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南米回想#2【チロエ島の家が示す、環境の支配力】

 環境は形を支配しているとたまに思う。地理的にすごく離れた場所にあっても、環境がに似ていれば建造物の構造も自然と類似することがある。生態学では、この現象を収斂進化と呼ぶ。例えば、サメとイルカは系統学的にはすごく離れているけれど、その形は良く似ている。それはサメとイルカの生息環境、あるいは生態的地という環境が類似しているから。南米・チリのチロエ島で見た家々の壁面はウロコ状をしている。どこかで見たような。

 目下、家のウロコ張りに夢中な大工に話しかけてみた。

 「チロエ島は雨が多いから、こうやって板を張ってるんだ。劣化すればまた張り替えられる」と得意気。そういえばこの街について初めて話した人物だったタクシーの運転手も「チロエ島は雨の街」と言っていた。

 ウロコ状の板は、大きさは縦15cm、横10cm程度のものが多かった気がする。形状は複数あって、ウロコの底辺が波状に仕立て上げられているものもある。複雑な形状をしているものの方が値段が高く、壁を見ただけでその家がリッチかどうかわかるのだろう。

 収斂進化的な風景は、圧倒的に離れた土地の記憶を呼び起こす。それと同時に、環境がモノの形、人の振る舞いや文化に及ぼす影響の大きさを示してくれる。だから、そういう風景を見たときには何かを発見したかのような気持ちになる。

 ウロコ家をどこかで見たと思ったら、それはムーミンの家だと思い至った。ムーミン谷の降雨量は分からない。ちなみに後日、「ムーミン 家」で検索して見たところ、特に壁はウロコ状ではなく、瓦屋根が印象的なだけだった。またどこか海外に出かけて、今度こそ本物のウロコ家を見つけたい。

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