誰だって、みんな「未経験者」だった。

 ツイッターでお互いにフォローしあっていた放送作家のアサダアツシさんから昨年末に「お会いしましょう」と仰っていただき、今日、渋谷の喫茶店でお話させていただいた。

 アサダさんは「ウゴウゴルーガ」や「エンタの神様」「笑点」など、数々の人気番組の放送作家を務め、「中学生日記」「世にも奇妙な物語」などドラマの脚本やマンガの原作や編集、演劇のプロデュースなどマルチに活躍されている方だ。

 アサダさんが放送作家になった経緯が面白い。作家養成のスクールに通っていたわけでもない。ツテがあったわけでもない。ハガキ職人でもなければ、誰かの弟子だったわけでもない。いきなり企画書をテレビ局に送りまくった、というのだ。

 番組のエンドロールをチェックし、プロデューサー宛てに企画書を送る。毎週毎週送り続けていたところ、たまたまフジテレビのプロデューサーから「一度会いましょう」と連絡があった。

 河田町のフジテレビに行くと(その頃はまだお台場ではなく河田町だった)「いかにもキャリアウーマン」という感じの女性プロデューサーが待ち合わせ場所だった食堂に現れる。アサダさんが送った企画についての講評は「貧乏臭い」のひとこと。その後は「いかにフジテレビがイケてるか」という話を延々と話し続け、ひと通りしゃべり終わると「私、会議なんで」と言って去っていったのだそうだ。

 そんな不思議な面会が数回続いた後、「そういえば、子ども向けの番組をやる話があるから、よければディレクター紹介するわ」と言われた。それが「ウゴウゴルーガ」の仕事につながったのだという。スタッフ内でも最若手でギャラも今考えるとすごく安かったけれど、とにかくそれが小さな実績になった。その実績のおかげでその後も仕事が続いていったのだそうだ。

 アサダさんが心がけているのが「見切り発車」「まず『できる』と言ってしまう」ということ。「できる」と言ってしまうと、自ずと締め切りが決まる。背水の陣となる。そこから準備を死に物狂いでやるのだ。

 こんなこともあったという。ある日、サッカー番組の放送作家を探しているという話があり「アサダさんって、欧州のサッカー詳しいですか?」と聞かれた。「いやー実はめちゃめちゃ詳しいんですよ!」とアサダさん。しかし、まったくサッカーは詳しくなかったらしい。アサダさんは、そこから2週間で必死にヨーロッパのサッカーを勉強し、本番に間に合わせたという。

 誰だって、最初は「未経験者」だ。「もうちょっと準備してから……」「自分には荷が重いかな……」「もう少し経験を踏まえてから……」などと言っていたら一生前には進めない。

 いまはSNSで人脈もつくりやすいし、やろうと思えばなんでもできる環境が整っている。一方で、あらゆる経験談や情報もあふれている。陥りがちなのが「勝手に先回りをしてわかったつもりになってしまうこと」だろう。もしくは「これにはこういうリスクがあるからやめておこう」と思ってしまう。

 そうではなく、まずやってみること。目の前にチャンスがあればパッと飛びついてみること。これが大切なのだと思う。

 これだけ情報がありふれている時代に「情報での格差」は、ほぼつかなくなった。これからは「行動格差」の時代なのだ。まずオファーしてみる。会ってみる。仕事を受けてみる。そこから何かが始まるのだ。心配はいらない。すべての大御所、重鎮、その道のプロフェッショナルだって、最初はみんな「未経験者」だったのだから。一人の例外もなく。

 アサダアツシさん、お忙しい中、ありがとうございました。

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