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vol.4『日本でジョブ型雇用が必要だと言われる理由』

■今週の課題図書

『日本的ジョブ型雇用』/湯元健治著

■『日本的ジョブ型雇用』を読んでの学び・感想

「ジョブ型雇用」と一口に言っても、いま世間一般で言われているものは欧米の雇用環境や慣習があってそれに適合した結果としてのジョブ型雇用であり、それをすぐに導入できるかというとそうではなく、日本には日本の文化に合った働き方を模索する必要があるのだと理解した。
ただ、大枠としての「ジョブ型雇用」というものが日本の企業の現状を考えると、今後より良い方向に向かう手段になり得るのだということもわかった。少なくとも、終身雇用や年功序列という過去には機能していた雇用システムは変わるべくして、いま変わろうとしている。少なくともバブル経済後に言われた「ジャパンアズナンバーワン」の時代は終わりを迎えつつあり、過去の成功体験に囚われててはいけないんだなと切に感じました。

著書を読んで

■はじめに

近年、「終身雇用は終わった」とかいう言葉をよく聞く。

その言葉を聞くと、なんかヤバいんだろうなとは思うものの果たしてそれがどうやばいかとかよくわからない、そんな風に思う人は自分だけじゃないはと思うんです。

また、HR界隈にいると、

「これからはジョブ型だ!ジョブ型雇用が日本の雇用をすべてを解決する!」

みたいな論調も見かけたりしますね。
なんか良いことなのだろうだと思いながら、本当のところよくわかっていない。

というわけで、今回はその「ジョブ型雇用」についてきちんと知る機会にしたいと思います。

■今回の問い

「ジョブ型雇用」とは一体何で、またそれを導入すべき背景は何なのか?

問い

ジョブ型雇用が良いか・悪いか、導入すべきか・そうでないかなどの議論の前に、「ジョブ型雇用」とは何かを正しく理解し、それが検討されてる背景を学ぶというのを今回の一旦の目的にしたいと思います。

■「ジョブ型雇用」の定義

まずは早速、ジョブ型雇用と何か?という点。
著書によると、

「ジョブ型雇用」とは・・・

「組織に必要な職務を明確化し、個々の職務に対してヒトを採用・配置していく人事管理の手法」であり、「ヒト基準のメンバーシップ型の対極を成す仕事基準の雇用システム」

と書いてありました。

まず疑問。「職務」ってなんですかね?
「業務」と何が違うのか。ちょっと調べてみました。

「職務」とは「業務」を細分化し、個々の従業員が担当している業務・役割を指し、「業務」とは企業の「事業」を細分化したもので、その事業に携わる部署・事業部などが全体で取り組んでいる仕事になるよう。

なので、「事業」→「業務」→「職務」という順に細分化されていきます。

例えば、食品メーカーに当てはめて考えると、「製造・加工業」といったものが「事業内容」にあたる。

このうち、「製造・加工業」を担うのが「生産・開発事業部」である場合は、「食品の製造・加工・開発」が「業務内容」になります。

さらに、「業務内容」の中で商品開発を行っていた労働者の場合、「職務内容」は「商品開発」ということになります。

つまり、ジョブ型雇用は、「業務内容」をさらに細分化した「職務内容」を明文化し、その個々の職務に応じて労働者を採用・配置していく人事管理の方法というもの。

一見なんか普通のことのように感じますが、これまでの日本企業ではこのような運用は一般的にはしてこなかったのです。これまでの日本企業は、「メンバーシップ型」雇用という、終身雇用を前提に総合職として採用し、配置転換しながら経験を積ませるかたちが一般的でした。

まとめると、ジョブ型雇用への移行というと、「労働者にあわせて職務を割り当てる」という運用から「事業として必要な職務にヒトを割り当てる」という運用に切り替えましょうことを指します。簡単に言うと、職務内容ごとにその職務が得意な人にその職務だけを任せて、職務ごとに賃金や評価制度は決めていきましょう、ということですかね。

■日本におけるジョブ型雇用の現状

では、実際ジョブ型雇用はどれほど導入されているのか。

2020年のパーソル総合研究所の調査によると、18.0%がすでに導入済み、39.6%が今後導入予定と、60%近い企業がポジティブな捉え方をしており、今後も導入がより進んでいきそうな気配を感じます。
個人的には、想像以上に前向きに捉えている企業が多いなという印象でした。

■ジョブ型雇用を導入することの企業のメリット

では、ジョブ型雇用を導入することによって、企業はどういったメリットがあるのか。主には以下のような5つのメリットがあるよう。

メリット①
特定分野の特定技術・スキルを持ったプロ人材を採用しやすくなる
→ 例えば、エンジニアなどの特定ハイスキル人材を年齢に関わりなく、成果に応じて高額な報酬を提供することが可能になる

メリット②
グローバルな人事制度を統一できる
→ 世界に展開をしている企業からすると、すでにジョブ型が主流な欧米企業と同じ制度にしないと、有能な外国人人材も獲得できないし、グローバルな人材交流もできない

メリット③
多様な人材の活躍を促進する
→  ジョブ型を導入し、働く場所や労働時間にとらわれない仕組みにすることで、例えば子育てや介護しながら働く人材を有効活用できる

メリット④
イノベーションや生産性の向上
→ ジョブ型にすることで、特定分野の専門人材が集まるので、新しい発想やイノベーションが生まれやすくなる。

メリット⑤
人件費の抑制
→ 年功序列賃金ではなく、有能で成果を発揮する人材に高い処遇を与えることができるので、結果的に人件費の効率化につながる

■ジョブ型雇用の導入を検討する背景

そこまで導入に前向きであるということは、企業がジョブ型雇用を導入しようと思う背景とは裏返しに抱えている問題があるはずですよね。
著書によると、昨今の日本企業は以下のような直面する環境変化があるようです。

・経済の低成長の状態化
・グローバル化の急速な進展
・流れが早く先行きが読めない時代環境
・社会や個人の価値観の多様化
・構造的な労働力不足と欲しい人材が獲得できない人材のアンマッチ

日本企業が直面する環境変化

また、こういった環境変化に伴って、さまざまな問題が顕在化している。
例えば下記のような課題が発生しています。

・上がり続ける総額人件費
・成果と報酬、処遇の不一致
・人材の多様性確保の困難
・戦略的人材獲得の困難
・難航するグローバル人事ガバナンス

日本企業に顕在化している人事課題

このように、日本企業の人事課題はすでに多く顕在化していて、その結果、これまでの「メンバーシップ型雇用だと限界じゃね?」となってるのが日本企業の現状という感じ。

■日本におけるジョブ型雇用の課題

このように、じわじわと広がりつつあるジョブ型雇用ですが、多くの企業に浸透していくにはまだ課題はあるといいます。

例えば、日本には職種別賃金水準を把握するインフラが整っていないとか、ジョブ型雇用と相性が良い職務等級制度を取り入れている日本企業は2割程度しかなく、評価制度から抜本的に変更する必要性があるといったことなどがあり、即座に「ジョブ型やりましょう!」とはなれないのが実情。

著書では、ここからより日本版にローカライズされた「日本的ジョブ型雇用」を導入してはどうか、という提案をベースに話が進んでいきます。詳細の中身を知りたい方はぜひ読んでみてください。

■まとめ

「ジョブ型雇用」は、今後の日本や日本企業の状況を踏まえると、導入するメリットは大いにありそうであることがわかりました。また、まだ課題もありつつも過半数の企業は導入に前向きであり、日本独自の働き方がこれから少しずつ醸成されていくのだろうという期待感を持つことができました。

欧米企業も30年前は終身雇用がベーシックだと聞いたことがありますし、欧米的な働き方の方向に変化していくことが想定されますが、日本の文化や慣習と相まってどのように独自の働き方へと昇華されていくか引き続き注視していきたいですね。

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