蔵人坊

引っ越し35回の果てに南十勝に辿り着きました。スーパーの青果部長、温泉宿の支配人、林業…

蔵人坊

引っ越し35回の果てに南十勝に辿り着きました。スーパーの青果部長、温泉宿の支配人、林業作業員、漁業船員、酪農作業員、給食サービス員、市役所臨時職員、ホテル清掃主任、鳶職などなどあらゆる職種を渡り歩いて今無職。プータローです。

最近の記事

未来少年コナン

中学生の頃「未来少年コナン」というアニメがNHKで放送されていた。 私は初回を見逃したのだが、たまたま見たそのアニメにどっぷりとはまり込んだ。当時ビデオはなかった。もちろんレンタルビデオ屋もない。従ってテレビは人生で一度切りの悲劇的な出し物と私には思われた。なぜなら私はそのアニメの世界に逃げ込みたいと真剣に願うほどだったからだ。今でも神様に何か一つだけ願いを叶えてもらえるとしたら、大学生の時に好きだったあの娘と結婚するよりも、コナンと共にハイハーバーや残され島で生きることを

    • MONSTER

      あれはまだ私が3歳の時だった。吉野川に注ぐ小さな川が流れる狭い谷間に私たちの家はあった。父は建設省で働いており、ダム工事に関わっていた。そこには同じ仕事に携わる人たちの官舎があった。木造の平屋建てで、二軒長屋が狭い敷地に5軒ほど建てられていた。周りは田んぼと畑であり、用水路は土を削ったもので生き物がたくさんいた。まだ道路は舗装されておらず、車が通るたびに土埃が舞い上がった。母は次男を妊娠していた。それで私に今までのような愛情を注げなくなることを慣れさせねばならないと考えたのだ

      • 境港の思い出

        私が物心ついてから初めて父方の祖父に会ったのは五歳の時だった。父は転勤族で実家から遠く離れて私たちは暮らしていた。 家から少し離れたところの駐車場に迎えに出てくれた祖父は、私を見るなり満面の笑顔で「おお、たけしさんか。」と言った。大人から自分の名前をさん付けで呼ばれたのは生まれて初めての経験で、ものすごく嬉しかった事を鮮明に覚えているのだが、その映像を克明に記憶しているのは、その時の匂いも関係している。 祖父母は鳥取県境港市に住んでいた。境港は日本海と汽水湖である中海を結ぶ細

        • 或る地獄の一日

          赤鬼「やあ 青鬼さんおはようございます。」 青鬼「これは赤鬼さん おはようございます。今日もお元気そうで何よりです。」 赤「いやいや近頃は仕事がきつくてたまりませんよ。」 青「いや 全くです。我々鬼の数は昔から増えぬのに、来る奴は増える一方ですからね。」 赤「それにしても最近来る奴はちょっとおかしいですよ。」 青「そういえば、昨日の奴なんかまだ子供なのに人殺しの札をつけていましたからこちらが驚いてしまいました。」 赤「ええ私も最近子供が多くなったのには驚かされます

        未来少年コナン

          阿不幾

          伊勢神宮に初めて詣でたのは平成28年の正月だったから、今からおよそ8年前になる。その頃住んでいた群馬の家を夜中に出発して、明け方に伊勢に着いた。 寒い日で体は冷え切ったが、外宮の庭で大きな木の根を丸ごと焚き火にしており、その火に温められたのは印象深い思い出だ。内宮にお参りした後、せんぐう館に立ち寄った。そこで読んだのが伊勢神宮の歴史年表だ。一読して驚いた。なぜかと言うと、歴代の天皇の中で伊勢神宮に行幸した天皇は明治帝以前には持統帝と聖武帝しかいないと書かれていたからだ。(聖武

          平宗盛

                         〜平家物語より〜 1 都落ち 北国より攻めのぼっていた木曽義仲の軍勢5万余騎は、すでに比叡山の麓、東坂本に集結していた。比叡山の僧兵もこの勢に加わり、すぐさま都に攻め入る気配であるとの情報が六波羅殿(平家の屋敷)に届いたのは、寿永2年7月22日の夜半のことである。平家の人々は慌てて追手を差し向けたが、その軍勢は6千余騎でしかなかった。しかもその半数は、ほんの数日前に肥後守貞能によって連行されてきたばかりの鎮西の武者たちであった。これでは多勢に

          仏陀最後の旅

          第一章 チュンダ チュンダはマンゴーの林の中を歩いている。 木々は草原に点々とあり、小さな潅木や花々が吹き渡る風に揺れている。 チュンダは今日自分の家を訪れる尊師ゴータマの為の供物としての食料を探しているのだ。 日はまだ昇りきらず光はほのかに大地を照らしている。 修行僧たちの為の食事は昨晩より用意を整え、早朝まだ明けやらぬ頃より弟子たちが支度を始めている。 チュンダは尊師の為にこの土地の名物である珍しいキノコを探していた。尊敬するゴータマの為に、手ずからキノコを摘んで供した

          仏陀最後の旅

          屍鬼転生

          まずは800年前の話から始めよう。私は僧侶だった。当時としては珍しく戒律を守っていたので高潔な僧として評価されていた。そこに事件が起きた。天皇と幕府の争いが勃発し天皇側が敗れた。天皇側と目されていた私の寺には落武者たちが庇護を求めてやってきた。私は幕府側と交渉したが無駄だった。首を斬られ所領も没収される運命の彼等は私にせめて自分の伴侶を守って欲しいと願ったのだ。私はその願いを叶えるために奔走した。近くの大きな家を借り上げ改装して小さな部屋をいくつも作った。救出は急ぐ必要があっ

          屍鬼転生