大手メーカーでITエンジニアとして働く40代のサラリーマンです。

数年前、仕事での挫折をきっかけに、システム設計の専門書やビジネス書を読み漁りました。そのなかで「システム設計と人生設計は同じ。」ということに気付きました。

今回は「あの失敗」を振り返り、そこから学んだことと、これからについてお話します。

エンジニアとしての挫折

私は今の会社に入社してからの約10年間、公共機関向けの大規模なコンピュータシステムの開発に携わってきました。この10年間、システム開発における要件定義、設計、システム構築、テスト、出荷後の据付やユーザ教育、その後の保守対応まで、上流から下流までの業務を一通り経験。リーダーとしてメンバーを束ね、それなりに成果を上げることができていました。

自分でいうものなんですが「オレ、イケてんじゃね。」とちょっと調子に乗っていました。

しかし、10年目を過ぎた頃、大きな壁にぶち当たります。

職場の上司が交代、新しい上司のもとで新製品の開発を任されたのです。この新製品の開発では、電気回路設計や機械設計など、それまで経験したことのない業務を一人で進めるように命じられました。

最初は困惑したものの「自分ならできるはず！これはチャンスだ！」と意気込み仕事に取り掛かりました。しかし、この新製品の開発では、それまでのシステム設計の経験は全く通用しませんでした。経験がない分野で成果を上げることは、想像以上に困難なものでした。

それでも、上司の期待に応えようと、寝る時間、休日の時間を削って働きました。

しかし、何をやってもうまくいきません。空回して失敗ばかりでした。失敗が失敗を呼び、考えられないようなミスを連発しました。パソコンの画面に向かっていてもただただ混乱し、時間だけが過ぎていきました。「どうしようどうしよう・・・」と焦るだけの毎日。

そして、上司からは「いつまでかかってるんだ！」と、毎日にように同僚達が見ている目の前で、厳しい叱責を受けました。遂には、あからさまに無視されるようになり、周囲からもどんどん孤立。数ヶ月前まで、調子にのっていた私の威勢は、風船のようにしぼんでいきました。

考えてみれば、私の仕事に対する向き合い方は酷いものでした。

仕事を作業としか思えず、言われたことしかやらない。たいしてやりたくない仕事でも、こなせそうな仕事であれば職場での評価を気にして「やりたい」と言い、取り繕うようにこなすだけ。これは「特定の作業はそれなりにできるけど、それ以外の事は全くできない」というマニュアル人間が出来上がっていく過程そのものでした。そんなマニュアル人間に新製品の開発なんて、そもそも無理だったのです。

失敗の原因は、私自身にあったのです。

結局、新製品の開発は大失敗に終わり、私は部署で干されることになります。それまで携わっていた仕事は、前触れもなくどんどん取り上げられました。忙しそうに仕事をしている同僚達の中で、私だけやることがない。誰からも頼りにさない。居場所のない職場は地獄のようでした。

「もう、限界だ・・・」

立ち上がる力が残っていない自分。そんな自分に対して、明確に限界を悟りました。

挫折です。

そこから学んだこと

いつものように息苦しい職場で午前の時間を乗り切った、そんなときできした。仕事でも交流のあった隣の部署の課長さんが「たけさん、お昼ごはん、一緒にどうですか？」と、笑顔で私をランチに誘ってくれたのです。

職場で私に向けられた久々の、笑顔。

「あっ、はいっ。」私は半ば反射的に応えました。

その課長さんは、私のおかれている状況を、全て理解されていました。ランチをしながら「たけさん、頑張ってますよ。仕事より、たけさんの人生のほうが大切です。一旦、立ち止まってみてはどうですか？」と、優しい言葉をかけてくれたのです。

私は「こんな自分を見てくれていたんだ・・・」と言葉に詰まり、社員食堂で思わず涙が溢れました。

そこで、私は、一旦立ち止まりました。

職場で干されたことは好都合とばかりに、自分と向き合う時間をとりました。

自分の強みは何か？弱みは何か？過去の仕事でうまくいった原因は何か？失敗した原因は何か？そして、自分はこれからどうしたいのか？何ページも渡りノートに書き殴りました。正解のない問題に対峙し、吐きそうになりながら自分と向き合いました。

そして、「自分にはエンジニアとしての専門知識と一般教養がそもそも足りていない。１から学び直す必要があるんじゃないか？」そう思うようになりました。

そのあとはギアが切り替わったように、システム設計の専門書とビジネス書、この２種類の書籍をただただ猿のように読み漁りました。書店で目についた本は片っ端から、薦められた本は薦められるがまま、とにかく量、量をインプットしていきました。

そんな中で、ふと、あることに気付いたのです。

「あれっ？おんなじこと・・・書いてある・・・」

システム設計の専門書とビジネス書、全くジャンルの異なる本に、同じことが書いてあることに気が付きました。

それは、システム設計においても、人生設計においても「変化の早いものに振り回されてはいけない」というものでした。

最初は「たまたまかな？」と思っていました。でも、いろいろな本を読めば読むほど、それは１つの真実のように思えてきました。

システム設計では、目の前の流行りのテクノロジーに振り回されてはいけない。仮にそのテクノロジーを使ったシステムがうまくいったとしても、そのテクノロジーが古くなれば、また、システムの存在価値から考え直さないといけない。

人生設計では、目の前の職場での評価に振り回されてはいけない。仮にその職場や上司の評価を得ることができたとしても、職場や上司が変われば、また、自分の存在価値から考え直さないといけない。

変化に振り回されないためには、システムも人生も変化に対応するための”強さ”が必要だということです。

大失敗したあのとき、私にはその”強さ”が身に付いていませんでした。職場での評価ばかり気にして、「うまくこなすのがカッコいい」とどうしようもない勘違いをしていたのです。そして、職場の変化に対応しきれずに、壊れてしまった。

でも、変化に対応するための”強さ”は、ちゃんと設計すれば身に付けることができるということも学びました。そう、システムを設計するのと同じように、人生を設計すればいいのだと。

「そうかっ！システム設計と人生設計は同じ！」

その気付きのあと、私の行動の優先順位はガラリを変わり、人生が激変しました。

他人の評価など一切気にせず、自分の強みを活かせる部署に異動。異動先ですぐに活躍！とまではいかなったものの、１年後にはシステム設計の技術力を認められ、社内の様々な開発プロジェクトから「たけさんにも参画してほしい。」と声が掛かるようになりました。

数年前、職場で干され、誰からも頼りされなかった私が、気が付けば売れっ子になっていたのです。

その結果、それまで１度も受賞したことがなかった社内表彰を３年間で４度受賞。目に見える形で変化が起こりました。

「システム設計と人生設計は同じ。」
この気付きは確信に変わりました。

そして、これから。

なぜ、あんな失敗をしてしまったのか？その原因は、私の仕事に対する向き合い方に他なりません。しかし、あの失敗があったから「システム設計と人生設計は同じ。」という気付きを得ることができました。

そして、今、私はエンジニアとして働くなかで、ある課題を感じています。
それは、システム開発の現場はどこか疲弊気味で元気がない。産業は米中勢にやられっぱなし。人口先細りの状況で、この国はどうなってしまうんだろうという危機感です。

「エンジニアが、もっと活き活きと働く世界を創ることはできないだろうか？」そう思うようになりました。そして、それが自分の使命のように思えてきたのです。

そして、今の私ができること。それは「システム設計と人生設計は同じ。」という気付きを文章としてまとめ、多くの人に知ってもらうということだと思い立ちました。

過去の自分がそうだったように、開発の現場で疲弊するエンジニアを１人でも救いたい。

そんな思いで、noteをはじめました。

現在、コツコツ記事を投稿しているものの、まだまだ文章も下手くそで、自分で見返してみても分かりにくい。今、まさに「自分の考えをまとめる」「人に伝わるような文章を書く」という大きな壁にぶち当たっているところです。

それでも、自身の気付きを言語化し、少しづつ少しづつ記事を投稿。定期的に文章を見直して、修正を加えています。

「システム設計と人生設計は同じ。」

この気付きは、私が人生の谷底で見つけてきた宝物です。そして、その宝物を多くの人に届けることこそ、私の使命であり、私を救ってくれた課長さんへの恩返しでもあると感じています。

あの失敗があったから、私は変わることができた。
感謝の気持ちを忘れず、前に進んで行きます。

お知らせ

「システム設計と人生設計は同じ。」をテーマに、こちらでコツコツ記事を投稿しています。興味があれば、是非、覗いてみてください。