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【読書メモ】ジャン・ピアジェの入門書としても読める!?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)

大学時代に読んだことのある心理学の教科書は、幅広い領域を扱ってくれながらも私の興味関心のある領域の記述は薄い、というものばかりでした。心理学的な概念を研究で用いているので現在でも検索することが多いのですが、ようやく私の関心にフィットした心理学のテキスト的存在を見つけました。それが本書です。今回はジャン・ピアジェに関する記述で興味深かった点をまとめます。

シェマ構造

ピアジェはこどもを対象とした発達と学習を研究していた人物です。学部時代の授業でも登場したので超有名人と言えます。

ピアジェの提唱した有名な用語の一つにシェマ(schema)というものがあります。これは「子どもが外界を理解するための枠組みとなる心的構造」(Kindle p.561)です。

同化と調節

ピアジェは人が環境と相互作用しながら学習するプロセスを、同化(assimilation)と調節(accommodation)の二つの観点から以下のように説明しています。

 ピアジェは、子どもは主体的な環境への働きかけを通して同化と調節をくりかえし、シェマの環境への適応状態(=「均衡化」)を弁証法的にはかっていくと考えたのである。

Kindle p.579

同化とは既に獲得している認識の枠組みで対処する機能であり、他方の調節とは既存のシェマで対応できない事象に対して、自身のシェマを修正・更新して対応することを指します。このような関係性から、調節だけが学習機能と捉えることも可能ではあるものの、同化と合わせて一体的に学習機能として捉えることが良いとして、著者は以下のように説明されています。

同化と調節のバランスが調節に傾く状況こそが、ピアジェにとって学習状況だと見なされる。ここでは、調節は同化を前文脈としてはじめて学習機能となり得ると理解したい。言い換えれば、同化・調節という連語こそがシェマ形成論の学習機能を説明するのである。

Kindle p.604

新しい認識枠組みを獲得することだけが学習だとするとなかなかつらいものがありますが、同化は調節を促すものとして学習機能の一つと見なされる世界観は、どこかほっとするような気がします。


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