建見霞嗣

医薬経済の連載は2023年12月に終了しました。 医薬経済に載せきれなかった記事をこち…

建見霞嗣

医薬経済の連載は2023年12月に終了しました。 医薬経済に載せきれなかった記事をこちらに掲載できればと思っています。

最近の記事

前WHOアジア事務局長、葛西先生を思う: ポストコロナの世界で

 2024年4月13日から、医療安全学会総会が開かれました。理事長、会長の御尽力により素晴らしい方々が集まり、そしてご登壇されていたように思います。  ただ、この場所にぜひいて欲しかった人間がひとりおります。前WHOアジア事務局長葛西先生です。  ご存知のかたは多いと思いますが、葛西事務局長はWHO内での言動がパワハラとの告発を受け、任を解かれてしまいました。それは、まさしくコロナ禍の真っ只中で、コロナの拡大で世の中の全ての価値観が根本から覆されてもおかしくない状況でした

    • カツ丼ソース太郎の、臨床ガイドラインを語るマーケティング

      初めに 現在ガイドラインは臨床において、絶対的ともいえる力を持っています。負のインフラとしての医療において上限のある医療資源を上手に活用する際に、無駄を省きながら疾患の治療に最大限の効果を求めるためには、効率的な治療を系統だって周知させることが必要なわけで、ガイドラインを活用することは当然のことであると理解します。認定医などの試験においては、その知識の網羅が重要性を増していることにもまったく異論は出ないことと思います。また、ガイドラインに治療法や医薬品が掲載されるということ

      • 医療における各省庁の思惑(2024年度保険改定の裏側)

        初めに 2024年度の診療報酬改定については、本体は0.88%のプラス改定といわれながら、物価上昇率を考えればがっかりしている施設管理者が多いと思います。そこにはさまざまな事情があるわけで、どんな場合においても自分たちの要求がすべて通るわけではないのは世の常です。ただ、その事情というものは理解しておく必要があるのではないかと思っています。  今回は、医療に主にかかわっている四つの省庁(財務省、経済産業省、文部科学省、そしてもちろん厚生労働省)についてお話をします。それぞれにつ

        • 医療業界:コントロールされる集団的意思

          初めに 医療従事者というものは、基本的に自己犠牲の意識の高い人が多いように思います。一人一人の行動は、目の前の患者を助けるために行われ、人によっては給料とまったく見合わない労働量であったとしても、その達成感などから、たとえ常軌を逸した環境のなかであったとしても、本人達は意外に満足して生活を送っていたりします。ナルシズムとまではいかないにしても、単純に自身の英雄的行動に知らぬ間に満足しているような事態、最低でも日々の生活で積もっていく不満を解消する手段となっているような状況に

        前WHOアジア事務局長、葛西先生を思う: ポストコロナの世界で

          PFS: フィナステリド治療への注意

          フィナステリドとは フィナステリドとは、5α還元酵素阻害剤といわれる種類の薬剤で、欧米では以前から前立腺肥大症の治療薬として用いられていた薬剤です。いきなり余談ですが、2000年ごろに日本においても前立腺肥大症治療薬としての治験が行われました。効果ははっきりしているものですので、治験の結果は当然良好のはずで、某製薬会社は治験結果の発表を待たずに発売記念パーティーまで準備して、承認前に医師にバンバン宣伝していたのを覚えています。ところが、この治験がみごとにこけてしまって、この製

          PFS: フィナステリド治療への注意

          FLOXED: 日本ではあまり語られていないニューキノロン系抗菌薬の最近のお話し

          初めに ニューキノロン系(海外ではフルオロキノロン系)と呼ばれる抗菌薬は、現在臨床で多数使用されています。この系統の薬剤は1980-1990年の間に12種類も発表され、うち9剤は日本企業が開発したという、ある意味誇らしい系統の抗菌薬となります。たとえば泌尿器科領域においてはレボフロキサシンを筆頭にニューキノロン系は非常によく処方される傾向にあります。ただ、この系統のお薬がでて30年以上経過し、欧米を中心にニューキノロン系抗菌薬の副作用について厳しい意見が徐々に増えてきていま

          FLOXED: 日本ではあまり語られていないニューキノロン系抗菌薬の最近のお話し

          まだらの認知症のために壊れる家族関係 ケアマネとの付き合い方

          初めに  ここでお書きするのは、まだらな認知症のある家族の介護に誠実に向かい合うかたでも遭遇してしまう悲劇的な状況です。大切なご家族を手放さなくてはいけなくなるまえに、誰にでもおこりうる事例であることを覚えておいてください。 前書き 昨今ご年齢の高い方とはいえ、以前に比べればとてつもなくお元気です。当然、少々体調に問題があっても自宅で生活をすることを望む方がふえてきます。  核家族化が進んでいる状況ですから、ご家族とは離れ、ご高齢の方だけで暮らしていることも少なくありま

          まだらの認知症のために壊れる家族関係 ケアマネとの付き合い方