サウナの世界が最高商品で溢れつつある、次の打ち手

2019年7月に放送されたドラマ「サ道」がきっかけか、ちょっと前までは閑散としていたサウナも人で溢れかえることが多くなりました。

池袋「かるまる」などの大型施設も新規オープン。錦糸町の黄金湯や浅草の湯どんぶり栄湯をはじめてとして、特にサウナや水風呂に力を入れて大幅リニューアルする施設も増えてきています。

湯どんぶり栄湯は、元々浴室内にあった水風呂を露天エリアに移行した。シュワシュワ感溢れる絶妙なバイブラがたまらない。

サウナ・水風呂を新設した黄金湯。遠赤外線の効果の高い麦飯石を壁に埋め込んだオートロウリュサウナは、湿度、輻射熱ともに申し分なく秀逸の一言。

こうした改修やサービスの提供に至るまで、知られざる苦難があったのだと思います。一顧客として感謝を申し上げつつ、筆を次に進めます。

顧客にウケるサウナの型が決まってきた

新規増設、リニューアルの流れの中で感じるのは、どこも注力しているポイントは似ているということです。それは、客にウケるサウナの型が決まってきたということの裏返しであるのではないでしょうか。

ウケるサウナの型とは何か?ざっくり大まかに分類すると次のようになると思われます。

・中温 中湿 無音の瞑想に向いた本場フィンランドを意識したサウナ室
・オートorセルフでのロウリュを導入した高温 高湿のサウナ室
 - サウナ室の上記のどちらかに振り切る。もしくは2つ造る。
・地下水、井戸水などの天然水を使った水風呂
・チラーを導入して水温を16度以下にした水風呂
・それに加え、余裕があれば22度〜25度の2つめの水風呂を設置
 - 20度帯の水風呂も長く浸かっていられて気持ちいい。
・寝そべりチェアなどを導入した露天休憩スペースの設置
 - 足の高さをいかに頭に近い位置にもってこれるかが肝。

細かな点は他にも多々ありますが、サウナに力を入れた温浴施設の改修は上記の方向に集約されつつあります。

特に「水風呂を冷やす」という傾向は強いです。

水風呂の冷却装置であるチラーの導入コストが結構かかるので、氷を水風呂に入れて冷やすというイベントも見かけるようになりました。

新宿区役所前カプセルホテルでは「ゼロヒャク」と称して、氷塊を大量投入するイベントを実施しています。サウナセンターも大泉時代は氷塊を投入したシングルチャレンジを行っていました。

余談ではありますが、井戸水や地下水を水風呂に使っているのにそれを表に出さない施設が割とあるので、もっと強く押し出してよきポイントだと思ってます。

サウナ業界全体のクオリティ底上げが凄まじい

こうした流れを見ると、徐々に最高商品のサウナが溢れかえる未来が想像できます。サウナ施設が同質化していくのではないか、ということも頭がよぎります。

ですが、厳密にいうとこれはありえません。水質の微妙な違い、浴室や浴槽のデザイン、客層、紡いできた歴史、そこで働くスタッフの方達、雰囲気、一つとして同じ施設が他にあることはありえません。愛でるポイントはたくさんあります。

そんな中で事実として言えるのが、「体験」としては、どこのサウナも似たようなものになってきたということです。

サウナで限界まで身体の芯まで熱し、キンキンの水風呂に入って、露天で風を感じながら休憩する。

どこの施設でも、高いレベルの体験ができるようになったことをありがたく思いつつ、それに最適化されるようにサウナ施設の型が出来上がってきています。

その先に、何がおこるかというと、自宅や職場から「近い」サウナにしか通わなくなります。

私自身、飲める天然水風呂でおなじみの静岡のしきじにはよく通っていましたが、ジートピアが「ふなっ水」を掘り当ててからはめっきり船橋に足を運ぶようになりました。 

私のように、毎週どこかのサウナに遠征しているのが稀かもしれません。そもそも、地元の常連さんだけに利用してもらうことを前提としたところもあります。

感染症の情勢から、移動の少ない近いサウナに通うのは、消費者目線ではある意味正解なのかもしれません。というかそれが普通なのかもしれません。しかし、施設経営者から見ると、大型融資を受けてまで改修費用かけてグレートアップをしたのだから、なるべく多くの良い顧客に来てもらいたいはず。そこで、地元の外から顧客を呼ぶことになってくることが重要になってきます。キーワードになってくるのは逆説的ですが「ローカライズ」だと考えてます。

地元ならではブランディングで外の客を呼び込む

池袋「かるまる」や熊本「湯らっくす」、所沢「ベッド&スパ」などのコンサルティングするサウナ王の太田氏は、日本一、日本初、地域一といったもの仕込み、それらを武器に全国から集客する方法を得意としています。

普通の施設では、日本一や日本初などは難しいかもしれませんが、地域一をつくることは意外とできるのではないでしょうか。所沢ベッド&スパも当初は埼玉一冷たい水風呂を謳っていました。

その施設やその土地でしか体験できないことをきっちり編集し、PRしていくこと。その一連をここではローカライズと呼ぶことにします。

先にも上げた船橋 ジートピアの「ふなっ水」は好例だと思います。とある事情で、従来使っていた井戸とは違う井戸を掘ることになった結果、飲める天然水を掘り当ててしまったジートピアは、その天然水の名前をTwitterで公募しました。その結果、「ふなっ水」という船橋の水であることをPRできる名前に決まり、船橋ならではの魅力発信にも繋がっています。

錦糸町 黄金湯では、オリジナルのクラフトビール「黄金湯ビール」を販売しています。上野 北欧のカレーライスや、サウナセンターの燻製カレー、ベッド&スパの男気シリーズなど、「サ飯」も独自のコンテンツ足り得るものです。

東中野の松本湯のテントサウナイベントもローカライズの好例。松本湯自体はビル銭湯ですが、持ちビルであるということを生かして、屋上でテントサウナイベントを定期開催しています。屋上から眺める新宿の夜景もこの土地ならではの魅力となっています。

まだまだ銭湯やサウナには、多大な可能性が眠っていると思います。感染症の逆境もありますが、その施設ならではの魅力は発掘して編集して、愚直に発信していけば、必ず誰かが見つけてくれます。明るいサウナ業界の未来が来ると信じています。

コンテンツ開発やPRプランニングなど何か私の得意なことでお力になれそうなことがありましたらお気軽にご連絡ください。

問合せ先: 
loyly.info@gmail.com
https://twitter.com/loyly_magazine



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