👨‍🏫わかりやすい説明をするだけなら簡単

　ときどき、保護者会や個別面談などで「わかりやすく説明して、わかったと言ってもらうのは簡単なんですけど・・・」と枕詞のように言って、「（えっ？）」という顔をされることがある。
　しかし、言い訳でも奇をてらっているのでもないのだ。先生を４～５年もやっていれば誰でもわかりやすく説明ができるようになる。多少のレベルの差はあったとしても「生徒がわかったと」いうレベルには達していて当然なのだ。

　仮に、そうなっていなかったとしたら、授業の組み立てを、他の先生に診てもらったり、模擬授業を見てもらうなりして、改良したほうがいい。
　授業のどこかが、「わかりやすい授業」からずれているに違いない。

💾勉強は理解した後の「定着」が大切

　話を戻して、「わかりやすく説明して、わかったと言ってもらうのは簡単なんですけど・・・」という枕詞の後に、必ず伝えたいことは、
　「わかりやすい説明を聞いて、理解したと思っても、その理解が定着していなければ、得点力アップは難しい。」ということなのだ。

　そして、定着させるためにはそれなりに工夫が必要だ。

✨定着させるための工夫

　例えば、ある単元をわかりやすく説明するのに３０分かかるとする。
　つまり、先生が連続して説明し続ければ、３０分後に生徒はポンと膝を叩いて納得するのだ。しかし、定着させるためには、途中で、その説明を中断しなければならない。その次の説明を生徒に考えさせる必要があるのだ。

　つまり、理解の坂道を最後まで講師が引っ張り上げては、子どもの中に残る印象は定着にまで至らないレベルなのだ。

　途中まで引き上げたら、あえて講師は手を放さなければならない。生徒に自分で考えさせる過程が必要なのだ。

　考えさせた結果、子どもが分かるに越したことはないが、仮に分らなかったとしても、この時間には意味がある。

　つまり、自分に与えられた時間の中で、今までの説明を反芻し、その説明の続きのストーリーを、自分で考えなければならないからだ。

　授業を聞いているだけでは働かなかった脳のある部分が活性化するのだ。先生は質問があるときだけ、適切なヒントで、対応すればいい。

　説明の続きを考えさせるためには、適切な例題が理想的だ。ただ。この続きを考えろでは、やるべきことが曖昧過ぎる。

🎆生徒が満足する授業に専念する教師

　このように、生徒に考えさせる時間をはさむことで、時間は倍近くかかるだろうが、定着の度合いがまるで違う。

　つまり「わかりやすく、とことん説明しきってしまっては、生徒が考えることを邪魔してしまう。」ということだ。

　多くの先生は、ここをクリアーしていると信じたいが、塾講師になりたての私は、ここが分かっていなかったと、反省する。
　もし、身に覚えのある先生は、参考にしていただきたい。

　また、生徒は教師の「ほぼ答えを含んだ説明」を聞いた場合、都合良く自分で考えて、導き出した答えだと勘違いしてしまう。

　以上を合わせて導き出されるのは、「塾でわかりやすく教えてもらったのに学校で得点が取れない。」という、保護者の疑問なのだ。

　つまり、先生が「実力がつく授業」ではなく、「生徒に分かったと思わせる授業」をしていたということだ。

　先生というのは、とても単純なところがあって、「先生！すごくよく分かった。ありがとう！」などと言われれば、メロメロなのだ。だからその喜びを得たくて、分かりやすく説明することに専念してしまうのだ。私も、元塾講師なので、痛いほどよくわかる。

　そうは言っても、「わかったと、思わせたら勝ち！」という場合が、ないわけではない。それは、「自信をつけさせる場合」だ。たとえ、本物の理解ではなくても、自信がなくなり、勉強自体に嫌気がさしかけているときは、「わかったと、思わせる説明」は強力な武器になる。

📚本物の実力をつける具体例

　以上のような例外を除いて、本物の実力をつけさせるためには、先生だけではなく、「先生、保護者、子ども」が三位一体になるが必要がある。

　（１）　まず、先生は「生徒に考えさせる時間を含んだタイムテーブルを作る。」こと。タイムテーブルというのは、「このように授業を進めるという心づもり」のことだ。わかりやすさを追求した授業では、先生だけの一人舞台になりがちなのだ。特に、ベテラン教師であって、自分の授業に自信がある場合に、気をつけなければならない。
　
　（２）　次に、保護者は「今日の授業はとてもよく分かった！」と子どもが言っていたら、まずは「良かったね。」という共鳴の態度は重要である。しかし、そのまま受け取ってはいけない。

　もしかしたら、「よくわかったと思わせる授業を受けて、そう言っているだけなのかもしれない。」

　（３）　最後に生徒は、

　授業中に、「分からないとき、自分で考える前に、質問をすること。」は、決して褒められたことではない。

　子どもは、先生に質問することは「良いことだ。」という刷り込みを、小さい頃から受けている。手を上げて質問したり、答えたりすると先生に「褒められる」のだ。

　確かに、積極的に授業に参加することは大切だ、ただ、手を挙げて、質問することが形骸化することは避けなければならない。

　授業中、説明が分かりにくければ、質問するのは問題がない。

　しかし、問題を解いている最中だったり、先生に考えたり、問題を解くように指示されたときには、質問したい気持ちを抑えて、静かに考えるべきなのだ。

　どのように考えるのかを習得することが勉強の本来の目的なのだ。先生を、「解答マシン」として利用してはいけない。💦

　では、自宅学習ではどのような勉強法が学力と結びつくのだろう。
　まず、宿題などを自宅で解くとき、答えはキリがいいところまで決して見ない。〇×をつけ終わり間違えた個所を徹底的に人に説明ができるくらい熟読する。

　それでもわからないことがある場合、先生に自習や、補習の時にたずねるのだ。また、たずねて説明を受けるとき、わからない箇所を具体的にたずねる習慣をつけることが大切だ。

　わからない箇所が漠然としているのは、学力がそのクラスのレベルに全く合っていないか、その問題をあまり咀嚼せずに質問しているかのどちらかによくある傾向だ。

　「先生、全然わかりません。」という訴えは、理解しようとしてもできなかったのか、10秒考えたが、見たことがない問題だったので、諦めたのか判断する必要がある。

☕最後に

　今日書いてきたことをまとめると、「分かりやすく説明すること」は、第一歩としてはとても大切だが、その後に「定着させる努力」が必要であるということだ。
　先生は、わかりやすい授業ができたという自己満足で終わらないこと。
　保護者は、子どもの「今日の授業、とてもよく分かった。」をうのみにしないこと。
　生徒は、わかった気になるために、安易に質問をしたり、先生から答えに近いヒントを引き出し、それで、理解したつもりにならないこと。

　以上を三位一体となって実施すれば、わかりやすい授業がそのまま実力アップにつながると思う。

🦉以上

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