見出し画像

私の、ベルセバとの出会い

2001年頃、私は、
好きなアーティストを増やしたくて、いろんな音楽を聴くようにしていた。あるとき、行きつけの楽器屋さんで、とあるCDを薦められた。

Belle and Sebastian(以下、ベルセバ)のアルバム「わたしのなかの悪魔」である。

薦めてくれた人は、私の好みをよく存じてくださっていて、
好きそうなモノというより、『新たな境地を開拓』という視点でこれを薦めてくれた。

初めて聴いたとき、
とにかく新鮮で、それまで聴いたことのなかった音像で、
そのときの私の琴線に、見事に触れた。



1曲目の「I Fought in a War」という曲の圧倒的な存在感、

冒頭の約1分間が、歌のみなのだが(この時点でインパクト抜群)、
Vocalのスチュアート・マードックの声に、私の心は釘付け、興味津々。
ささやくというか、置いてくる系の歌い方。
そして、声質が何とも言えず、何やら絵画(洋画)を見ているような気持ちにさせられる声質なのだ。
繊細な声で、だけど弱々しくはなく、堂々とした風格というか、奥の方にしっかりとした意志を感じる。

そして、
約1分の歌を経て、ベース、ドラム、ギターと、楽器が入ってくるのだが、楽器ひとつひとつが遠くで鳴っている。そしてさらに、バイオリン、トランペットが入ってくる。

ひとつひとつの楽器が、最小限の存在感しか放っていない。
それは、それぞれの楽器が、アンサンブルのためにあるからだと、私は思っている。
そのバランスが、何とも美しい…。

また、この「I fought  in a War」という曲は、ベルセバの特徴がシンプルによく表れた曲なのだが、
歌のみで始まり、楽器が静かに加わり、サビでバイオリンが壮大さを加え、そしてさらに、セカンドメロディーとなるトランペットと単音ギターが入り…、という流れ。
『静かに始まり、徐々に壮大になっていく』というスタイル、
私の大好きなパターン。
話はブッ飛ぶが、私はドリフの笑いが大好きで、ドリフのコントは、日常生活の風景から始まり、少しおかしなことが起こり、それがエスカレートし、いつの間にか最後はドタバタになっている、というスタイル。同じなのだ。ベルセバの美的センスと、ドリフの美的センスは、私にとっては同じで、私は両方とも大好きなのだ!

俯瞰して眺める、そこにある美しさ、静けさ。

アルバム冒頭の1曲で、私は見事にメロメロになった。



そして、2曲目がまた見事であった。
「The Model」という曲。
Aメロ・Bメロ・サビという価値観がなく、
歌のメロディーが、縦横無尽に動きまわる。
緩やかに、柔らかく、どこが切れ目かわからない内に、1番が終わり2番へ。
何とも楽しく、心地よい。



3曲目以降も、バラエティー豊かに展開していく。

ボーカルを、
スチュアート・マードックだけでなく、
スティービー・ジャクソンやサラ・マーティンも担っているという点も、ベルセバの面白いところ。
この3人の歌声は、3人ともベルセバの世界観にハマっていて、聴く者を飽きさせない。

そして私は、
ベルセバの、バイオリンとトランペットの在り方が凄くツボなのだが、
一般的に、バンドの音にバイオリンやトランペットが乗っかった場合、文字通り「乗っかっている」という音像になりがち。
しかしベルセバの音は違う。完全に全体の一部になっている。その全体像の在り方、音のバランスが、とにかく綺麗で、他では味わえない唯一無二の音像なのだ。
ちなみに、ベルセバのおかげで私は、『バイオリンの音、メッチャかっこいい…』と思うようになった。


バイオリン・トランペットでいうと、
9曲目の「Women's Realm」(このアルバムの中で私が1番好きな曲)、
ピアノのフレーズと手拍子に乗って、
スチュアートとサラの歌が行く。
そして、
歌のない間奏の部分で、
トランペットが土台となり、バイオリンが鳴り響く。
このバイオリンがたまらない!
エンディングはそのトランペットとバイオリンの繰り返し!このセンス!




アルバム「わたしのなかの悪魔」を聴いて、ベルセバにハマった私。
そんな私は、
当たり前のように、
『ベルセバのことを知りたい!!』と思うようになり、
そして、
知りたい欲が、半端なく溢れ始めた。


しかし、


しかしだ。


当時、
全くといってよい程に、
情報がなかった。

ライナーノーツに書かれた情報、以上。
というくらい、情報がなかった。

私はとりあえず、既に発売されている過去のアルバムを、一目散に購入した。
そして、それぞれのライナーノーツを、何度も読んだ。

情報は、以上であった。

その飢えた状態が、
私に想像力を働かせ、そして、CDを何度も聴くという行為に走らせた。

『地球の裏側に、こんなにも自分の心を鷲掴みにする人達がいる。知りたい!知りたい!知りたい!』
でも、知りようがない。


そういう状況って、今、あるだろうか?
そういう状況にあった自分は、とても貴重で豊かな時間を過ごせたんじゃないかな、と今私は思っている。

そんなだったから、
2003年10月に出たFANS ONLYというDVDは、
心の底から待ち望んだ、私にとってはキラキラ輝いたアイテムだった。


ベルセバへの思いは他にもたくさんあるが、
それはまたいずれ。



追伸
~ ミヤボの「出会いのエピソード」シリーズ ~

「出会い」はいつだって『偶然』。
『偶然』だから楽しい。
劇的なこともあれば、「最初は印象が薄くて…」なんてこともあるだろう。
何だっていいんだ。
そこには、
世界中でそこにしかない、
唯一無二の、『偶然性』を帯びたエピソードがあるはずで、
私の話を読んで、
「自分はこういうことがあったな…」と、
あなたにとっての、何かとの出会いのエピソードが、ふとあなたの中に思い出され、同時に喜びの感覚がよぎったならば、
私はこのエピソードを書いて良かったし、
あなたがこの記事に辿り着いてくれた『偶然』に、
乾杯!🍻



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?