薬の歴史を知る―「みらいくすり館」レポート01:健康未来EXPO 2019から学んだこと その07-01

詳細は「01.薬の歴史を知る.zip」を参照してください。その圧縮フォルダ内には、同名のPDFファイルと関連写真が含まれます。

2019年04月05日、私は一般客として健康未来EXPO 2019(以下EXPO 2019)に参加し、ブース「みらいくすり館」(以下同ブース)を見学した(1)。

同ブースは、最初に種痘からニボルマブまでの薬の歴史を紹介した(図01)。

01.くすりの歴史

図01.くすりの歴史。
種痘からニボルマブまでの薬の歴史が紹介されている。

紹介された以下の薬を年代順に紹介する(表01,2,3,4,5,6,7,8,9,10 ,11,12,13,14,15,16)。

表01.薬の歴史。

01.薬の歴史

括弧内の薬の名前は商品名である。

医療の歴史自体は意外と古く、紀元前1万年の薬師(魔術医、シャーマン、サンゴーマ)を起源とする(2のp.1)。
外科手術の1つである穿頭の歴史は紀元前6500年に遡る(2のp.2)。
一方、疾患、特に感染症に対しては、紀元前1500年頃から行われてきた瀉血(2のp.9)や紀元前600年頃に古代ローマに初めて建設された大規模下水道システムであるクロアカ・マクシマなどによる予防(2のp.12)しかなかった。また、薬の歴史は比較的新しく、紀元前2世紀に作られたミトリダティウムが最初に作られたものであった(2のp.15)。
紀元前2世紀~1798年の間は、人類は疾患、感染症に対しては余りにも無力で、神仏に祈ることしかできなかった。八坂神社は疫病退散のために建てられた神社の1つで、祇園祭もまた疫病などの厄災の除去を祈ったものの1つである(図02,03,17,18,19)。

02.八坂神社 本殿

図02.八坂神社 本殿。
撮影日:2021年01月03日。肖像権対策のためモザイク処理済。

03.長刀鉾

図03.祇園祭 前祭 長刀鉾。
撮影日:2017年07月17日。

しかし、エドワード・ジェンナーが1796~1798年にかけて実施した種痘、即ち、牛痘接種による天然痘予防以来、人類は感染症に反旗を翻せるようになった(2のp.66)。
それ以降、人類は疾患、特に感染症やがんなどに対して、戦いを挑み続けている。

2019年末、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が中華人民共和国武漢市で初めて報告され、その後世界中に広く拡大し、現在でも猛威を振るっている(20,21)。
しかし、現在では、予防ワクチンであるトジナメラン(商品名:コミナティ筋注、ファイザー株式会社)などが利用されている。一方、一部の重症患者に対する治療薬として、レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液/点滴静注用 100 mg、ギリアド・サイエンシズ株式会社)やデキサメタゾンが推奨されている(20,22,23)。

COVID-19が示すまでもなく、人類の歴史は疾患と共にある。だからこそ、人類は疾患、特に感染症を克服することを信じ、かつ、信じたい。

参考文献
1 日本コンベンションサービス(JCS)株式会社.“4年に一度開催される「健康未来EXPO 2019」は、大盛況の中でフィナーレを迎えました”.JCS トップページ.ニュース.イベント&講演.2019年05月16日.https://www.convention.co.jp/news/detail/contents_type=15&id=541,(参照2021年06月01日).
2 クリフォード・ピックオーバー 著,板谷史 翻訳,樺信介 翻訳.ビジュアル 医学全史:魔術師からロボット手術まで.第1刷,株式会社 岩波書店,2020年01月24日,270 p.
3 スティーブ・パーカー 著,千葉喜久枝 翻訳.医療の歴史:穿孔開頭術から幹細胞治療までの1万2千年史.第1版 第1刷,株式会社 創元社,2016年01月01日,400 p.
4 森岡恭彦 著.医学の近代史:苦闘の道のりをたどる.第1刷,株式会社 NHK出版,2015年09月30日,288 p.(NHKブックス No.1234).
5 公益社団法人 日本化学会.“認定化学遺産 第024号 『エフェドリンの発見および女子教育に貢献のあった長井長義関連資料』”.日本化学会 トップページ.化学を知る・楽しむ.総合.化学遺産.化学遺産認定事業と化学語り部:オーラルヒストリー.第5回化学遺産認定.http://www.chemistry.or.jp/know/heritage/05.html#024,(参照2021年06月01日).
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7 学校法人 北里研究所.“研究成果”.大村智博士 ノーベル賞受賞記念 トップページ.これまでの歩み.https://www.kitasato-u.ac.jp/nobelprize/research_result.html,(参照2021年06月01日).
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10 公益社団法人 発明協会.“スタチン 概要”.発明協会 ホームページ.戦後日本のイノベーション100選.イノベーション100選一覧.安定成長期.http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00084&test=open&age=stable-growth,(参照2021年06月01日).
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14 公益社団法人 発明協会.“ドネペジル塩酸塩 イノベーションに至る経緯”.発明協会 ホームページ.戦後日本のイノベーション100選.イノベーション100選一覧.現代まで.http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00100&age=present-day&page=keii,(参照2021年06月01日).
15 公益財団法人 国際科学技術財団.“2012年(第28回)日本国際賞受賞者 「健康、医療技術」分野 がん特異的分子を標的とした 新しい治療薬の開発”.The Japan Prize Foundation ホームページ.受賞者.歴代受賞者.2010~.2012年(第28回).https://www.japanprize.jp/prize_past_2012_prize01.html,(参照2021年06月01日).
16 小野薬品工業株式会社.“オプジーボ”.オノ オンコロジー ホームページ.小野薬品の薬を使用された方へ.https://p.ono-oncology.jp/drug/opdivo/,(参照2021年06月01日).
17 八坂神社.“八坂神社の歴史”.八坂神社 ホームページ.八坂神社について.http://www.yasaka-jinja.or.jp/about/,(参照2021年06月01日).
18 八坂神社.“祇園祭 概要”.八坂神社 ホームページ.年中行事.祇園祭.http://www.yasaka-jinja.or.jp/event/gion.html,(参照2021年06月01日).
19 公益財団法人 祇園祭山鉾連合会.“祇園祭山鉾連合会について”.祇園祭山鉾連合会 ホームページ.http://www.gionmatsuri.or.jp/about/,(参照2021年06月01日).
20 MSD株式会社.“コロナウイルスと急性呼吸器症候群(COVID-19、MERS、SARS)”.MSDマニュアル 家庭版 ホームページ.16. 感染症.呼吸器系ウイルス.2021年02月.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/16-%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%B3%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A8%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-covid-19-mers-sars,(参照2021年06月01日).
21 厚生労働省.“新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.2021年04月23日.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html,(参照2021年06月01日).
22 ファイザー株式会社.“製品情報”.ファイザー新型コロナウイルスワクチン 医療従事者専用サイト ホームページ.https://www.pfizer-covid19-vaccine.jp/#/DrugInformation,(参照2021年06月01日).
23 ギリアド・サイエンシズ株式会社.“特性”.G-STATION Plus トップページ.製品情報.COVID-19.ベクルリー トップページ.https://www.g-station-plus.com/product/covid19/veklury/features#02,(参照2021年06月01日).

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