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【#04】イケてるエンジニアは外さない。ユーザの「課題」とシステムの関係。

「イケてるエンジニアはココが違う!」をテーマに技術的で意識高い系の記事を投稿しています。こちらの目次に沿って週1回ペースで記事を投稿していくので、この記事が「面白かった!」という方はフォローまたはシェアしてもらえると嬉しいです。

今回は「イケてるエンジニアは外さない。ユーザの「課題」とシステムの関係。」というテーマでお話します。システム設計を行うエンジニアには是非、知っておいて欲しい内容です。

前回の振り返り

前回は、こちらの記事で「システム設計も人生設計も『正解のない問題』に向き合うことで、柔軟性を備えることができる」というお話しました。

今回からは、システムのビジネスアーキテクチャの設計に着手する前に、エンジニアが押さえておくべき、利用者の「課題」とシステムの関係について考察しています。

今回の結論はこちら!
✅ 「システムが解決する課題」を腹落ちさせよう。
✅ 「問題」「原因」「課題」「解決策」の意味を理解しよう。
✅ 「課題」を理解して「解決策」を提供するシステムを設計しよう。
では、いきましょう!

「システムが解決する課題」を腹落ちさせよう。

システムのビジネスアーキテクチャの設計に着手する前に、私達エンジニアが腹落ちさせておくべきことがあります。それは、「今から設計するシステムが解決しようとしている課題は何か?」ということです。システムの利用者にとってのメリットを明確に言語化し、腹落ちさせる必要があります。

その理由は「エンジニアの命の時間を無駄にしないため」です。もし、システムが解決する課題を腹落ちさせずにシステム開発を進めてしまった場合、以下のような要因によりエンジニアの命の時間を無駄にしてしまいます。

エンジニアの命の時間が無駄になる3つの要因
① 使われない機能の開発に時間を使う。
② システムが作りっぱなしになる。
③ ビジネスが失敗する。

① 使われない機能の開発に時間を使う。
システムが解決する課題を理解せずに開発を進めた場合、いつしか、利用者に求めらるシステムではなく、エンジニアが作りたいシステムを開発している状態になっていきます。その結果、使用目的不明の使われない機能が開発され贅肉の付いたシステムになります。書籍「ソフトウェアファースト」では「使われないプロダクトはゴミ」と断言されています。ゴミの開発に時間を費やしてはいけません。

② システムが作りっぱなしになる。
開発したシステムが利用者に届くまでの間「システムが解決しようとしている課題」はただの仮説、つまり、ビジネス企画者の「こんなシステムを提供すればお客さんは喜んでくれるはずだ!」という想定に過ぎません。システム開発を足掛かりにビジネスを成長させていくためには、仮説を検証できる機能がシステムに備わっている必要があります。しかし、そのような機能がシステムに備わっていない場合、ビジネス戦略として次の一手を打つためのデータが得られません。そのため、未来につながらない作りっぱなしのシステムになってしまいます。

③ ビジネスが失敗する。
「課題の理解とかある程度でよくない?『大は小を兼ねる』とも言うし、ちょっと多めに機能を作っておけばいいんじゃないの?」という考え方もあるでしょう。しかし、この考え方は危険です。ビジネスの失敗確率を上げることになります。書籍「起業の科学」によると、Startup Genome Reportの調査結果として「成功しているスタートアップと失敗したスタートアップが書いたプログラムの量を比較すると、失敗したスタートアップの方が明らかに多い。」という衝撃のデータが報告されています。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。

システムが解決する課題を腹落ちさせずにシステム開発を進めることは、自分や仲間の命の時間を無駄にする行為です。システム開発に着手する前は、システムが解決する課題の理解に最大限努力しましょう。

「問題」「原因」「課題」「解決策」の意味を理解しよう。

「『システムが解決する課題』を理解するのが重要、って、そりゃあそうでしょ。当たり前のこと言ってない??」と思われた方もいるかもしれません。では、そもそも「課題」とはどんな意味でしょうか?よく似た言葉に「問題」があります。「課題」と「問題」の違いを説明できますか?

「え?」と思われた方は、学びのチャンスです。エンジニアの命の時間を無駄にしないためにも、「課題」という言葉の意味をしっかり理解しましょう。

「課題」の意味を理解するためには、「問題」「原因」「解決策」という言葉の意味もセットで理解すると効果的です。これらの言葉は、一般的な問題解決における思考法のフレームワークとして、ビジネススクールなどでもよく紹介されています。

「問題」「原因」「課題」「解決策」の意味
①問題 :現状の好ましくない状況、現状と理想のギャップ
②原因 :問題を産み出す要因
③課題 :原因を取り除くための取組
④解決策:課題を完了に導く手段

①「問題」とは?
「問題」とは現状の好ましくない状況や、現状と理想のギャップのことを指します。例えば「年中モテ期のオレ!」という理想に対して「バレンタイディーとは無縁のボクちん」という現状がある場合、「モテないこと」が「問題」になります。「問題」はネガティブな内容です。

②「原因」とは?
「原因」とは「問題」を産み出す要因のことを指します。また、1つの「問題」に対して、複数の「原因」が存在します。例えば「モテないこと」という「問題」に対して、「服装だダサい」「清潔感がない」「トークが面白くない」ということが「原因」になります。ここは、現実を直視して「問題」を分析する必要があります。

③「課題」とは?
「課題」とは「原因」を取り除くための取組のことを指します。例えば「モテないこと」の「原因」が「服装がダサい」ということであれば、その「原因」を取り除くための取組「おしゃれになること」が「課題」になります。「問題」がネガティブである一方、「課題」はポジティブな内容です。

④「解決策」とは?
「解決策」とは「課題」を完了に導く手段のことを指します。また、1つの「課題」に対して、複数の「解決策」が存在します。例えば「おしゃれになること」という「課題」に対して、「ファッション雑誌を読む」「センスのいい友人にアドバイスを求める」「WEAR アプリを使う‬」ということが「解決策」となります。

この「問題」「原因」「課題」「解決策」という思考法のフレームワームは、非常に普遍性の高いものです。例えば、僧侶でもある草薙龍瞬さんの著書「反応しない練習」では、次のようなブッダがまとめた悩み・問題の解決の手順が紹介されます。

生きることには〝苦しみ〟が伴う。
苦しみには〝原因〟がある。
苦しみは〝取り除くことができる〟。
苦しみを取り除く〝方法〟がある。
──サルナートでの五比丘への開示サンユッタ・ニカーヤ
出典:草薙龍瞬. 反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

この手順は、仏教の世界で〝四つの真理〟と呼ばれているそうです。「問題」「原因」「課題」「解決策」のフレームワークそのものですね。紀元前の時代に現在ビジネスでも十分活用できる思考法を完成させているなんて、ただただ驚愕です。

「課題」を理解して「解決策」を提供するシステムを設計しよう。

「問題」「原因」「課題」「解決策」のフレームワークにおいて、システムに位置づけは何になるでしょうか?そうです。システムは「解決策」にあたります。システムは「課題」に対する「解決策」を提供しています。

利用者の「課題」に対してストライクな「解決策」を提供するシステムは「コレ!コレ!待ってましたよ!」と受け入れられる一方で、ボール気味のシステムは「ん?なんか違うな。」と一蹴されてしまいます。

よって、システム設計を行う際は、高い解像度で利用者の「課題」を理解することが求められると考えています。その具体的な方法として、ハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授の名著「ジョブ理論」では、以下のような説明が紹介されています。

顧客のジョブを完全に理解するには、ある特定の状況顧客がなし遂げようとしている進歩を、機能的、社会的、感情的側面も含めて理解し、さらに顧客が引き換えにしてもいいと考えているものを理解しなければならない。
出典:クレイトン・M・クリステンセン. ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

利用者を完全に理解するためには「誰が、どんな時に、どんな事をしたいか?」を明確なストーリーとして捉える必要がある、というのが私の理解です。

世の中に受け入れられ愛されているシステムは、利用者の「課題」を高い解像度で分析してストライクな「解決策」を提供しています。例えば、皆さんご存知の「ウーバー」に関して、尾原和啓さんの著書「ザ・プラットフォーム」でこのような紹介があります。

「ウーバー」発祥の地、米国ではおもしろい現象が生まれています。この「ウーバー」の運転手になるという仕事が、米国に住む移民が社会に溶け込むためのファーストステップになっているのです。なぜでしょうか。それは「ウーバー」というサービスが基本的には「非言語」のサービスだからです。
出典:尾原和啓「ザ・プラットフォーム――IT企業はなぜ世界を変えるのか?」

英語を話せない移民がアメリカ社会に溶け込むための「解決策」として、「ウーバー」は設計されているのです。乗客側の「課題」に目が行きがちですが、運転手側の「課題」に対してもしっかりと「解決策」を提供しています。

私達エンジニアが生み出したシステムが、多くの人から愛され価値を生み続けるためにも、利用者の「課題」を腹落ちさせることに手間を惜しんではいけません。

これは「正解のない問題」に挑み続ける過酷な思考労働です。しかし、イケてるエンジニアはそこを外しません。目を輝かせて、難問と向き合い続けます。

まとめ

今回の記事のまとめです。
✅ 「システムが解決する課題」を腹落ちさせよう。
✅ 「問題」「原因」「課題」「解決策」の意味を理解しよう。
✅ 「課題」を理解して「解決策」を提供するシステムを設計しよう。

次回は、システムにおけるビジネスアーキテクチャ設計を人生設計に応用する方法について、考察したいと思います。

参考文献


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