう9月も後半になってしまったが…。
「今夜、世界からこの恋が消えても」と「TANG タング」は公開初週に見ることができだが(「今夜〜」なんて初日に見ている)、本作は4週目に入るまで見に行けなかった。
なので、上映回数もだいぶ減らされてしまっているため、見に行く劇場を見つけるのになかなか苦労してしまった。
この間、ライブイベントへの参戦が多かったり、仕事の都合で映画館に行く時間がなかったりというのが、なかなか見に行けなかった理由で、本作に限らず、いまだに見られていない作品や見るのを断念した作品が山程あるんだよね…。

夏の三大三木映画のうち、最初に公開された「今夜〜」は三木孝浩が得意とするキラキラ映画なので、批評家やシネフィルからの評価は惨憺たるものとなってはいるものの、興収は現時点で13億円を超えているので興行的には成功作と言っていいのだとは思う。

続いて登場した「TANG」はVFXを使った大作映画ということを考えると、現時点での興収7億円台というのは興行的には失敗と言っていいと思う。当然、批評家やシネフィルからの好意的な声もほとんど聞くことはできない。
山崎貴あたりが撮るようなタイプの映画だと思ったので、三木孝浩には向いていなかったのではないかと思う。もっとも、山崎貴の持つ神通力のようなものも落ちてきているようで、今夏公開の「ゴーストブック おばけずかん」は4億円台の興収にとどまっている。というか、アニメーション作品も含めて山崎作品が興収10億円を突破できなかったのは初めてだ。アルデンテ以外全く印象に残らない「リターナー」ですら12億円台のヒットとなっていたんだからね…。

そして、本作「アキラとあきら」は製作委員会に入っているのはWOWOWだけれど、TBS日曜劇場みたいなテイストの作品だ。
まぁ、本作の原作をはじめとする池井戸潤の小説のドラマ化作品はTBSのみならずWOWOWでも結構放送されているが、世間一般的にはTBS作品を見ている人が多いので(WOWOWは地上波放送ではないため、視聴者が限定される)、世間一般的には池井戸=日曜劇場と思われるのも仕方のないことだとは思う。
しかし、現時点での興収は5億円台なので、やはり、これも興行的には成功していないと言わざるを得ないと思う。
池井戸原作映画では2018年の「空飛ぶタイヤ」が興収17億円台、TBSが製作委員会に入った完全な日曜劇場テイストの「七つの会議」が21億円台とヒットしていることを考えると、今回は大コケと言っていいのではないかと思う。

ちなみに、今夏の三大三木映画は全てジャニーズが出演している(本作は主演ではないが)。本来ならジャニーズ出演映画というのは信者と化したジャニオタが無条件で絶賛コメントを連発するので、表面的には失敗作に思われないのだが、「TANG」や本作が興行的にも批評的にも失敗しているというのは、ジャニオタでもマンセーできないほどの内容なんだろうなという気はした。

そんなわけで、不安を抱えながら本作を見ることにした。

開幕からしばらくはクソ映画にしか思えなかった。雨のシーンがいかにも金や時間がないから晴れの日に放水で無理矢理撮影したという感じだったからだ。また、アキラとあきら(どちらがカタカナのアキラで、どちらがひらがなのあきらなのかはよく分からないが…)が入行した2000年にはこの2人を含む300人が舞台となる銀行に入ったらしいが、パッと見たところ女性らしき新人がいなかったの非常に気になった(その後、上白石萌歌演じる後輩が登場するが)。

でも、違和感があったのは最初の方だけで、その後は真っ当な経済もの・企業ものとして楽しむことができた。ついこの間、最終回を迎えたテレビドラマ「ユニコーンに乗って」なんて、ユニコーン企業にちなんだタイトルがつけられていながら、経済要素が薄い単なる現代版トレンディドラマだったのに比べれば、本作はきちんと、経済や企業を描いていると思う。

また、血族関係者間の憎悪関係の描写もリアルだったと思う。

優秀なW主人公の1人に嫉妬する叔父2人の描写はつい、自分の親戚を思い出してしまった。
今、何をしているのか、生きているのかどうかも知らないが、母親のいとこだからいとこおじになるのかな?こいつは、問題ばかり起こしてロクに学校にも行かずヤクザになったんだけれど、こいつが祖母の葬式の時に、自分に向かって、“勉強できても、良いところに就職できても意味ない”とかワケの分からないことを言って説教してきたんだよね。“何言ってんだこのバカ?”と思って無視したけれどね。本作の叔父2人は本当、自分のいとこおじそっくりな考え方だったので、思わず、彼のことを思い出して腹が立ってきてしまったくらいだ。

また、出番は少なかったが、髙橋海人(King & Prince)の演技も良かったと思う。無知で無能なボンボンのくせに自分は何でもできると思っている若社長の感じがよく出ていたと思う。
まぁ、上白石萌歌のメガネっ娘設定はよく分からないし、彼女の初登場シーンだったと思うが、中が気になって仕方ないような短さのスカートをはいて、ソファー席に座っているという謎のサービスショットだったのはよく分からない演出だと思ったが。

でも、全体としては、本当に自分は三木孝浩作品を見ているのかと思いたくなるほど、良質な出来の作品だった。

三木孝浩最高傑作と呼んでもいいほどだ。三木孝浩と言えば、キラキラ映画のイメージが強いが、もしかしたら、彼は青春・学園ものよりも、大人向けのドラマ作品の方が向いているのではないかと思った。
まぁ、「フォルトゥナの瞳」、「夏への扉 -キミのいる未来へ-」、「TANG」あたりを見ていると、SFファンタジー系は完全に向いていないと思うが。

それから、ベタベタな展開とはいえ、育ちの違う2人が共闘し、最後には少年時代にも接触していたことを認識するというラストは感動的だった。
三木孝浩映画は何故か1本を除いて全て見ているが、個人的には「ソラニン」(長編映画監督デビュー作)を抜いて、三木作品のベストになったと断言していいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?