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4月1日(月)~4月5日(金)の見通し


■先週の振り返り

●進む円安と円高への牽制

今月19日(火)、日銀による金融政策決定会合が終了し「マイナス金利政策の解除」「イールドカーブ・コントロール (YCC) の廃止」「ETF買入れなどの終了」の三点が発表されました。

YCCは主に日本の長期国債の金利上昇を抑えつける役目を果たしていましたが、すでに形骸化が進んでいた関係で当日の廃止発表では長期金利が急上昇するようなこともなく、現在まで比較的安定した動きを見せています。

またETF買入れの終了へ舵を切ったことも一見大きな変更に見えますが、こちらも2021年中ごろからほとんどETFは購入されておらず、株価への影響も非常に少ない中での買い支え終了となりました。

最もインパクトのある「マイナス金利政策の解除」ですらもおよそ+0.2%ほどの利上げに留まっており、植田総裁も「金融緩和的な (株式や債券市場に良い) 環境が当面続く」と「利上げ ≠ 金融引締め」のイメージを発信し続けています。

2024年3月の日銀会合にて決定された主な事項
政策金利は銀行間でお金を融通する無担保コールレート翌日物へ変更
金融緩和政策を次々と変更したが、中身はほとんど変更前と同じに留まった

今月の日銀会合は形骸化したYCCなどの「鎖」を自ら取りつつ、今後より柔軟な金融政策を採用できるように一度リセットを掛けようという試みと言えるでしょう。

諸外国が「物価の急速なインフレからディスインフレ (インフレ率が減少していくこと) へ」歩みを進め利下げを考える中で唯一反対の利上げを行う日銀ですが、これは日本の物価が目標の2%を持続的かつ安定的に見通せる状況に達したためであり、春闘における実に30年ぶりの賃金上昇も相まって「来たるインフレを抑えるため」「将来のデフレ (不況) 時にスムーズに利下げできるように」マイナス金利政策という超緩和的な看板を外した、とも解釈できます。

春闘の賃上げ率推移 (前年比%)
2024年は5%超えと1991年以来の数字を達成した
出典: 読売新聞オンライン

このためか今会合後も足元では円安がしつこく残存しています。
事前のリークも含めインパクトが少ないことは想像に難くありませんが、149円前半から151円後半まで円安が進み、2022年及び2023年の円安記録である152円に肉薄する状況が続いています。

これは会合にて金融緩和的な環境が当面続くと植田総裁が発言したことで「今回は形だけ利上げして、実態は以前と変わらないのではないか」と勘繰った市場により円売りの動きが続いていると考えるのが妥当ですが、収まらない円安に対し財務省の鈴木財務大臣は「あらゆる手段を排除せず適切な対応を取る」と発言しており、過度な円安を食い止めようと今週初めから市場にメッセージを送り続けています。

今後この円安がどのように推移するか?に対する明確な答えは出せませんが、幾つかの側面からヒントを得ることが出来ると思われます。

① 為替介入と日銀の緩和姿勢

そもそも円安を食い止める為替介入は日本政府 (外為特会 = 外国為替資金特別会計) が持つ外貨準備を用い、我々が普段為替取引を行う市場にてドル資金の売却と円の買入れを同時に行うことで成されるものです。

今回、2022年に世界的にインフレが進んでから付けた高値である152円がある種の「防衛ライン」のように解釈されており、2022年9月~10月に何度も介入された実績があることから2023年も152円に迫るたびに「引き続き高い緊張感をもって万全の対応をする」などのコメントにより円安がけん制されてきました。

ドル円の152円 (黒水平線) ライン
何度も意識されており、2022年・2023年・2024年と各年到達している
またこの水準では為替介入及び発言による市場へのけん制が行われやすい

一方、日銀は金融緩和的な姿勢を続けるとしています。
例えば長期金利をコントロールするYCCは廃止されたものの、長期国債の買入れ (国債購入は金利低下圧力を生み出します) はこれまでと概ね同程度行うと発表されており、これが円売り圧力を間接的に生み出してきました。

また政府は為替介入を匂わせる発言を繰り返しており、27日の夕方には財務省・金融庁・日銀の三者で情報交換会合まで開く「介入アピール」を暗に市場へと見せつけています。

ただし鈴木財務相は152円が防衛ラインであるかとの問いに対し「為替の水準が問題ではなく、動きや変化に注目している」とし、財務省として152円を死守しなければならない訳ではない●●●●ことをはっきりと示しています。

これら二つの異なる立場から「金融緩和は継続したいが、円安も抑えたい」というジレンマは当面続くと見られます。
この相反する二つの力の綱引きでドル円も決まりますが、為替介入の量にも限りがあることから当面は緩やかな円安へ傾きやすいと見られます。

② チャートのテクニカル的観点

ここで実際のチャートを見てみます。

2022年3月まで穏やかな動きをしていたドル円はロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに急速に円安へ傾き、米国のインフレがほぼピークに達したあたりで151.94円の高値を付け次第に落ち着いていきました。

しかし2023年に入ると米国では「インフレ再燃」「ハードランディング (急速な利上げによる不況が訪れること)」の文字が躍り出し、さらにタームプレミアム (より長期の国債に対し、来る不測のリスクに備えるため追加で上乗せされる金利) も2022年以来のプラス転換となったことも米国長期金利を押し上げ、結果として円安も再加速しました。

タームプレミアムのざっくりとしたイメージ
実際の長期金利はここまで単純ではないが
タームプレミアムは将来が不確実であることに対して
投資家が保険として求める追加の利回り (報酬) と考えればOK

152円という重要な節目に到達したのはこれが3回目ですが、2023年初めからのチャートの形を見れば安値が切り上がっていることが分かります。
これは典型的な上昇トライアングルの形であり、152円を超えてしまえば円安が加速しやすいことを示しています

上昇トライアングルとドル円
平行な水平線と切り上がる安値 (右肩上がり線) で構成される
2023年の初めから所々で発生する円高への動きも徐々に弱くなっている
このままであれば152円を超えると同時に円安がより一層強くなる可能性が
やや高い

また通常、天井圏では荒い値動きが見られる傾向にありますが、今回は19日の日銀会合以降 (前日比±0.2%程度の) 非常に静かな動きにとどまっていることも不気味です。
このまま小動きが続けば上にも下にも大きく動き出しやすく、特に152円までに溜まったドル売り (円買い) ポジションが152円を超えた途端にロスカットされ、決済の円売りにより更なる円安圧力を生みやすい点にも注意が必要でしょう。

③ 日米の金利差による要因

ドル円を語る際、日本及び米国の国債金利差を省くことは恐らくできないでしょう。

下の図は米国債と日本国債の金利差をグラフ化し2022年から並べたものですが、世界的なインフレが進んでから米国の金利が急上昇、一方で日本の金利は0.25%以下で推移していた関係で二国間の金利差が拡大し、これが今までの円安を招いてきました。

米国10年債金利 - 日本10年債金利の金利差
(上昇は円安、下落は円高要因)
インフレが始まって以降、米国の金利のみ上昇し結果として円安を招いた
現在、米国は利下げ間近であるため金利差は縮小しやすい

もちろんドル円の決定要因は二国間の金利差だけではないのですが、2022年から始まったドル円の動きと非常にリンクしている関係で「二国間の金利差はドル円の水準に影響を及ぼさない」と言えば嘘になってしまいます。

日米の金利差 (ローソク足、右軸) とドル円 (黒線、左軸)
2022年から明確にドル円も上昇を始めたが、どちらも軌跡が非常に似ている
ただし2024年に突入してから相関が弱くなっている
金利差と関係なく円が売られる円安に注意したい

2022年から始まった米国の金利上昇と急激な円安は非常に似通った形をしており、例えば2022年に「ドル円が山を付けた時期」と「日米の金利差が山を付けた時期」はほぼ同時であり、以後も山と谷が概ね連動するような動きをしていました。

ただし2024年に入りその相関が弱まっています。
昨年末からすでに今回のマイナス金利解除が予測され織り込まれつつありましたが、日銀の「マイナス金利政策の解除」と言っても米国のような急速な利上げを行うわけではなく、またその米国も2024年を通してわずか3回の利下げに留まるため、日米ともに金利が安定しやすい (すなわち金利差が縮まりにくい) 1年間になることは必至です。

また今回、日銀の植田総裁は利上げ後も「金融緩和的な環境が続く」と発言しており、米国のFRBパウエル議長も「2%に戻るまでデコボコ道をたどる」と表現するほどに互いに金利を大きく動かす要因が無く、既にドル円の拠り所が金利差から離れているとも解釈できるでしょう。

今後も金利差によって多少ドル円も連動すると考えられますが、2022年や2023年のダイナミックな金利変動は期待できず、その分ドル円は別の要因によりドライブされる可能性が高いと思われます。

④ 海外投資家による日本株式の買い越し

上で述べた要因以上に日本国内の株式、とりわけ半導体銘柄に対する追い風により円安圧力が残りやすいことも見逃してはなりません。

すでに以前のnote等でも取り上げていますが、今年に入り海外投資家は日本株を大きく買い越していることが分かります。
週により海外投資家が売り越すこともありますが、翌週にはそれ以上の買いが入ることにより日本株への資金流入が良く見て取れます。

日本株への買い越し・売り越し情報 (3月22日まで)
赤枠は海外投資家の買い越し・売り越し状況
ほとんどの週で海外投資家が日本株を買い越している

例えば日経平均では半導体銘柄が複数含まれていますが、世界全体における生成AIブーム及びそれに伴う半導体の需要の高まり及び国家プロジェクトとしての半導体企業への補助も含め、半導体製造装置を作る日本企業が大きく買われる状況が続いています。

これらはもちろん日経平均にプラスとなりますが、長い間円安環境にいたことによる企業業績の向上 (海外からの売上が円安でブーストされるため)、国内の物価上昇にようやく反応してきた賃金上昇、更に少子化や不動産不況・富裕層への締め付けなどの問題が残る中国からの資金逃避も含め、今後も日本株へのフローが継続すると考えられます。

ただしこの株価上昇には円安効果も寄与していることを忘れてはならないでしょう。

一般に海外投資家が日本株を購入する際、リスクヘッジとして日本株買いと円売りを同時に行うことが多いとされています。
現在の日本株は半導体企業への追い風もありますが、円安により相対的に日本株が割安・魅力的に映るため資金が流入するとも言えます。

この海外投資家による「円安 + 日本株買い」の流れは「円高 + 日本株売り」に繋がりやすいとも言え、現状のまま円高を望めば日本株の停滞を招きかねないとも解釈できると考えられます。

このような海外投資家の「割安であり他の国よりもリスクが少ないから日本株を買う」、いわゆる消去法的な投資から転換してもらうためには様々な策を練らなくてはなりませんが、一つの視点として日本の労働生産性を上昇させることが近道になり得ると思われます。

事実としてインフレを除いた日本の実質賃金は前年比で1年以上もマイナス域に落ち込んでいますが、企業での労働生産性が低いために物価上昇を超える賃金アップに転嫁できないと見られます。

日本のインフレ分を除いた実質賃金 (22年~24年1月)
今回の春闘の賃上げも飽くまで名目賃金の話であり、物価の上昇に賃金が負ければ
国内の消費も持続しにくい
出典: 時事エクイティ
日本の労働分配率
分子の人件費が上昇する、または名目GDPが下落することで
雇用者の所得が相対的に上昇する
現在は物価高を超えるほどの賃金上昇が見込めず雇用者の消費が落ち込みやすい
企業が賃上げを積極的に行うには生産性を上げることが必須

いずれにせよ日本株上昇の少なくない部分を円安効果が占める中、日銀や政府としても株安を容認しながら円高へ誘導する可能性は低いと考えられます。
逆に言えば円安への圧力は消えにくいものであり、海外投資家からの日本株買いという側面からみれば今後円安へ向かう確率が高いと見られます。

これら①~④すべてをまとめるなら、

  • 日銀は金融緩和の「看板」を外しただけであり、当面は金融緩和的な姿勢を崩さない

  • 急速な円安は適宜、為替介入によりブレーキを掛け市場のヒートアップを抑える

  • 今までのような米国債と日本国債の金利差だけでドル円の動きを説明できる時期は終了した可能性がある

  • 円安と日本株高は一心同体であり、物価より賃金の伸びが上回り消費が活発になりながら、企業が好業績を出し続けられる環境が求められる。そのために労働生産性の向上は必須であり、本当の意味で海外・国内投資家が「日本の成長に投資したい」と思える状況が到来すれば、緩やかな円高と粘り強い株高の両方を達成しやすい

となります。
長年の日本企業の体質を垣間見れば「物価を超える賃金上昇と好業績の同時達成」というドラスティックな改革は望みづらいため、現実問題として円安圧力はこれからも残りやすいと考えられます。

●トランプ氏とバイデン大統領の予備選挙

3月5日のスーパーチューズデーが終了して以降、既に大統領選はトランプ氏対バイデン大統領の一騎打ちになることがほぼ確定していますが、大統領選挙の激戦州 (swing state) における両氏の人気も非常に拮抗しています。

大統領選挙での激戦州とはアリゾナ州、ジョージア州、ネバダ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ノースカロライナ州の7州とされています。
これら各州にてトランプ氏及びバイデン大統領のどちらに票を入れるか?の人気投票を集計すると依然トランプ氏が全体的に有利なものの、昨年末の時期に比べ州によってはバイデン大統領が若干追い上げてきていることが分かります。

2024年大統領選挙にてどちらに投票するかのアンケート
赤色 = トランプ氏、青色 = バイデン大統領
昨年10月~今年3月までの半年で州によってはバイデン大統領が追い上げている
例えばペンシルバニア州は工業地帯により
労働者に寄り添うとされるバイデン氏の人気が上昇した
各激戦州のテーマ
バイデン大統領が引けを取るアリゾナ州などでは現在進行形の
問題によりトランプ氏がリードを取っている

各州様々な見方をすることができますが、例えばペンシルバニア州ではラストベルト (rust belt) 復興がテーマとなっています。
ラストベルトとは名の通りさび付いた工業地帯を指しますが、ペンシルバニア州含む一帯が旧態依然の工場や技術にしがみついた結果、同地域の経済が傾いてしまった過去を持つ地帯でもあります。

バイデン大統領はこのラストベルト、ひいては国内の工業労働者を支えるというアピールを日ごろから行ってきました。

例えば昨年9月、全米自動車労働組合 (UAW) の大規模ストライキがありましたが、実際に大統領として初めてストライキ現場へ訪問し労働組合の給与を上げるよう意見表明したことが好感され、現在はUAWによるバイデン大統領への支持が正式に表明されています。

また日本製鉄によるUSスチール買収に当たり、バイデン大統領は「米国の鉄鋼労働者により運営される力強い米国の鉄鋼企業を維持することが重要だ。私は鉄鋼労働者に対し彼らを支えると伝えたが、これは本気だ」「USスチールは国内で所有・運営される米国の鉄鋼企業であり続けることが重要だ」と声明を発表しており、米国の工業労働者を非常に意識した立場を維持しています。

更にバイデン大統領は20日(水)に教員など7.8万人もの公務員を対象にした学生ローン免除を発表するなど中間層にも向けたアピールを欠かさず行っています。
ただしペンシルバニア州はトランプ氏の支持があるか無いかでバイデン大統領を選ぶ側面が強く、CNNによればトランプ氏への支持と投票はイコールでありながら、トランプ氏への不支持がバイデン大統領への投票に繋がりやすいことを指摘しています。

一部の州ではバイデン大統領への投票が必ずしも同氏への支持を表明しない点は驚きですが、両者の人気が激戦州で拮抗しているため今後もある種の「不人気投票」の行方を見守る必要がありそうです。

なお米国のハーバードセンターが毎月出す "The Harvard CAPS / Harris Poll" では3月分の調査において、バイデン大統領とトランプ氏に関する有権者のアンケート結果が発表されています。
興味のある方はそちらもご覧ください。


●その他ニュースなど

29日、米国では2月分の個人消費支出 (PCE) が発表されましたが結果は上々でした。

前年比では2.5%、コア分野でも2.8%とPCEにおいてもFRB目標の2%までもう少しの地点まで近づいています。
また住宅やエネルギー分野を除いたサービス部門のインフレは前月比で+0.2% (1月分は+0.7%) と鈍化していることも株価などにポジティブな要因となりそうです。

米国 コアPCE (前年比) 
最新は2.8%と未だ2%ゴールまで若干の距離がある
しかしパウエル議長はさほど心配していない

この発表の数時間後、パウエル議長がサンフランシスコ連銀にて開催されたイベントに登壇し発言を行いました。

パウエル議長はこの日発表された最新のPCEの内容にも触れ「本日のPCEレポートは我々の予想とほぼ一致」「経済は強く、すぐに利下げする必要は無し」「昨年と同様さらなる良好なインフレデータが必要」とし、更にインフレが2%へ向かう確固たるデータがなければ利下げを行わないとしています。

また前回の3月FOMCでの発言を引き合いにし「時としてでこぼこの道を進むこともある」と発言し、明確なインフレ鈍化と利下げサインがデータから得られるまで金利を維持するスタンスを強調しました。

なお当日は米国市場が休みでしたが、週明けにこの発言が市場を揺さぶる心配をする必要は無いと考えられます。


■今週の見通し

今週末には米国の雇用統計 (雇用者数・失業率・平均時給など) の発表が予定されています。

現在の米国のインフレ率は低位安定している関係で以前よりも物価指数への注目度は落ちましたが、こと雇用関係の指標には引き続き高い関心が集まっています。

特に1959年から現在まで100%の確率で景気後退を当てているサームルール (景気後退の始まりを知らせる経験則) は失業率と非常に深い関連があり、平均時給の上昇も含め「FRBがいつ利下げを、年内に何度するか」の判断に大きく影響するため雇用統計は今後も要チェックとなりそうです。

4月1日~4月5日の主要各国経済指標
イースター含め各国の休日に注意
日銀短観も大企業製造業の景況感を知るうえで重要となりそう

株価に話を戻せばアノマリー上、ダウ平均は1年の中で4月が最も強い月となり、S&P 500も2位、ナスダック総合指数は4位と市場への環境は悪くないとされています。
また弱いながらも上昇トレンドが続いており米国の株式は引き続き堅調と見られますが、とにもかくにも今週末の雇用統計における変動だけは注意したいところです。


◆ナスダック100 (NDQ)

ナスダック100は先月下旬の高値である18470が一つの高値目安となりますが、もし下落するならば17680~18470の横ばい相場へ移行すると考えられます。

ナスダック100

引き続き長期では強気を維持していますが、今年1月~3月までの強い上昇を経た4月はこれから弱くなりやすい5月~9月の相場を経るまでの「移行期間」と位置付けると、自らの買いポジションなどへの対処法も分かりやすくなりそうです。

特にナスダック100はハイテク関係の株式で占められているため、生成AIブームのけん引する上昇もどこかで息継ぎをしなければより大きな上昇へつなげることは難しいでしょう。

そのためにも4月は上昇を基本としつつ、下落しても慌てずなるべく良い価格で利確を挟むなどが良いと思われます。

想定レンジ: 17680~18800


◆S&P 500 (SPX)

S&P 500は5265付近の高値が目安ですが、あまりにも現在の水準から距離が近いため上昇方向の天井を決めるのはナンセンスかもしれません。

S&P 500

代わりに下落する場合、一旦のめどが5200付近で止まる可能性が高く、5200を下回れば5100、その下は5050…と複数の支持線が何本かあることを意識すると良さそうです。

想定レンジ: 5100~5350


◆米国10年債利回り (US10Y)

米国10年金利は引き続き、穏やかな動きで限られた範囲をさまようと考えられます。

米国10年債利回り

昨年末の安値3.79%から今年のほぼ高値である4.33%の間で横ばい相場が続いていますが、利下げが未だ差し迫った状況ではないこと、各種経済指標が安定した数値を出していることを鑑みれば、もうしばらく横ばい相場が続きそうです。

もちろんこのような安定した金利は株式にもポジティブとなりやすいため、3.79%~4.33%の横ばい相場が続く限り株価も大きく下落しにくいと考えて良いと考えられます。

想定レンジ: 3.79%~4.33%


◆香港ハンセン指数 (HSI)

香港ハンセン指数は材料不足により、一度始まりかけた上昇トレンドの出鼻が挫かれています。

香港ハンセン指数

月曜日と木曜日が祝日であるために今週も小動きになりやすく、しばらくは17200を上限とした動きとなりそうです。

また週足や月足のような長期間のスパンでみれば未だ下落トレンドの最中にあり、急速に力強く株価が回復するシナリオはあまりにも楽観的であると言えるでしょう。

想定レンジ: 14600~17200


◆米ドル円 (USDJPY)

ドル円は上で詳しく触れましたが、日米の金利差に依らない円安が発生していることに注意したいです。

米ドル円

もし日米の金利差でドル円が決まるならば、これから日銀が利上げし米国も利下げのサイクルに入る中でドル円も緩やかな円高へ推移する可能性が高まります。
しかし今年に入りそのような動きが見られないこと、日本株が堅調なことからも円安の圧力が金利差要因から独立しつつあると見るのが自然であると見られます。

ただし急速な円安は為替介入により抑えられるため、152円を超えた場合は3歩進んで2歩下がるような動きが最もらしいと考えられます。

想定レンジ: 148.8~152.0


◆日経225 (NI225)

海外投資家からの日本株購入が好調ですが、例に漏れず日経にも良い影響を与えており、今後もこの流れは続きやすいと見られます。

日経225

引っ掛かる点があるとすれば、週足において値動きとオシレータのダイバージェンスが発生していることでしょう。

値動きが高値を更新しているにもかかわらずMACDやRSIなどのオシレータが高値を更新しない場合に発生する「ダイバージェンス」(矛盾) は値動きの一時停滞を示しやすいですが、すでに強力な上昇トレンドの最中にある日経平均をショートするというアイデアは上級者向けとなるため注意が必要です。

トレンドは引き続き上昇を見て41100を超えていくシナリオを持ちながら下落する際は38900付近まででもう一度買い支えられやすいと仮定すればよりトレードがしやすくなるかもしれません。

想定レンジ: 38900~41600


◆原油 (CL1!)・ゴールド (GOLD)

【原油】はOPEC+における追加減産、及びそれに伴う価格の上昇圧力も含め引き続き底堅いと考えられます。
また紅海におけるフーシ派の攻撃により各コンテナ船が南アフリカの喜望峰を迂回するルートを取る関係で燃料費が増加、その燃料の元となる原油を運ぶタンカーまでもが紅海を通れず迂回する事態に陥り、原油価格の上昇に拍車をかけています。

またタンカーの新造船も2024年に作られるものは (喜望峰を回るルート用の巨大船で) わずか2隻のみにとどまり、少しでも大量の原油を一度に運びたい供給側からしてももどかしい状況が続いています。

ただし世界のインフレは全体的に減少しており、原油への需要が大きく高まるとは考えづらいです。
供給も需要も弱い現在の環境下からすれば、今後も原油が緩やかな上昇をしていくと見るのが自然でしょう。

想定レンジ: 80.0~86.0


【ゴールド】は数年にわたる土台から大きく飛び出し、目標値と見られる2550まで伸びています。

特にこれから米国が利下げサイクルに入る中で金利は下落方向に向かいやすく、米国金利やドルと反比例するゴールドにまたとない良い環境が訪れていることには注目すべきだと考えています。

想定レンジ: 2150~2300


※当記事はファンダメンタルズにおいて事実の正確さを満たすために尽力していますが、万一事実と異なる点等ございましたらお気軽にご教示ください。
また本稿では分かりやすさを優先するため、金融用語を厳密に使い分けないこともございます。

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