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ガンダムみたいな操縦型ロボットがサービスの概念を覆す

ロボットには自動化以外の使い方もあります。最近、ニュースになっている国会議員が遠隔で議会に参加というのも大事な使い方ですね。今回は少し技術視点で考えてみたいと思います。(ロボット専門家の方には物足りない内容かもしれません)

話題のロボット

 ALSの舩後さんが参議院議員に当選したことを受け、OriHimeというロボットを使って遠隔で議会などに参加できないかということが検討されています

OriHimeは、オリィ研究所の吉藤健太朗さんが開発した分身ロボットで、遠隔でコミュニケーションが取れたり、左右のアームを動かすことで効果的に状況を表現することができます。
私自身も何度か体験させて貰ったことがありますが、十分な意思疎通を行うことができ、存在感がしっかりとありました。障碍がある方だけではなく、健常者のテレワークなどでも普通に使われるようになるのではないかと思います。

ロボットの種類

ロボットはざっくりと言うと、2種類に分けられると思います。1つは自律型。もう1つは操縦型。自律型は、ロボット自身でセンシング、認識、判断、動作を完結するタイプで、操縦型は特に認識、判断を人間が行うタイプです。先ほどの、OriHimeは操縦型になります。

日本の得意なアニメで考えると、自律型は鉄腕アトムとか、ドラえもんとか。勝手に考えて、勝手に動きますね。一方、操縦型は鉄人28号とか、マジンガーZ、ガンダムとか。もう少し最近だと、エヴァンゲリオン、パシフィックリムなどが操縦型の代表でしょうか?操縦方法も色々で、ジョイスティックのリモコンみたいなのから、搭乗して装着するタイプ、脳と繋げるBrain Machine Interfaceタイプまであります。
※ここでは、エヴァがロボットではないという議論は無しにさせて下さい。

自律型と操縦型の分担

理想論だけでいうと、効率化を目指す作業は自律型、目指さない作業は操縦型、が良いかもしれません。違う言い方をすると、最初のNote記事で述べたように、自動化すべきことは自律型、自分でやりたいことは操縦型で行うという分担が理想的なはずです。

ただし、そうそう理想的にはいきません。理想と現実の一番のギャップは、ロボットの知能レベルがまだまだ人間の脳の処理、判断能力に追いつかないケースが多いということだと思います。もちろん、人工知能の認知判断性能が高いという逆のケースもありますが、その場合にはいわゆるAIで解決されるケースがほとんど。

この場合、優秀な人間の認知判断能力を活用し、作業自身はロボットに任せるというのがベストミックスとなります。こうなると、人はロボットが作業を行う場所と同じ場所にいる必要がなくなるという特長が発生します。

これは非常に大きな意味を持っています。サービスということの特徴の1つに、同時性と同場性が必要ということがあります。つまり、「同じ時に同じ場所にいないとサービスは提供できなかった」のに対して、操縦型ロボットを介することで、その1つである同場性がいとも簡単に不要になるのです。
さらに、同時性という条件も一部のケースでは緩和することが可能になります。なぜなら時間はある意味相対的なので、世界中ではどの時間帯も存在するからです。つまり、日本で24時間勤務体制を整えることは大変かもしれませんが、世界の三ヶ所で9時17時勤務の体制を築き、遠隔作業をすれば、24時間勤務体制を実現でき、かつ擬似的に同時性の制約を取っ払うことができるのです。

これまでも電話会議やテレビ会議のような遠隔サービスはありました。今後はこれらに加えて、遠隔作業ということが可能になってきます。それに伴い、遠隔で提供できるサービスそのものが増えていくことになります。

操縦型ロボットによる遠隔サービス作業

では、どのような作業が操縦型ロボットで実施されるようになるのでしょうか?少なくとも以下の3つのうち、どれかは必要かと思っています。

1)ヒトが直接触れない方が良いモノを扱う作業
レベルに違いはあれど、ヒトが触らない方が良いモノは世の中には沢山あります。最も危険なモノは例えば原子力発電所の中の燃料デブリとかでしょうか?そこまで危なくないものとしても血液とか、衛生的な視点から食品とかも考えられます。要はそもそも人が触れないモノに対する作業か手袋をしてヒトが作業している作業です。
2)移動コストが高い作業
これもシンプルで、移動が大変だから、一度ロボットだけ先に移動をさせておいて、人は移動するのをやめようというものです。宇宙とか海外とか離島とかがわかりやすいですかね。冒頭のALS患者さんの場合も移動が大変という意味ではそうかもしれません。
3)知能化コストが高い作業
本当は自動化した方が良いかもしれないけど、自動化に必要なロボットの認識、判断といった知能化が技術的に難しい、もしくは開発コストが高くなりそうという作業です。認識そのものが難しいケース例外処理が多いとか、失敗した時のリスクが高いなど、ヒトが情報をリアルタイムに取得しながら判断した方が良いという作業です。例えば、手術とかが該当します。

 このような条件を考えると、例えば手術なんかは全ての条件を満たしていることになります。まだ離島の人の手術をするなんてことはほとんど行われていないかと思いますが、それでも工場以外で使われているロボットの中で最も市場規模が大きいのは、「手術ロボット」です。
※手術ロボットの詳しい内容はまだ別の機会に。

操縦型ロボットの課題

 色々お得感がある操縦型ロボットですが、もちろん万能ではありません。1つの大きな課題は、作業効率が落ちるということです。対象となる作業にも寄りますが、一般的には直接作業を行う場合の60パーセントくらいになると言われています。このことを考慮して、人手でやるか?、自動化するか?、操縦型にするか?ということを考える必要があります
  効率が落ちる理由は、離れたところから作業することに直接的に関係するのですが、通信遅れと感覚伝達不足という技術的なところだと思います。
 通信遅れとしては、100ミリ秒程度遅れるだけでも作業に違和感は出ますし、感覚伝達という点では、テレビ会議などで体験したことがあるかもしれませんが、やはり全ては伝わりにくい点があると思います。特に作業においては、離れた場所で触っているモノの感触などの力の感覚などが重要になってくるでしょう。
 これらについては、最近話題の高速、大容量の5Gなど技術的な解決も進んでいくかと思います。

というわけで、今回の国会議員の利用議論で注目された遠隔ロボットは、アニメのレベルまで一気に行くかはわかりませんが、色々なサービス活用で益々大注目になっていくでしょう!


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