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恐怖のトラウマカレーパン

30年生きてきて最も大層なケガは右足の火傷だ。傷は一生もの。それが多分僕の中で最も古い記憶だと思う。確かまだ幼稚園の頃。何度も病院に通ったのを鮮明に覚えている。

そして去年29歳での出来事。

その時僕は新しく買ったホットサンドメーカーで優雅な朝を過ごす日々を送ってた。日替わりで具を変え、コーヒーと共にラヴィットを観ながら食べる。いい朝じゃないか。

そんなある日、賞味期限が間も無く切れてしまう食パンを食べ切る為にその日は夜ご飯もホットサンドにした。具は昨晩の残りのキーマカレー。バターを塗った食パンにキーマカレーを乗せて、おまけにチーズもトッピング。さらに食パンで蓋をしてホットサンドメーカーを閉める。

4分後。。。

こんがり出来上がったカレーパン。ホットサンドの醍醐味は断面だと思うが、中身がカレーとなると話は変わってくる。切ればカレーがマグマの如く流れ出てしまうからに他ならない。“切らずにそのままいただきまーす。”しかしこれが運の尽きだった。

「熱ッっ…!」

パンの隙間から本当にマグマでも流れてきたんかと思った。パンをお皿に放り投げ、急いでティッシュで顎に垂れたマグマ(カレー)を拭き取る。ところが拭き取っても拭き取っても何故だかいつまでも拭き取れる。明らかにおかしい。洗面台に行き鏡でマグマが垂れた部分を確認すると、、、

「え、、、?」

顎の皮がベロっと剥げている。いつまでも拭き取れていたそれは顎の皮だった。鏡越しにそれを知った瞬間は火傷による痛みとか、傷口への驚きよりも「カレーやぞ?」というカレーに傷を負わされたという惨めさが強かった。もし、この傷口が右足の火傷みたいに傷跡になったら?傷口を指摘されるたびに「昔カレーパンにやられました」というアホみたいな話を一生しないといけない。最悪。とりあえずその晩は家にあるもので応急処置をして眠りについたが「跡にならないでくれ跡にならないでくれ、、、」とずっと頭の中でループしていた。

翌日、朝イチでちょいちょいお世話になっている皮膚科に行き診てもらった。『あー、結構やっちゃってるね。どうしたの?美容師さんだったよね?ヘアアイロンでも当てちゃった?』

「いえ、昨晩カレーパンに、、、」

あーダサい。なんてくだらない理由だ。説明をしている自分でもコイツは何を言ってるんだと自分に対して思う。そこに更に追い討ち、消毒やガーゼを貼ったりと処置をしてくれた女性が『ホットサンドって熱いですよね!分かります!チーズとかも危険ですよ!』。や、やめてくれ!恥ずかしさと惨めさが増すじゃないか。そうさチーズも入れてたよ。頼む、この火傷の原因にはもう触れないでくれ。

なんだこれは?幼少期の大火傷という最も古い記憶の第二章か何かかこれは。何なら右足の火傷は普段見えない場所だから言わなきゃ分からないが今回は顎。話が違う。

幸いにもコロナのマスク生活のおかげで傷口を隠しながら仕事はできた。そして皮膚科でもらった塗り薬のおかげか傷口は跡にはならなかった。なんとか「この傷?これは昔カレーパンで、、、」というカッコ悪い話を生涯せずに済んだ。

ちなみに幼少期の火傷の原因は花火。今回はカレーパン。花火を見るたびに右足の記憶が蘇ってくるのに加えて、カレーパンというトラウマが増えた。

そういえばそれからホットサンドメーカー使ってないな。久しぶりに使ってやるか。具はハムとタマゴでお願いいたします。

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