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「レゴの日」なので同社の歩みから住宅商品化の歴史を妄想する

5月5日は「こどもの日」であると同時に「レゴの日」でもあるのだそう。ちなみに、レゴ創業者オーレ・キアク・クリスチャンセンは大工としてそのキャリアをスタートし、1916年に小さな木工所を設立しました。それが後に世界的な玩具メーカーとなるレゴ社のはじまり。

ただ、創業当初は世界恐慌のあおりを受けて、主軸の木製建具とは別に木製の生活雑貨をてがけることに。さらには雑貨製作の端材を活用して木製玩具を製作・販売したのだそう。もともとは自分の子どものためにつくった木製玩具ですが、ためしに売ってみるとこれがよく売れたのだとか。

そして戦後には、社員の猛反対を押し切ってプラスチックの製造機械を導入します。ここに自動結合式ブロック「オートマ・ビンディング・ブロック」が誕生します。とはいえ、初期の売り上げは低迷。プラスチック玩具は木製玩具の代用品と見なされたのです。1953年には、この「オートマ・ビンディング・ブロック」を今に至る「レゴブロック」に改称。

さらにレゴ社は「玩具のシステム化」を掲げます。こどもが楽しんで遊ぶためには「システム」が必要だと。このコンセプトを「レゴブロック」に適用し、28種類の組立セット+8種類の乗物による「レゴタウンプラン」を発表します。複数の商品を組み合わせることで、自分の街がつくれる。これはステキな沼でしょう。

こどもたちが自由に街を拡張可能な玩具へと発展した「レゴブロック」。当然に「連結」のしやすさが決め手になる。そこで組立を容易にするため、現在おなじみの「スタッド・アンド・チューブ連結システム」が導入されることに。ブロック間の結合力が高まったことで、「レゴブロック」は木製積木の代用品であることを脱します。

さて、「全てのパーツをつなげ、様々な方法で使え、一緒に組み立てることができ、将来、買い足すブロックともぴったりフィットする」というレゴの「遊びのシステム」論は、ブロックの組合せが無限に可能です。ただ無限に創造できること、なんでもできることは、実は購買意欲を刺激するには弱い。そこで登場するのが「プレイテーマ」です。

1970年代から導入された「プレイテーマ」には「玩具のシステム化」の具現化として導入された「タウンプラン」を発展・継承した「シティ」となります。そのほかにも「トレイン」「宇宙」「キャッスル(現・キングダム)」などが次々と投入されることに。

つまりは、無限にありうる組合せの「自由」を存分に享受するためには、むしろ「自由」を限定する「物語」が必要だった。ここには「レゴブロック」の高度商品化の萌芽をみることができるのでは中廊下と思うのです。

その後、さらにアニメや映画とコラボした「ライセンステーマ」も加わっていきます。スターウォーズやディズニー・プリンセス、ハリーポッターなどなど。すでに商品として確立された「物語」が「レゴブロック」の商品化を加速させるのです。

1950年代に導入された「玩具のシステム化」は「レゴタウンプラン」として具現化しました。これは住宅でいうなら、住宅「工業化」の歩みに対応するかと思います。無限の組合せが可能な玩具として「レゴブロック」が成長したように、住宅工業化も種々の試みを経て1970年のユニット工法住宅「セキスイハイムM1」として結実しました。

とはいえ「玩具のシステム化」をより麻薬性のある楽しみへと昇華しうる魅力的な「商品」にするためには無限の組合せ可能性をむしろ制限する「プレイテーマ」が必要だった。「プレイテーマ」に沿って展開される「物語」が、こどもたちの想像力のブースターになったのでしょう。

この「工業化」の高度化を経て、その成果をより商品としてすり合わせる「プレイテーマ」的な仕掛けが、メーカー住宅でいうところの「企画」であり、「ミサワホームO型」にはじまる「商品化」の高度化だったのではとか妄想します。レゴにせよ、ハウスメーカー住宅にせよ、この転換点は1970年代にあたります。

そして、住宅商品化のさらなる展開と足並みをそろえるように「レゴブロック」は「ライセンステーマ」の導入へ進む。ちょうど住宅が「和風/洋風/折衷」がさらに細分化し、アーリーアメリカンや南プロヴァンス、北欧モダン…などなど、多種多様な「テーマ」が住宅を彩ることになっていったように。

そんなレゴ社ですが、1980年代以降、教育産業へも進出しています。「子供には最高のものを」という社是ゆえ必然の展開。

数年前まで流行った「こども工務店」など、住宅取得層ファミリーの子どもたちを対象にしたイベントを工務店などが企画・運営したことを思い出します。

さらには幼少時にレゴに慣れ親しんだ大人たちをターゲットとした商品も充実し、もはや「子供には」を超えて「人類には最高のものを」へ、と変貌しています。

そしてやはり、住宅業界もまた体験と学習を経て住宅を主体的に検討・選択するという教育産業の場へと変貌しているのでした。

(おわり)

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