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快適性と省エネを決める最後の一手はエアコンだ。

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


そんなこんなで、タイトル通りの内容を書く。

工務店は空調設備にはごにょごにょする。


工務店さんの「新築住宅を計測しました」発表を聞く機会は多い。
が、江川卓の右肩のように違和感を感じる事が多い。
違和感の正体は何か。
それは『空調設備には舌足らず問題』だ。

工務店さんの発表はだいたい以下の流れが定番だ。

①こんな敷地でこんなご要望なのでこんなプランにしました。
②UA値は〇〇、ηAC=〇〇、ηAH=〇〇です。
③リビングの大窓から冬場の日射取得を考えました。
 (↑パッシブデザイン文脈)
④夏場はアウターシェードで日射遮蔽しました。
⑤エアコンはここに配置しました。
⑥C値はこんだけでした。
⑦で、温湿度はこうなって、消費電力はこうなりました。

エアコンうっす!!
で、換気は?
空調について語らなさすぎ。
語らずともわかれと?
高倉健イズム。

冷暖房・換気は設備


私は住宅の温熱環境を決定する要素として
以下の4つを定義している。

断熱 気密 冷暖房 換気

工務店さんは前者<断熱・気密>で温熱環境をコントロールしようとする。
しかし、実際は後者の<冷暖房・換気>は前者と等価だ。
いや、むしろ温度ムラ、音、メンテ・故障、電気代等のクレームの源泉は後者だ。なので、<冷暖房・換気>についてのしっかりとした知識が求められる。
まあ、工務店さんが空調設備について口幅ったいのはむべなるかな、ではある。圧倒的にジャンルが違う。
また空調設備のプロが木造戸建てで、有意義な仕事をしている事例も少ない。
よって、残念ながら、工務店さんの温熱環境についての設計は<断熱・気密>に偏る。そして、実測と分析も<断熱・気密>視点で語られる。

冷暖房負荷 ÷ COP

よって、せっかく建物性能が素晴らしい(と、同時にコストをかけている)のに、空調計画がおざなりなので温度ムラがあったり、運転効率が悪いエアコンの使い方になっている例を散見する。
勿体ない。勿体ない。
もったいないお化けが出るのだ。

例えば運転効率の問題について取りあげる。
エアコンの運転効率はCOP(APF)という値で語られる。
これはエアコンが省エネ機器たる所以の値だ。

ダイキンカタログより

上記画像はカタログの抜粋だが、「通年エネルギー消費効率5.0」とある。
これがCOP(この場合はAPF)で、これはつまり、1の電気エネルギーで5倍の熱エネルギーを得られます、という意味だ。
これは奇跡的だ。なぜなら、同じく熱エネルギーを得るための機器である電気ストーブやガスファンヒーターはCOP1.0なのだ。つまり、1の電気エネルギー(ガスエネルギー)で1の熱エネルギーを得られます、ということであり、そりゃそうだろうと思える。
「1がその5倍になるよ。」と囁かれたら、そりゃ詐欺だな、と思うのが庶民の感覚。
でも詐欺じゃないのだ。これはヒートポンプという文明の利器によるものですが、それについてはまた別のお話。

ただし、いついかなる場合でもCOP(APF)5.0かと言うと、そんなことはない。車の燃費のように運転状況で大きく効率は下がる。
その判断を間違えるとCOP1台という残念な状況になりかねないが、ちゃんとその性能を発揮できると、なるほど省エネなのだ。

工務店さんはこの運転効率=COPを高いゾーンで行うための設備計画が怪しい。
 

まとめた感じで、且つ確信部分の話をする。
冷暖房エネルギー(二次エネルギー=消費電力)を簡略化すると上記になる。
例えば暖房期、住宅を暖めるために必要なエネルギーを暖房負荷という。
これは<断熱・気密>でコントロールできる。しかし、実際に発生する電気エネルギーの計算はその暖房負荷をどのCOPで割り返してあげるかで決まる。で、こちらは<冷暖房・換気>サイドの話なのだ。

で、工務店は建築サイドなので、<断熱・気密>で努力して省エネ(電気エネルギー削減)を図る。
そして、建築コストをもりもりにしてUA値を0.46w/m2kから0.34w/m2kに上げたとする。これはざっくり26%電気エネルギー削減になる。
対して、エアコンのCOPを上げるような設置計画によって、COPが2.0から4.0になったとする。そうすると電気エネルギーは50%削減できる。

工務店実務者ならわかると思うがUA値0.46を0.34にする作業とコストはなかなか大変だ。対して、COPを2.0から4.0にする計画はちゃんと考えたらできる。コストアップは断熱強化と比べるとそこまでない。
だとしたら、断熱性能を改善することは大事だが、同時に空調設備計画が理にかなっているのかどうかをしっかり見直す作業もやはり大事なのだ。

ことほど左様で、空調計画は大事なのであるが、業界全体でみると道半ばだなと思う。
空調のプロという立場で住宅つくりに携わっている者として、この点を改善したいと思っている工務店・ビルダー・設計者のサポートを是非やっていきたい、と自己PRでこの回を閉じようと思います。南無三。

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