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太陽の塔から読み取る、デザイナーとしての岡本太郎

 新年早々、大阪で丸一日予定が空き、こんなタイミングで入れる場所もなかなか無かったのですが、ふと「屋外展示なら見れるんちゃう?」と思い立ち万博記念公園行ってきました。そう、「太陽の塔」です。
 実は岡本太郎の作品が結構好きです。美術の文脈で、というよりは、個人的な趣味で、という感じ。見ていて楽しいというか、プラモデルを愛でるような、萌えを感じるのです。
 特に彫刻が好きで、有機的なフォルムの作り方とか、印象的なモチーフとか、そういうのが好みに合うのです。川崎の美術館にも行ったりしました。デザインとして好きなのですね。(逆に絵画の方は、色彩の不調和がちょっとキツいのでそこまで好きではない)
 太陽の塔も、良かったです。胴体、腕部の女性的な膨らみと、3つの顔のコントラストが気に入りました。また、他の作品にないスケールが、移動するごとに見える部分が変わるという鑑賞の身体性を与えてくれて気持ち良い。

 ラッキーなことに、塔内の展示もやっていたので拝見しました。万博当時のものではありませんが、塔内に設置されていた「生命の樹」を復元して平成30年に公開されたものです。これがまたすごかった。謎の統合がある。

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 まず、彫刻の内部が展示空間として有効に機能しています。鉄骨を使った薄い外壁が、内部に十分な広さを確保する一方、中央に設置された生命の樹は、展示台として機能するとともに、最上部から最下層まで吹き抜けで一望できる見通しの良さを与えてくれます。
 エスカレータでその空間を上昇しつつ、原子生命からホモ・サピエンス誕生までの生物史をたどるというアイデアは、陳腐ですがドラマチックです。また、内部にそのような展示物を宿すことで、外見の女性的な膨らみが実際的な意味を持ちます。
 個人的に特に面白いと思ったのは、内壁に設置された意匠です。無数の三角柱状の板が設置されており、それが反響板・吸音板の役割を担うと同時に、生物の体内を類推させるような、視覚的効果も果たしています。
 それらがカオティックに統合されているところに魅力を感じます。漠然とした感想ですが、西洋的な統合とは異なる、日本的なアプローチだと思いました。同時に、「これは芸術ではなくてエンターテイメントなのでは?」という思いが頭をもたげます。そこに何か真理めいたものは感じられず、「むちゃくちゃ楽しかっただろうな」という感想にとどまります。やはり、僕には芸術家・岡本太郎というよりデザイナー・岡本太郎という人物像がしっくりくるのです。

 なんにせよ、再現された一部分のみで、これだけ重層的な展示となっているのですから、当時の展示はより濃度の高い、祝祭的アトラクションだったのでしょう。(当時は地下展示 + 太陽の塔 + 丹下健三の空中回廊という構成でした。)万博のエントランスに設置される展示としては極めて優れているのではないでしょうか?
 また、No Plan の状態から 2 年 8 ヶ月で完成させているのは、日本的な「プロジェクト」に一つの可能性を感じさせてくれるものであります。どのようにプロジェクトが遂行されたのか、その過程に学ぶところは多そうです。
 ミュージアムショップで関連資料をみていたところ、以下の書籍に制作過程を調査した文章が載っていたので、今度購入して読んでみたいと思います。(余力があれば続編として記事化したい)




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