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東京下町商店街

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下町、散歩、風情、昭和、時代、ビンテージ、東京、飲食、などの匂いがする、 仮想商店街。 ショートストーリー、エッセイ、ほか
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記事一覧

明日の風を纏う バスローブ

ケメコは、 忙しかった今日一日を、 振り返りつつ、粒子をシャワーで洗い流す。 外の世界でカラダに着いた様々な粒子、 ・あの人の顔色 ・あの瞬間の認識のズレ ・言葉にならないザワツキ 外の世界には、 様々な粒子がたくさん漂っているから、 それをシャワーで流す。 カラダに残し、纏うものと、 カラダから洗い流し、脱ぎ捨てるものに、 より分けて、 自分を 調える。 ケメコはシャワールームから出ると、 籠に用意しておいたバスローブを、 フワリと羽織った。 「 ん? 」

花火を仰ぎ見てみたい

浮世絵に描かれた昔の花火は、 想像以上に空の一番高い所にあって、 人が作り出した「仰ぎ見る光るもの」 として、 驚きと尊敬を込めて、 見上げる花火だったのでは? きっと、人々の心も、 花火と一緒に、 夜空の高い、高〜〜いところへ、 一緒に翔んで行ったのでしょう。 みんなが顔をあげ、 夜空の上の方の一点を探し、 光る同じものを見たのでしょう。 それより高いところには、 お月様とお星様しか、 いなかったことでしょう。 4年ぶりの隅田川の花火大会、 押し寄せた100万人の

穴に落ちて「シアワセ」という店を探している

自分を探していたら穴に落ちた。 ヘッドホンで、 ジェファーソン・エアプレイン聴いてたから、 穴に気づかなかったのかも知れない。 それ以来、 わたしは穴の中の街を彷徨って、 シアワセという店を探していたの。 でも、探しても、探しても、 なかなか、 シアワセという店は見つからないの。 似たような名前のお店を見つける度に、 何か手掛かりがあるかも知れないと思って、 入ってはみるの。 ある時、 「夢」というお店を見つけて入ってみたわ、 「夢」の扉を開けると、廊下があるの。

新宿の南 人びとの西

さまざまな私鉄、地下鉄、JR各線が集中する、 巨大なターミナル駅、新宿。 人々のカオスと言っても良い新宿エリアの脇、 人々の最終目的地となりにくいからなのか、 みんな見たことあるけれど通過してゆく、 急行も快速も止まらない駅。 顔は知ってるけれど、 話したことのない2件隣の住人みたいな、 近いのに、なんだか遠くにある様な、 そう言えばあったなぁ…的な感じの、 南新宿駅 カラダに例えると、 なんとなく頭が東京駅で、 新宿は肩あたりでしょうか。 肩から伸びる腕は、 そ

家族鉄道999にアナウンスが流れる 

自分の居場所を探して、 地球上空を旅する列車、 「家族鉄道999」は、 地上約9,000メートルの高さを、 マッハ2のスピードで、 ユーラシア大陸を通過していた。 列車が大陸の東に差し掛かかり、 高度を下げ、緩やかに減速を始めると、 前方のスクリーンでは、 車掌の挨拶が始まった。 その姿は、 地域による家族制度の影響がミックスされ、 性別、年齢、国籍、宗教、を織り込んだ、 まるで多様性の向こう側に住む、 宇宙人にも見えた。 車掌はこのエリアで降りる乗客に向け、 アナ

大門のガーファンクルにコンドルは飛んでゆく

水曜、予定のない午後3時、 普段なら、あまり降りない駅、 大門に降り立った、 コンドルが舞い降りるように。 まだ世間の退社時間には早いから、 この時間から開いてる店を探す。 ぐるりと360度、山の上から、 獲物を探すコンドルのように。 店先から上がる煙に、 コンドルは狙いを定めた。 焼き鳥で有名な秋田屋である。 昔から、その存在は知ってはいたが、 これまでチャンスがなかった。 「仕留めるなら、今だ!」 コンドルは翼をたたみ、 秋田屋の暖簾をくぐった。 ※ まず、中

心に溜まったクラゲを消す

もし、時間に少し余裕があるとして、 たとえば予定のない午後3時、 その時間を、 ある程度リスクなく、失敗のない消費として、 楽しむ映画 と、 その時間を、 将来、何に繋がるか分からないけれど、 少しリスクを掛け投資して観る映画 どちらも選択できますよね。 確かに、 毎日頭を使い続け、 細かい感情に対応し続けるほど、 無限の力を持つ頭じゃないなら、 コーヒータイムのように休憩したいだろうし、 かと言って、 毎日こんなもの見ていていいのか? 意味があるのか?という、

春を呼ぶ 呪文

北陸の2月はまだ寒い、 上空にシベリア冬将軍が、 陣取っている。 春を探しているケメコは、 どこかに春が顔を出してはいないかと、 近所をくまなく探したが見つからなかった。 春は中々顔を出さず、 寒い日が続いた。 ケメコは、 冬将軍の寒さを堪えて、セーター編んでみた。 ちゃんこ鍋に誘って、一緒につついてみた。 けれど、冬将軍はおいとまするどころか、 上空に居座っていた。 ※ 2月14日、バレンタインデー、 巷では、 チョコが、トレンドに入った。 ケメコは、トレンド

案ずるより横山やすし

私は妖怪を飼っている。 しかも妖怪はコンビだ。 街を歩いていると、 ときどき良さげなお店を見つけるが、 「えいヤァ!」と、 気軽に入れないお店がある。 裏路地にあって、 何だか面白そうだけれど、 ちょっと清潔感が気になる店とか。 すると、あいつが出てくる。 わたしが迷うと顔を出す、 大きな目玉の主、 妖怪:「きよし」 またの名を「躊躇」 「きよし」はしっかり者で、 あまり新しい冒険を好まない。 混乱が起きないように、 内部をいつもしっかり固めて、 キチンと清潔に暮ら

ココロ温まる 話

シベリアは寒い。 シベリアは、その歴史も寒々しい。 太古の時代、人々はマンモスを追いかけ、 雪と氷の大地に初めて踏み入った。 それから時は経ち、 ソビエト連邦スターリン時代に、 シベリアは流刑の地として、 政治犯や犯罪者が送り込まれ、 一度行ったら二度と帰れない、 極寒の地獄だった。 凍てついた大地の下は永久凍土で覆われ、 今もマンモスが眠る、ロシア・サハ共和国、 北東部にオイミャコンという村がある。 そこは地球の北半球で、 最も寒い人の住む場所と言われ、 ー73℃を

ホラ〜、東京タワーが見えない

見えなくなっちゃったんです、東京タワー。 さっきまで見えていたのに、 見失っちゃったんです〜。 道で声をかけられた。 赤いスカーフを頭に巻いた、 童話に出てきそうな姿の、 お婆ちゃんだった。 わたし、東京タワーだけを目印に、 歩いてきたんです。 今日は、東京タワーお休みなんでしょうかね? でも、さっきまでは見えてたんですよねぇ。 それが、角を曲がったら、見えなくなっちゃったの。 それとも、 寒いから、土の中に引っ込んじゃったのかしら。 骨組みだけで、筋肉や脂肪がついて

坂のある街の筋肉質な猫

日暮里の細い坂道を、 夕陽に向かって、とぼとぼ歩いていると、 いかにも日暮里感でココロ暮れ始める。 気持ち日暮れて、 顔も優しく緩むと、 行き交うひと誰もが、 みな良い人に見えてくる。 駅から続く坂を登りきったら、 向こうに広がりゆく人情の銀河…、 かと思いきや、 ちょい派手な看板。 まあね、 でも、みんな生きているのだから…と、 頭の筋肉ほぐしながら、 お約束通り、 「夕焼けだんだん」を、 一段一段楽しみながら歩く。 う〜ん、 た〜しかに〜、 時間がゆっくり流れ

ないと…。

師走トワイライト、 仕事終わらせないと、 マスクもしないと、 もうすぐ Night スマホ見ないと、 LINEしないと、 「いいね」しないと、 もうすぐ Night 仕方ないと、 傍観しないと、 見ないようにしないと、 もうすぐ Night 混みあう歩道は、 抜けても、 よけても、 かわしても、 キリがないと、 終わりがないと、 打つ手がないと、 脚が疲れて、 気持ちが空を見上げて、 口から溜め息が出て…、 と思ったら、 歩道が立体交差してる…。 あれは

パンダ、今川焼食ベ焦る

ハァ、ハァ、ハァ、 あのね、わたし昨日は休みでね、 山手線に飛び乗ったのよ、北を目指して。 特に行き先はなくて、どこでもよかったの。 だってね、家にいちゃいけない!って思ったの、 動いてないとね、いけないって思ったのよ。 暇してる感じってヤバくない? でも、どうしてかなぁ? まいっか、 そう、そんでね、 なんとなく上野で降りたの。 そしたらパンダで混んでいたから、上野がね。 さらに、なんとなく電車に乗ったら、 あっ、北に行かなきゃって思ったからなんだけど、 で、駅で降り