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「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな) 読書感想文

「違うこと」をしないこと(著:吉本ばなな、KADOKAWA、2018)



違和感を信用する。常識を疑う。直感を大切にする。自分に正直に生きる。流れに対して自然でいる。

人の顔色を伺う癖がばななさんは強いんだなと、それと危機感を察知する処世術がすごい。
そういう人って敏感すぎて人生に疲れちゃう気がするんだけどばななさんの場合は人を観察するのが好きで嫉妬したり感情的になることがなかった。
あとはじめから作家になろうと決めたから迷うことがなかった。そこが僕との大きな違い。
でもどんな人にも気配を、人間の本質を一瞬でズバリと見抜く力はもともとあると思うとばななさんは言います。

どんな人も、本来のその人を生きていくのが本当は一番自然で、ちょっとでもズレるとそれが反映されるし、ぴたりと一致すれば、それも反映される。もともと、そういうふうにこの宇宙のシステムができている。恐ろしいほど正確なその仕組みこそが、きっと、愛というものなのでしょう。


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対談吉本ばなな+白井剛史(プリミ恥部)より

私は、八〇年代、九〇年代には、小説を通して、忙しく働いて働いて疲れ果てた女の人たちを癒したかったんです。でも今って、もっと変な感じ。みな疲れすぎて自分っていうものにさえたどりつけなくなっているんじゃないかって。何かを始めようと思っても、自分が何を好きかということさえわからなくなってるし、自分がないから、疲れているかどうかさえ感じられない。このままだとどうなっちゃうんだろうって、ちょっと心配になります。
吉本ばなな

ぼくから見ると、初期設定があいまいな人が多いんだと思います。(略)宇宙はコンピュータになっているので、初期入力、初期設定がすごく大事なんです。逆に言うと、自分の設定さえハッキリ入力して宇宙のコンピュータを起動できれば、現実は自分のビジョン通りに、何もしなくても、必要なことが起きて動き出します。
白井剛史(プリミ恥部)

人間に関しても同じですが、病気になったら、ありったけの、全身全霊の愛を相手に送り続ければいいだけだと思います。
白井剛史

誰にでも潮目が変わる時があって、それに気づくのって、だいたい悪いことが起きている時ですよね。自分が安定していると思っている状態だと、なかなか目を開きにくいから。ショックなこととかつらいことっていうのは、すごく大きいチャンスでもある。(略)地震のような大きな天災もそうだし、あるいは転勤のようなよくあるきっかけでもいいけど、自分がそれまでと変わった状況になった時に「あれ? 今まで何やってたんだろう」って気づくのって、とても大事だと思う。まず気づこうって意志を持ったところから、何かが始まるような気がします。起こる出来事も変わってきますしね。
吉本ばなな

変えたくなったら、初期設定はいつでも変えられる。ぼくが言ってる初期設定って、PCやスマホと同じなので、自覚してプログラミングを書き換えてアップデートさえすれば、ちゃんと宇宙と連動するようになる。設定をちょっと変えたり増やしたりするだけで、たとえば、「を」を「に」に変えただけで、本当に現実が変わってくるので。試しにやってみて、現実を観察すれば感じられてくると思います。
白井剛史

要するに「一日ぐらいこうなったら小説のネタとして面白いだろうな」ということではないんですよね、きっと。もっと魂の底から好きで切実にこうなりたいってことじゃないと、設定にはなりえない。
吉本ばなな

「なんで私って、いつもタイミング悪いのかな」って言う人、いるでしょ。「おなか減ってない時、食事に誘われるし」とか「お金がある時には、みんな、おごってくれるんだけど、お金がない時におごってもらえない」みたいな話を聞いた時に、それこそ設定を変えるには、何がその人をズラしてるのかに気づく必要がある。アドバイスを求められなければ、私もいちいち言いませんけど、そういう人に「あの時、食べたくないのにカレー食べたでしょ」って言うと「え、そんなこと?」とか言われる。けど、そんなことだったりするんですよ。「食べたくないけど、あとの五人はみんなカレーか。悪いかな、一人だけ、オムライス頼んだら」みたいなことが、その人をズラしたりしているんです、意外にね。
吉本ばなな


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ばななさんは本があまりに売れすぎて地獄を生きているかのようだったそうです。ブームになってしまい、電話は一日中鳴りっぱなし。入ってくる大金はばら撒くように使って日々精神的にギリギリで生きていたそうです。「あの売れ方はおかしい、と今でも思っています」と言うぐらい。若くして成功して隠居生活を送る人生設計だったらお金を使うこともなかったはずですが、ばななさんは自分が本当に書きたいものをどんどん書き続けていきたい人だったから、それはできなかった。でもすごい地獄を見てきたから得たものもたしかにあった。人のことがよりよくわかるようになったのです。

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対談 吉本ばなな+CHIE より

うまくいく時って、絶対、力が抜けているんですよ。
(略)
修行すると、最初にぐーっと力が入って、もうどうすることもできないってなった瞬間に、ポーンって力が抜ける。抜く状態になることが本当が大事で、抜くから、何かが入ってくるんだと思います。
CHIE

上の世代は「未来に生きる」、未来を良くするために今を頑張る。でも今の子は「今に生きる」。今しか見えないのかも。
(略)
次の世代は「過去を生きる」のかなって。「オタクでした」ってアイドルの子とか多くなってるし、過去の自分に誇りを持って、今、頑張るみたいな考え方になるんじゃないかなって。
CHIE

「自分らしさ」みたいなことを追求してるつもりが、それってただの刷り込みだから、別に自分らしいわけじゃなかったりする。
CHIE

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最後に印象に残ったばななさんの言葉を。

やりたい道を究めていくうちに「これ要らない」「これも要らない」って自然と取捨選択ができるようになる。そういう生き方もありなんです。
(略)
人は好きに生きていいんです。
そこからすべてがはじまる。それをどうか忘れないで。
(略)
あれもこれもというけれど、それって本当にしたいことなのか。欲しいと思って買ったはずのものが、すぐにどうでもよくなっちゃうのはなぜか。なんとなく膨れ上がった欲望を、本当に要るもの、本当は要らないもの、一度ひとつひとつ棚卸ししてみるといい。

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