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徒然なるままに、その日を暮らしてただ茫然と、紙とペンに向かいておのずと浮かぶ心象をそのままにあそばせていれば、狂おしいほどに物語の世界は膨らんでゆくものだなぁ……

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  • eternal snow -雪の女王-

    本編をいろいろと変更した雪の女王

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    the side story of Galaxy train.

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Eternal Snow -雪の女王- ⑫

   11. 春の足音  ハルとスノウは玉座の間を去り、お城の外に出てみると、あれほどすさまじく吹きすさんでいた吹雪はすっかりおさまり、空は晴れわたって雲ひとつなく、うららかな日ざしがふりそそいでいました。  冬の国のお城と町をおおいつくしていた雪や氷は少しずつとけはじめ、さらさらとながれるちいさなせせらぎとなって、いたるところに水の通り道をつくっていました。  雪の女王の魔法が消え去ったため、凍りついていた人たちが目をさまし、城下町の往来はにぎやかな人出となっていました。

    • Eternal Snow -雪の女王- ⑪

         10. 鏡のなかの世界  鏡のなかに入りこんだハルは、そこで目にした光景におどろきました。  それもそのはず、じぶんが立っているその場所は、ハルとスノウが住んでいる町のなかだったからです。目の前にはじぶんの家とスノウの家がならぶように建っていました。ただ、そのまわりの風景は、いつも見慣れている町なみとはだいぶちがうような気がします。あきらかに建物の数が少なく、みわたすかぎり一面にのどかな麦畑がひろがっていました。  ハルはスノウをさがして家のなかやちかくの畑をしらべて

      • Eternal Snow -雪の女王- ⑩

           9 . 冬の国  冬の国に近づくにつれて、それまでおだやかだった天候はみるみるうちにくずれはじめ、もうれつな風雪が吹きすさぶようになっていました。  はげしい吹雪のなか、走りつづけていた馬の体力もそろそろ限界に近づいていました。冬の国まであとすこしというところで馬は立ち止まってしまい、そのまま動かなくなってしまったのです。ハルと娘は馬から降りると、それからさきは徒歩で進むことにしました。  風と雪の嵐は容赦なくハルたちをおそいました。それからまもなく冬の国の城下町にた

        • Eternal Snow -雪の女王- ⑨

             8.  山賊の娘  まだ日がのぼりきらないうちに目をさましたハルは、急いで出発の準備をととのえました。城内からもさまざまな準備に追われている騒々しい音がきこえてきます。外にはりっぱな二頭立ての馬車が用意され、おおぜいの兵士や使用人たちがハルの出発を見送るためにならんでいました。  しばらくすると王さまもやってきて、旅立つハルにことばをかけました。 「くれぐれもむりはせぬようにな。ぶじもどってきてくれることを祈っておるぞ。そのときは、国じゅうをあげてそなたを出迎えよう」

        Eternal Snow -雪の女王- ⑫

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        • eternal snow -雪の女王-
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        記事

          Eternal Snow -雪の女王- ⑧

             7.  「春の国」という名称から、あたたかい日差しにつつまれ、色あざやかな草花や豊かな木立にかこまれた明るい国を想像していたハルでしたが、いざ到着したその国の町なみは、そのイメージとはそぐわないものでした。  空はどんよりとくもって太陽の光はさしこまず、町のなかは他の土地と同様、まっしろな雪におおわれていたのです。ここがほんとうに春の国なのかしら、とハルがおもったのは、むりもないことでしょう。  馬車は城下町のなかをまっすぐ駆けぬけると、まもなくお城がみえてきました。

          Eternal Snow -雪の女王- ⑧

          Eternal Snow -雪の女王- ⑦

             6. ふしぎな力と動物たち  その日は天候にもめぐまれ、冬の国をめざす旅路は順調でした。  とはいえ、あいかわらず雪は深く積もっていましたし、空気は突き刺さるほどつめたいはずでしたが、ふしぎなことにハルはあまり寒さを感じませんでした。それどころか、歩くたびにからだはぽかぽかとあたたかくなり、ついには上着を一枚ぬいだほどです。  さらに、ふしぎなできごとはそれだけではありませんでした。さきほどから、どこからともなくひそひそとささやくような声がきこえてくるのです。  ハル

          Eternal Snow -雪の女王- ⑦

          Eternal Snow -雪の女王- ⑥

             5. 魔法使いの家  目をさますと、ハルはあたたかいベッドのなかにいました。  ゆっくりと起き上がり、あたりを見まわしてみると、そこは古い民家の一室のようでした。部屋のなかにはちいさなテーブルとイスが一脚ずつ、それからすこし離れたところでは暖炉の赤い火がぱちぱちと音を立てながらもえていました。  ちょうどそのとき部屋のとびらが開いて、ひとりのおばあさんがパンとスープのお皿をのせたトレイをはこびながらなかに入ってきました。  おばあさんはその食べ物がのせてあるトレイをテ

          Eternal Snow -雪の女王- ⑥

          Eternal Snow -雪の女王- ⑤

             4. 追跡  真夜中、まだ夜もこれから深まろうかという刻限に、ハルは奇妙な胸さわぎがして目をさましました。部屋のなかはまっくらで、家の外からはげしい風の音だけがきこえてきます。  ですが、その風の音にまじって、馬車がものすごいスピードで駆け去ってゆく音がきこえたような気がしました。  窓辺に寄って外のようすをながめてみても、吹きつける風と雪のため視界がわるく、ほとんどなにも見分けることができません。しかしよく目をこらしてみると、となりの家のとびらが開けっ放しになってい

          Eternal Snow -雪の女王- ⑤

          Eternal Snow -雪の女王- ④

             3. 雪の女王  ――ふと、だれかがじぶんのなまえをよんでいるような気がして、スノウは目をさましました。  部屋のなかはまっくらで、スノウはじぶんのベッドの上に起き上がっていました。外はあいかわらず吹雪いているようで、窓ガラスがしきりとガタガタふるえています。  でもたしかに、スノウはだれかによばれたような気がして耳をすましていると、やっぱりどこからともなくじぶんのなまえをよぶ、うるわしい女の人の声がきこえてくるのでした。  しかしその声は遠くかすかに、ささやくように

          Eternal Snow -雪の女王- ④

          Eternal Snow -雪の女王- ③

             2. 冬の季節と子どもたち  それから月日はながれ、ながい冬の季節が到来しました。  木枯らしはきびしい寒波へとかわり、ふきすさぶ風雪が町全体を白銀の世界にとじこめてしまいました。  それでも、町にすむ子どもたちが元気なことにはかわりありません。着ぶくれてダルマのようになった子どもたちは、深く降り積もった雪のなかへとびこんだり、大きな雪玉をこしらえて友だちとぶつけあったりしてあそんでいます。  その年の冬は予想以上に長く、もうそろそろ春の足音がきこえてくるかというよう

          Eternal Snow -雪の女王- ③

          Eternal Snow -雪の女王- ②

             1. ハルとスノウ  秋の季節もおわりにさしかかり、もうそろそろ冬の足音がきこえてこようかという時期になっていました。  街中の路面には、あかね色や黄金色に染まった落ち葉がすき間もないほど敷きつめられ、ときおり強く吹く木枯らしがカサカサという音とともにどこかへと運んでゆくようすがみられます。  そんな秋晴れの早朝、一軒の家からカバンをせおった十歳ぐらいの女の子が出てくると、すぐさまとなりの家のとびらをノックし、それから壁を背にしてもたれかかりながらまっていました。  

          Eternal Snow -雪の女王- ②

          Eternal Snow -雪の女王-

            はじめに  この作品はH.C.アンデルセンの作品『雪の女王』を独自の解釈でアレンジしたものとなります。  基本的なストーリーの流れは原作とほぼおなじですが、登場人物の名称や設定および世界観などにはかなりの変更が加えられています。  ご理解のうえ閲覧のほどおねがいいたします。   序章 - 悪魔と鏡 -  このおはなしは、性悪な魔法使いの悪魔がおもいついた、あるイタズラから引き起こされたものがたりです。  いまもむかしも、はるか天上の世界には大勢の神さまや天使たちが

          Eternal Snow -雪の女王-

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑪

           第十一章 夢のゆくえ  それからじつに七年の歳月が、大地を吹きわたる風のように過ぎ去ってゆきました。  兄妹は汽車のなかにいました。かねて交わしたやくそくを果たし、タルカとエマは汽車に乗って、各地をめぐる旅をしていたのです。  鉄道会社につとめていたタルカはもうすっかり一人前になり、汽車の整備や運転、乗客の管理など、ほとんどの業務をこなせるようになっていました。  そんなある日、タルカのことをいつも気にかけてくれていた会社の社長さんが、毎日まじめにはたらくのもわるいことで

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑪

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑩

           第十章 はじまりとおわりの駅  旅の終わりが少しずつ近づいていることは、汽車に乗っている三人にもわかっていました。  車窓からみえる夜の空気は澄みきっていて、チカチカとまたたく星屑の光はダイヤモンドのかけらのようでした。  最後の停車場に着くまでのあいだ、三人はそれぞれ気のむくままおしゃべりをしたり、外の風景をぼんやりとながめていたりして時間を過ごしていましたが、そうしてるあいだにも、刻々とさみしさは募ってきます。いっそのこと、このままどこへもたどり着かずに、三人で汽車に

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑩

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑨

           第九章 鉱山の町  暗闇の底から脱け出すことができた汽車は、ネズミたちの案内のもと、彼らがはたらいていた鉱山の町をめざして進路をとりました。  ふしぎなことに、汽車はもうタルカが操作しなくとも、ひとりでに進路を定めて走ってくれました。おかげでタルカとジョバンナも安心して、しばらくゆっくりと休むことができました。  汽車はなだらかな平地をしばらく走りつづけ、何度かトンネルらしき暗闇を通り抜けると、やがてその鉱山らしき高くそびえる山がみえてきました。そのふもとには、にぎやかな

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑨

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑧

           第八章 汽車の墓場  ――タルカは夢をみていました。  ずっと以前、まだ幼かったころの忘れかけていた思い出の一片です。  母はよく、タルカをつれて近くの自然あふれる林のなかへあそびに行きました。そこでカエデやポプラの落ち葉をひろったり、虫をとったり、木の実をあつめたりした記憶があります。母はそのころからもうあまり体調がすぐれなかったため、しばらくそのあたりを散歩しては休み、散歩しては休みをくりかえしていました。  そして太陽が傾きはじめる刻限には家に帰り、あそびまわって疲

          夢のゆくえ -銀河鉄道の夜- ⑧