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パーコレーターのコーヒーは本当にまずいのか|パーコレーター、その魅力と使い方

 朝日が差し込むキッチンで、パーコレーターに湯を沸かす。手挽きのミルにセットした、お気に入りのコーヒー豆を粗く挽く。そうして、お湯の沸いたパーコレーターにコーヒー粉を入れたバスケットを投入する。すぐにポコポコッ、ボゴッと、心地よいリズムを奏でながら、コーヒーの循環が始まる。

 ここからが勝負だ。

 上部に沸き上がるコーヒーの色を透明なつまみから見極め、ベストなタイミングで火から下ろすのだ。こうして淹れた一杯が、僕の朝には欠かせない。

パーコレーターの仕組み

▲僕の愛用は「GSI|ステンレス パーコレーター 6CUP」

 パーコレーターはポット形のコーヒー抽出器具である。フランスで考案され、西部開拓時代のアメリカで普及した。現在ではその単純で頑丈な構造から主にアウトドア用途に用いられる。

 ポットの中には、お湯が通るパイプと、フィルターの役割を果たす細かい穴の開いたバスケットが備わる。お湯が沸くとバスケット下の空間の圧力が高まり、お湯がパイプを通って上部に噴き上がる。そのお湯が、バスケット内のコーヒーを通過し、こうしてポットの中をお湯とコーヒーが循環することで抽出するのである。

▲ポットと、コーヒー粉をセットするバスケット
▲お湯が中央のパイプを循環する
▲透明なつまみからコーヒーの抽出具合を判断する  

パーコレーターのコーヒーはまずい!?

「パーコレーターで入れたコーヒーはまずい」という話をよく聞く。

 薄い、なのに苦い——と。

 それはパーコレーターの仕組みそのものが、コーヒーのタブーを犯しているからだろう。すなわち、

  • 一度入れたコーヒーは、再沸騰させてはいけない

 コーヒーを温め直すべく、再び沸騰させると、香りが飛び、酸化した味わいになる。しかしパーコレーターは抽出の間ずっと沸騰しっぱなしだ。しかもお湯ではなく、循環したコーヒーでコーヒーを落とすことになる。これでは繊細なコーヒーは入れられない。

 バスケットがフィルターの役割を果たすといっても無数の小さな穴からわずかにコーヒー粉が流れ出し、コーヒーと混ざる。できたコーヒーはどこか粉っぽい——。

▲どんなに豆を粗く挽いても、バスケットからコーヒー粉がもれてしまう

 したがって、パーコレーターでは、一般に好まれる「芳醇な香りと豊かなコク、そして苦味と酸味のほどよいバランスを備えたコーヒー」とは、また別物のコーヒーができあがるわけだ。ドリップコーヒーを好む人にとっては、パーコレーターで入れたコーヒーはまずい、ということになるのだろう。

アメリカンコーヒー好きには◎

 パーコレーターではドリップ式のようなコーヒーは淹れられない。その代わり、豆の種類や焙煎具合を選ぶことで、口当たりの軽い、ごくごくと飲めるコーヒーが淹れられるのだ。これこそ——パーコレーターで入れたコーヒーこそ——アメリカンコーヒーだ、という説もある。

 濃く苦いコーヒーが苦手な人に、パーコレーターをぜひおすすめしたい。かくいう僕もあまり濃すぎるコーヒーが苦手で、ドリップコーヒーでも豆を少なめ、お湯多めで入れる口である。

パーコレーターの使い方

  1. パーコレーターにお湯を沸かす

  2. 沸騰したら、コーヒー粉を入れたバスケットを投入する。

  3. 沸き上がるコーヒーの色合いを判断し、火から下ろす。(4分以内が目安)

 まずパーコレーターにお湯を沸かす。このとき、まだバスケットはセットしないこと。コーヒー粉は沸いてから投入したほうが美味しく仕上がる(ただし屋外での使用時は面倒なので初めからセットしてしまう)。

 お湯の量はパーコレーターの目印を目安に。お湯が少なすぎるとポット内の圧力が十分に上がらず、うまく抽出できない。

 お湯が沸いたら消えそうなぐらいの弱火にし、バスケットを投入して蓋をしよう。すぐにポコポコと音を立てながらお湯が蓋のつまみに向かって噴き上がってくる。そして次第に、お湯がコーヒー色へと変化してゆく。

▲お湯が吹き上がってきた

 つまみからコーヒーの色を見極め、頃合いを見て火から下ろす。抽出時間は長くても4分が目安だ。それ以上煮出すと、本当にただ苦いだけの飲み物になってしまう。

▲吹き上がるお湯が濃くなってきた

 火から下ろし、コーヒーの循環が落ち着いてからそっとカップに注ぐ。あまり勢いよく注ぐとバスケットから流れ出たコーヒー粉まで注がれてしまう。

 ひと口飲んでみよう。

 味は、どうだろうか。

 ドリップコーヒーとはまた違う、果実感のあるライトなコーヒーに仕上がっていないだろうか。ほんのりと漂うフルーティーな甘味が僕は大好きで、朝一番に6カップ入れ、午前中の間にごくごくと飲みほしてしまうほどなのである。

パーコレーターにおすすめのコーヒー豆

 パーコレーターの魅力を少しでも感じ取っていただけただろうか。もし、「パーコレーターを試してみたい」と考えてくれたなら、ぜひコーヒー豆にもこだわってみよう。

 おすすめは浅煎り豆である。

 浅煎り豆を粗く挽き、パーコレーターで多めのお湯で入れることで、果実味あふれるコーヒーを味わえるのだ。

▲僕はもっぱら、コスパのいい業務スーパーの豆を粗く挽いて使っている

 ただ、日本では一般的に中煎り以上が好まれるから、浅煎り豆は専門店でなければ手に入りにくい。そんなときは中煎り豆だって一向にかまわない。パーコレーターに合わせて粗く挽くことで、ペーパードリップの中細挽きとはこんなに味が違うのかと、挽き具合による味の変化を実感できることだろう。

 パーコレーターはアウトドア用のコーヒー器具だと思われがちだが、メンテナンスが簡単で、多くのコーヒーを一度に淹れられるとあって、自宅でも愛用している。パンチの効いた、濃い目のコーヒーはドリップで。軽いコーヒーが飲みたいときはパーコレーターで。使い分けてはいるが、最近はパーコレーターの出番が多い。なにせ火にかけるだけでいいのだから、手間がかからない。そしてなにより、愛らしい音を立てながらコーヒーのできあがりを待つ時間が、朝の癒しのひとときだ。

 ——ポコッ、ポコポコッ。

 おっといけない、コーヒーが沸いてきたようだ。ここからが勝負である。それでは、良いコーヒーライフを。

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